XRとはどのようなもの?世界中で大活躍する最新技術について解説!

公開日:2024/05/02
XRとはどのようなもの?世界中で大活躍する最新技術について解説!

近年、現実と仮想を組み合わせられる「VR」や「AR」のような技術・デバイスが盛んに開発されています。「家にいながら海外や宇宙などにいるかのような映像を楽しむ」「画面に映った現実世界で多くのキャラクターを探す」など、新しい形のコンテンツが多く生み出されるようになりました。
VRやARなど現実世界と仮想世界を組み合わせる技術を「XR」と総称します。XRは娯楽分野だけでなくビジネスの世界でも多方面に活用されつつあり、今後さらに強い存在感を示すと考えられる技術です。この記事では世界中で大きな注目を集めているXR技術について解説します。

XRとは

XRは現実世界と仮想世界を融合させて新たな体験を生み出す技術の総称です。XRは「Cross Reality」の略称で、Xを小文字にして「xR」と表記する場合もあります。小文字のxにはさまざまな技術を表す変数としての意味合いが込められています。
XR技術の誕生は「VR」や「AR」技術の発展がきっかけです。自分の周囲を仮想世界にするVRや現実世界に仮想世界を投影するARの発展が進み、両者を組み合わせた技術も生まれるようになりました。VRとARを別個のものとして考えづらくなったため、各技術を統合して「XR」と呼ぶようになりました。
近年では高性能なXRデバイスを比較的安く入手できるようになり、多くの場面でXR技術が活用されるようになっています。通信技術の進歩によるデータ送信の高速化や、新型コロナウィルスの流行によるリモート業務・イベント開催の需要増加もXRの進歩に一役買いました。

XRの種類

XRに含まれる技術はさまざまなものがあり、特に「VR」「AR」「MR」「SR」の4種類が中心として挙げられます。いずれも現在世界中で盛んに研究されている技術で、なかでもVRとARは一般人でも比較的手軽に使用できるようになりました。XRとして挙げられる主な4技術について理解しておけば、XR全体の理解にも役立つでしょう。XRの中心技術である4種類の技術について、以下で詳しく解説します。

VR

VRは「Virtual Reality(仮想現実)」の略称で、仮想世界を現実のように体験できる技術です。一般的には「ヘッドマウントディスプレイ」と呼ばれるゴーグル型の専用デバイスで全周にCG映像を映し出して、臨場感がある仮想世界体験を行えます。デバイスから映像に合わせた音声を流して、視覚だけでなく聴覚でもバーチャル空間の臨場感を高めます。
世界各地の大手IT企業が専用のVRデバイスを開発・販売しているほか、スマートフォンを使用するお手軽なVRゴーグルも販売されています。両手にコントローラーを持って、体の動きを映像に反映させるタイプも多くみられます。
VRの活用分野はゲームのような娯楽分野が中心です。しかし、近年では不動産の内見や仮想世界上での会議などビジネス方面でも活用が進んでいます。

AR

ARは「Augmented Reality(拡張現実)」の略称で、現実世界に仮想世界を重ね合わせる技術です。ARデバイスを通して現実世界を見ると、さまざまなCGモデルや映像などが現実世界の映像上に投影されます。自分自身を仮想世界に投入するVRと異なり、現実世界に一部仮想世界を組み合わせる点がARの特徴です。
AR技術はスマートフォンのアプリでも広く用いられており、XRのなかでも非常に身近な技術として挙げられます。スマートフォン以外に専用のヘッドマウントディスプレイを用いる場合もあります。
ARの活用分野は幅広く、ゲーム・観光案内・ショッピングなど多くの場面で用いられています。大半の人が所持しているスマートフォンで利用できる手軽さがARの大きな魅力です。

MR

MRは「Mixed Reality(複合現実)」の略称で、現実世界と仮想世界とを融合させて見せる技術です。専用デバイス越しに見える現実世界に3Dモデルを投影して、現実世界の変化にリアルタイムで対応させます。ARと似ていますが、MRによる仮想世界はどの方向からでも見られます。現実世界の動きに応じて仮想世界側も位置・形などを変化させる点も特徴です。
MRデバイスはVRと同様にゴーグル型のものが多く、大手IT企業を中心に開発されています。VRデバイスとして始まったデバイスシリーズに最新モデルで本格的なMR機能を搭載した、というケースもあります。
MRの活用はビジネス方面を中心に進められています。特に建築現場や医療現場など、デスクワーク以外での業務における活躍が期待されている技術です。

SR

SRは「Substitutional Reality(代替現実)」の略称で、仮想世界を現実世界のように見せかける技術です。専用デバイスで映像を投影して、使用者が「これは仮想のものだ」とわからないほどリアルな仮想世界を体験させます。システムとしては、ある場所で事前に撮影・録音した映像をデバイスで使用者に見せて、映像が現在のものであると錯覚させる仕組みです。
SRは原状ほぼ実用化されていない新しい技術であり、デバイスの開発もあまり進んでいません。SR技術の活用例として、テーマパークでヘッドマウントディスプレイを用いるホラーアトラクションが展開されたことがあります。
今後も娯楽分野で最初にSRが活用されるとみられていますが、娯楽分野以外では脳科学研究もSRの活用が期待される分野です。脳の錯覚を利用するSRは、「メタ認知」と呼ばれる自己の客観視についての研究に適しています。将来的に心的疾患への新たな心理療法としても活用が期待される技術です。

XRとメタバースの違い

XRと混同されやすい概念として「メタバース」が挙げられます。メタバースもXRと同様に仮想世界を活用しますが、メタバースは「他者とコミュニケーションをとれる仮想世界上の場所やサービス」を指します。あくまでも技術であるXRと異なり、メタバースは技術の一種に含まれない別の概念です。
仮想世界で会話やビジネスなどを行える場所・サービスが「メタバース」と称されるため、仮想世界に入る方法としてXRは必ずしも必要になりません。逆に「XR技術を用いるコンテンツがすべてメタバースに含まれる」ということもありません。「メタバースを利用するためにXRが用いられる場合もある」という点を理解して、XRとメタバースの違いを認識すれば両者を区別できるでしょう。

XRを活用している業界

XRは活用の幅が非常に広く、工夫次第で多くの利用方法が考えられます。VRやARが積極的に用いられているゲーム産業のような娯楽業界だけでなく、ビジネスの場面でも大いに活躍してくれる技術です。XR技術を活用している主な業界や例を以下で紹介します。

娯楽業界

2024年現在、XR技術は娯楽業界で盛んに活用が進んでいます。特にVRとARを用いたゲームが多く開発されており、ゲーム用のVRデバイスを開発してゲーム産業に参入した企業も存在します。「VR」や「AR」と聞いて、ゲームで活用されている場面が最初に想像されるケースも少なくありません。その他、ゲーム産業だけでなくイベントやアートなどもXRが広く用いられる分野です。
娯楽業界において、XRは専用の空間構築やリアルな体験などを実施・提供しやすい強みがあります。物理的な部屋や平面のモニターなどを用いる従来の娯楽と比べて、XRを用いた娯楽は新しい体験と楽しみを提供してくれます。

観光業界

XRは観光業界でも大いに活用されています。VR・AR・MRが全国各地で用いられており、地域の魅力を生かしつつ新たな形の観光サービスを提供します。過去の建造物や生物を映像で再現したり観光地をリアルに再現して現地への観光需要を増やしたりと、地域ごとに幅広い活用が可能です。
史跡や遠隔地ではない都市部でも、観光にXRが用いられている例もあります。XRデバイスを使用しながらバスツアーを行い、車中から未来の街並みや海中の景色などを楽しめるものです。ARを用いて地域内を周遊させるタイプの観光も存在します。スタンプラリーのように、地域内各所でARアプリを使いさまざまなコンテンツを表示できるようにするものです。

不動産業界

不動産業界でもXR技術の活用が進められています。主にVRとARが用いられており、内見を中心に効率よく顧客満足度の高いサービスを提供可能です。
VRを使用すると顧客が実際の物件やモデルルームまで行かずに内見できます。不動産業者はコストを抑えられて顧客も物件選びを成功させやすくなり、両者ともに時間の節約も行えます。
ARは実際に現地や専用の部屋まで向かったときに活用されます。物件の映像をスマートフォンや専用デバイスに表示して、手軽に家具・内装を変更可能です。実際に住んだ場合のイメージをしやすくなるメリットがあります。

建築業界

建築業界もXR活用に積極的な業界の一つです。建築業界ではARとMRの活用が中心で、「BIM/CIM」を活用する流れもありXRが大いに注目されています。
BIM/CIMは建築物やインフラなどの3Dモデルや各種データをあわせた データベースのようなものです。BIM/CIMを活用すると、従来よりも設計・建設・維持管理を効率的に実施できます。
BIM/CIMには3Dデータが必要であり、XRにも同様に3Dデータが求められます。作業員の訓練や完成イメージのシミュレーションなど、XRでも建築業務の効率化が可能です。そのため、XRとBIM/CIMを併用すればさらに効率よく建設を進められます。人手不足が深刻な建築業界では、XRやBIM/CIMの活用による業務効率化が強く求められています。

製造業界

製造業界でもXR技術が活用されています。VR・AR・MRが幅広く用いられており、作業の正確性確保や効率化が図られています。
VRやMRは製造や修理の工程などで使用されます。設計データや実際の組み立て部位などに応じたポイントをデバイス上に表示して、ミスの抑制が可能です。また、現場をリアルに再現した仮想空間での従業員訓練も行えます。
ARは各作業の支援に役立ちます。整備の際にARデバイスを使用して、対象の場所や情報を製品に重ねて表示できます。大きなマニュアルなしに誰でも同じ業務を行えるため、より効率的な作業が可能です。

医療業界

医療業界においてもXRが大きな注目を集めています。VR・AR・MRが幅広く活用されており、SRも活用できるよう研究を進めている業界です。
高度な技術が求められる臨床現場では、人材育成や手術の支援などに各種XR技術が役立ちます。リハビリや認知症予防にVRを使用したりデータベースと連携させたARデバイスで患者の情報を把握したりと、医療にかかわる多くの場面でXRは有用です。XRデバイスとロボットを接続すれば、遠方にいる患者の手術も行えます。
ほかのXR技術以上に発展途上のSRも、医療分野において心理療法での活用が期待されています。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療や予防目的で、原因になる出来事をSRで追体験させて耐性をつけさせるという研究です。

まとめ

世界中で大きな注目を集めているXR技術について解説しました。現実世界と仮想世界を組み合わせるXRは、すでに多彩な分野で大いに活躍しています。社会情勢の変化や業界の変革など、環境面からもXR活用は後押しされています。誰もが所持しているスマートフォンをデバイスとして使用できる点もXRにとって大きなメリットでしょう。
デバイスの進歩や通信技術の発展などにより、今後XRのクオリティと重要性はさらに高まるとみられます。XRのなかでもMRやSRのように新しい技術が生まれるため、XRの活用範囲も急速に広がっていくでしょう。