無線通信技術のBluetoothについて解説!身近で便利な技術を使いこなそう!

公開日:2024/07/16
無線通信技術のBluetoothについて解説!身近で便利な技術を使いこなそう!

生活のIT化が進んでいる現在、多くの人がワイヤレス接続のイヤホンやコンピュータマウスなどを使用するようになりました。これらの機器の多くは「Bluetooth(ブルートゥース)」という無線通信技術を用いており、手軽で快適な接続・利用を実現しています。スマートフォンにも搭載されている身近な通信技術であり、関連する知識を持っておくとBluetoothをより効果的に活用できるでしょう。この記事ではBluetoothの概要や接続方法、メリット・デメリットなどを紹介します。

Bluetoothとは

Bluetoothは世界中で広く利用されている無線通信技術で、主にワイヤレスイヤホンやコンピュータマウスなどの接続に用いられています。独特な仕様と強みを活かして、同じく一般的なWi-Fiと異なる場面で活躍する技術です。Bluetoothの概要と、Wi-Fiとの違いを以下で解説します。

概要

Bluetoothは「2.4GHz帯」という非常に短い周波数を使う無線通信技術です。近距離にある機器同士を無線でつなぐ規格で、免許を取得せずに利用できます。利用料金も無料のため、対応機器を持っていれば気軽に使用可能です。スウェーデンのEricsson社を中心に開発されており、現在は世界標準規格として非常に多くの端末で用いられています。1999年に最初のバージョンが一般公開されて以降、データ転送速度や電力消費量などが改善されていきました。
「Bluetooth(青い歯)」という名前は、10世紀にデンマークとノルウェーを平和的に統一したHarald Blåtand(ハーラル・ブロタン)王の異名「青歯王」に由来します。Bluetoothの開発が始まった当時に「乱立する無線規格を統一したい」という思いを込めて、北欧における統一の偉人から名を取ったようです。Bluetoothのロゴマークもハーラル王に由来しています。ハーラル王のイニシャル「H.B.」を、当時用いられていたルーン文字で図案化したものです。

Wi-Fiとの違い

Bluetoothと同様に広く用いられる無線通信規格として「Wi-Fi」がありますが、BluetoothとWi-Fiはさまざまな要素の違いがあります。主な違いは以下のものです。

・電波の到達距離
Bluetoothの電波は至近距離にしか届かない一方、Wi-Fiの電波ならば比較的遠くまで届きます。

・通信速度
Wi-FiはBluetoothと比べて圧倒的な通信速度を誇ります。多くのデータを高速で送受信可能です。

・消費電力
BluetoothはWi-Fiと比べてほぼ電力を消費しません。電池の消費量を抑えつつ、長時間通信し続けられます。

・接続時の利便性
Bluetoothは機器同士を用意に接続できます。Wi-Fiは利用時にパスワードの入力が求められるため、Bluetoothより利便性で劣ります。

BluetoothとWi-Fiはそれぞれの特徴を活かして使い分けられています。ワイヤレスイヤホンやコンピュータマウスなどの接続にBluetoothが、家やオフィスなどでのネットワーク構築にWi-Fiが用いられます。

Bluetooth機器の接続方法

無線通信技術であるBluetoothを使い機器同士を接続する場合は電波を使用するため、ほかの機器が発した電波と混線しないように「ペアリング」を行います。基本的にBluetooth機器同士は一対一でのみ接続可能ですが、機器によっては複数機器と同時接続できるものもあります。Bluetooth機器の接続方法について、以下で詳しく解説します。

ペアリング

Bluetooth機器を接続する際には「ペアリング」という行程が求められます。使用する機器同士を一対一で登録して、登録していない機器には接続されないように設定します。ペアリングによってBluetooth機器同士の混線を防ぎ、多くの対応機器がある自宅内や電車内などでも問題なく接続可能になります。
ペアリング登録した情報は各機器に記録されるため、2度目以降はペアリング行程を挟まずに直接機器を使用できます。Bluetooth機器を購入したら早めにペアリング登録して、使用したい場面でスムーズに使える体制を整えておきましょう。なお、ペアリング情報を削除したり機器を換えたりした場合はサイドペアリングが必要です。

マルチペアリング

1つのBluetooth機器を複数の機器と接続したい場合は「マルチペアリング」機能を利用しましょう。基本的に、ワイヤレスイヤホンやコンピュータマウスなど1つのBluetooth子機はパソコンやスマートフォンなど1つの親機以外と接続できません。しかし、マルチペアリングに対応している機器ならば複数の親機と同時にペアリングさせられます。使用する親機を変更するたびに子機とのペアリングをし直す必要がなくなり、各機器のスムーズな使い分けが可能になります。
マルチペアリングで複数登録できる機器は親機側のみです。1つの親機に複数の子機登録はできないため注意しましょう。マルチペアリングできる機器の台数にも要注意です。製品ごとにペアリング可能な台数が決まっており、上限を超えると古いものから登録削除されていきます。

マルチポイント

複数のBluetooth機器を同時に接続・利用したい場合は「マルチポイント」機能が役に立ちます。マルチポイントはマルチペアリングに近い機能で、1つのBluetooth子機に複数の親機を同時接続できます。マルチペアリングとの違いは接続中の親機すべてで子機を同時に使用できる点です。「パソコンとヘッドセットを接続して動画視聴中に、スマートフォンにかかってきた電話に同じヘッドセットで応答する」のように利用できます。マルチポイントに対応していない場合、マルチペアリングしていても同じ子機での同時接続はできません。
マルチポイントでの登録が可能な機器の台数は、一般的にマルチペアリングの登録可能台数より少ないため注意しましょう。同時接続機器が増えるとBluetooth接続の安定性が下がる点にも要注意です。

プロファイル

Bluetooth機器を使いこなしたい場合、各機器に対応している「プロファイル」を確認するようにしましょう。プロファイルは機器同士の接続に用いるルールのようなもので、各機器は種類ごとのさまざまなプロファイルに対応しています。主なBluetoothプロファイルとして以下のものが挙げられます。

略称正式名称機能
A2DPAdvanced Audio Distribution Profile音楽を再生する
AVRCPAudio/Video Remote Control ProfileAV機器をリモコン操作する
HFPHands-Free Profileハンズフリーで通話する
HSPHeadset Profileヘッドセットで通話する
HIDHuman Interface Device profileマウスやキーボードで入力する

Bluetooth機器を接続・使用するためには両方の機器が同じプロファイルに対応している必要があります。逆に同じプロファイルに対応している子機の同時使用はできない点に注意しましょう。イヤホンとスピーカー、スマートウォッチとカーナビなどの組み合わせが該当します。マルチポイントに対応している機器の場合、同じプロファイル対応の子機を同時に使用可能です。

Bluetoothのメリット・デメリット

Bluetoothにはさまざまなメリットがある一方で、複数のデメリットも存在します。Bluetoothを安全かつ快適に扱えるように、メリットとデメリットを把握して活用しましょう。Bluetoothの主なメリット・デメリットを以下で紹介します。

メリット

Bluetoothを利用すると複数のメリットを享受できます。いずれも日常生活を便利にしてくれるもののため、各機器を使いこなせるように把握しておきましょう。Bluetoothの主なメリットは以下のものです。

・コードレスで機器を使用できる
Bluetoothは機器同士を無線接続できるため、接続のためにコードをつなぐ必要がありません。コードの紛失や断線などを気にする必要がなくなり、使用中にコードが邪魔になる問題も防げます。機器の外見もすっきりするでしょう。

・1回の充電で長時間使用できる
Bluetoothの消費電力は少量のため、一度充電・電池交換すれば長時間機器を使い続けられます。パソコンに接続する機器やワイヤレスイヤホンなど、長時間使い続ける機器でも安心して利用できるでしょう。IoTデバイスにも適しています。

・低コストで利用・導入できる
Bluetooth機器は比較的小型・軽量なものが多く、内部システムも開発者が理解しやすい構造になっています。製品開発に多額のコストがかかりづらいため、完成した製品を利用する際も低価格で購入できます。利用開始後のコストも電池代程度しかかかりません。

デメリット

便利なBluetoothにもデメリットがあり、使い方が悪いとトラブルにつながる可能性もあります。安心してBluetooth機器を使用するためにデメリットも把握しておきましょう。Bluetoothの主なデメリットは以下のものです。

・遅延が発生する
Bluetooth機器で映像と音声を再生する場合、映像に比べて音声が遅延しやすくなります。特に対戦ゲームのように音から瞬時の判断が求められるコンテンツの場合、わずかな遅延が大きな問題になるケースも起こり得ます。

・接続が途切れる
無線通信は有線通信と比べて接続の安定性が低いため、Bluetooth機器の使用中に接続が途切れる可能性もあります。新しいバージョンのBluetooth通信であれば接続の安定性が向上します。手持ちの機器で利用しているバージョンを確認しましょう。

・セキュリティ上のリスクがある
接続しやすい電波を飛ばし続けるBluetoothの構造上、起動中は常にセキュリティ上のリスクが生じます。Bluetooth機器から発せられる電波を悪用されて、データ傍受やストーキングなどを行われるおそれもあります。使用時以外はBluetoothを切っておきましょう。

Bluetoothの主な使用場面

パソコンやスマートフォンなど身近なデバイスで利用可能なBluetoothは、日常でも幅広く用いられています。自宅から外出先の施設内まで、Bluetoothを使って多くの便利な製品・サービスを活用しましょう。Bluetoothの主な使用場面を以下で紹介します。

オーディオ機器との接続

Bluetoothの身近な使用場面としてオーディオ機器が挙げられます。ワイヤレスイヤホンやスピーカーなどをスマートフォンと接続して、どこでも気軽に音楽を楽しめます。「電車での通勤」「公園でのランニング」「家中を動き回る家事」など、幅広い場面で利用可能です。Bluetoothは無線接続するため、コードが絡まったり引っかかったりするおそれもありません。
Bluetooth接続するオーディオ機器は「コーデック」という規則が用いられています。対応しているコーデックに応じて音質が変わるため、可能であれば高ランクのコーデックに対応した機器の選択がおすすめです。すべてのBluetooth機器が対応しているSBCのほか、AAC・aptX・LDACなどのコーデックが存在します。

パソコン周辺機器との接続

コンピュータマウスやキーボードなどパソコン周辺機器にもBluetooth接続が多く用いられます。コードを使わずに周辺機器を配置・使用できるため、机上をすっきりさせられます。ノートパソコンとあわせて持ち運びやすい点も利点です。好みの位置に配置すれば肩こりの予防にもつながるでしょう。
キーボードはパソコンだけでなくスマートフォンにも接続可能です。スマートフォンでの日本語入力はフリック入力が一般的ですが、キーボードを接続すればパソコンと同じように入力できます。特にパソコンを使い慣れている人は、スマートフォンでの文章入力を早くできるでしょう。

デバイス間のデータ共有

パソコンやスマートフォンに保存されているデータをBluetoothで共有できます。ケーブルやクラウドストレージなどを経由しないため、手軽にデータ共有できる点が魅力です。また、インターネット回線も使わずにデータ通信量の消費が発生しないメリットもあります。一方で、Bluetoothの通信速度がボトルネックとなりデータのやり取りに少し時間がかかるデメリットもあります。
Bluetoothを使用してデバイス間のデータ共有を行う場合、最初にデバイス同士をペアリングさせる必要があります。ペアリングの方法はデバイスやOSによって異なるため、デバイス内で設定方法やBluetoothメニュー画面を確認しておきましょう。

BLEビーコンの利用

Bluetoothの「BLE」という機能や「ビーコン」と呼ばれる通信デバイスなどを使い、非常に多彩なサービスを利用できます。BLEは電力消費を抑えたBluetooth通信機能で、BLEを用いる発信機を「BLEビーコン」と呼びます。BLEビーコンが設置されている場所に行くと、スマートフォンを介して設置者による各種のサービスを利用可能です。店舗内の地図・クーポンの案内・博物館での展示物案内など、BLEビーコンを用いた多種多様なサービスが提供されています。
BLEビーコンはほかの多くの媒体よりも情報伝達しやすいため、設置店舗としては利用客への情報発信を気軽に行えます。ソーシャルメディアを利用しているBLEビーコンならば広告コンテンツ作成の手間も省けます。最小限の広告費用で大きな宣伝効果が得られるため、利用者にとっても商品価格やサービスの質的向上を期待できます。

まとめ

Bluetoothの概要や接続方法、メリット・デメリットなどを紹介しました。世界中で使用される無線通信技術のBluetoothは手軽さや使いやすさに優れており、さまざまな機器で幅広い活用をされています。Bluetoothの特徴を把握すればさらに便利で適切な使い方を習得できるでしょう。
2024年現在のBluetooth最新バージョンであるv5.4では、新たな通信方式として「PAwR」が追加されました。ペアリングせずに複数の機器を同時接続できる方式で、特に小売業界を大きく変えうるとされています。最新バージョンを使用する機器の一般化には少し時間がかかりますが、Bluetoothによるさらに便利な生活が近づいています。