障害年金とはどのようなもの?受給方法やチェックポイントなどを解説!

障害年金とはどのようなもの?受給方法やチェックポイントなどを解説!

さまざまな社会保障制度が充実している日本では、各種の障害を抱える人向けの年金制度も設けられています。日常生活や就労に支障をきたしやすい障害者は金銭面での問題を抱えやすく、障害年金の存在は非常にありがたく感じられるでしょう。
障害年金には種類・受給資格・手続き方法などさまざまな要素があります。障害年金について知識を持ち、有効活用できるようにしておきましょう。この記事では障害者を助ける障害年金の概要や受給までの流れ、受給者のチェックポイントについて解説します。

障害年金とは

障害年金は国が設けている年金制度の一つで、病気やケガなどで障害を負った場合に受給できる年金です。身体障害や難病だけでなく精神疾患による障害状態も該当します。受給のためには障害の程度や年金の納付状況などの条件を満たす必要がありますが、条件のなかに障害者手帳の所持は含まれていません。障害者手帳を持っていなくとも、各種条件を満たしていれば障害年金の受給が可能です。
障害年金には複数の種類があり、それぞれ受給可能な金額が異なります。障害年金の種類と受給可能額を以下で詳しく解説します。

障害年金の種類

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、受給の可否は人によって異なります。障害厚生年金を受給できる人は障害基礎年金の1級あるいは2級にも該当しており、障害厚生年金の支給は障害基礎年金に上乗せして行われます。そのため、障害厚生年金を受け取れる場合は障害基礎年金も受給可能です。
病気・ケガの治り具合や障害の残り具合によっては、一時金として「障害手当金」を受け取れるケースもあります。障害手当金を受給している場合は障害厚生年金を受け取れないため注意しましょう。

受給可能額

受給できる障害年金の金額は年金の種類・障害の等級・家族の人数などによって変化します。障害年金の受給可能額は毎年見直されていますが、2023年度の受給可能額を年金の種類・障害の等級とともにまとめると以下のようになります。

(単位:円)障害基礎年金障害厚生年金
1級993,750+子の加算額報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額
2級795,000+子の加算額報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額
3級なし報酬比例の年金額

「子の加算額」は年金受給者に子供がいる場合に加算されます。2人までは1人につき228,700円、3人目以降は1人につき76,200円です。
「報酬比例の年金額」は
(年金加入中の平均標準報酬額×加入期間の月数×5.481/1000)
という計算で求められます。「配偶者の加給年金額」は228,700円で、配偶者が65歳未満の場合に加算されます。

参照:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
   障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額

受給資格

障害年金の受給資格は障害基礎年金・障害厚生年金で異なります。
障害基礎年金を受給するためには、以下の3点をすべて満たす必要があります。

  • 障害の原因である病気やケガの初診日が「国民年金加入期間」「20歳前あるいは日本国内在住の60歳以上65歳未満」のいずれかに含まれること
  • 障害認定日、あるいは障害認定後20歳に達した日の時点で障害等級が2級以上であること
  • 初診日前々月までの被保険者期間のうち、国民年金保険料の納付済期間あるいは免除期間が2/3以上を占めること(初診日が20歳前ならば不要)

一方障害厚生年金を受給するためには、以下の3点をすべて満たす必要があります。

  • 障害の原因である病気やケガの初診日が厚生年金保険の被保険者期間中であること
  • 障害認定日の時点で障害等級が3級以上であること
  • 初診日前々月までの被保険者期間のうち、国民年金・厚生年金保険・共済組合への加入期間あるいは免除期間が2/3以上を占めること

どちらの障害年金でも、障害者手帳の所持は受給資格に含まれていません。それぞれの条件を満たしていれば障害者手帳がなくとも障害年金を受給できる、と覚えておきましょう。

参照:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
   障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額

受給までの流れ

障害年金受給の際には要件の確認や必要書類の作成を行って、役所や年金事務所に提出します。特にあらかじめ初診日を調べておく必要があるため、いつ・どこの病院を受診したかよく考えましょう。万一審査を通過できなくとも、問題点を確認して自身の障害状況を洗いなおせば受給できるかもしれません。障害年金を受給するまでの流れを以下で詳しく解説します。

初診日を調べる

障害年金の受給を申請する場合は初診日を把握しておかなくてはなりません。障害の原因になった病気・ケガについて、初めて病院を受診した日が初診日に該当します。最初に受診した病院に問い合わせて、初診日を確認してもらいましょう。病名が確定した日ではなく、原因の病気・ケガのために受診した日である点に注意が必要です。
最初の病院を覚えていない場合は直近で受診した病院に問い合わせる手段もあります。最初の病院から紹介状を受け取っている場合もあるため、最初の病院にたどり着けるかもしれません。

受給資格の有無を調べる

初診日が把握できたら、その日時をもとに障害年金受給資格の有無を確認します。年金事務所や役所などに行き、初診日を伝えて保険料納付要件と照らし合わせてもらいましょう。初診日の前日時点で保険料を納めていたか否かが確認されます。基礎年金番号や障害の状態がわかる資料も必要です。
障害年金を受給するためには複数の条件を満たす必要があり、年金事務所や役所などで各条件を調べてくれます。受給申請に必要な書類も受け取る必要があるため、初診日がわかり次第早めに受給資格の有無を確認してもらいに行きましょう。

必要書類を準備する

障害年金の受給資格があると判断されたら、障害基礎年金・障害厚生年金のそれぞれで必要な書類を用意しましょう。必要書類は年金の種類に加えて、障害者の家族や障害を負った理由などでも変化します。必要書類は以下のものです。

〇必ず必要なもの

  • 年金手帳や基礎年金番号通知書など(基礎年金番号がわかるもの)
  • 戸籍謄本や住民票など(生年月日を証明できるもの)
  • 医師の診断書(障害認定日から3ヶ月以内のもの、認定日と年金請求日が1年以上空いている場合は直近の診断書も必要)
  • 受診状況等証明書(初診日の確認用、初診時と診断書の作成時とで異なる医療機関を受診している際に必要)
  • 病歴・就労状況等申立書(障害状態を確認する補足資料)
  • 金融機関の通帳など(年金の受給用、本人名義のもののみ使用可能)

〇第三者行為が原因で障害を負った場合

  • 第三者行為事故状況届
  • 交通事故証明や事故を確認できる書類(事故内容がわかる新聞のコピーなどでも可能)
  • 確認書
  • 被扶養者がいることを証明する書類(源泉徴収票や学生証のコピーなど)
  • 損害賠償金の算定書(示談書など受領額がわかるもの)
  • 同意書(損害保険会社への照会に使用)

〇配偶者や年度末に18歳以上を迎える子供がいる場合

  • 戸籍謄本(配偶者・子供の続柄や生年月日などを確認するために使用)
  • 世帯全員の住民票コピー(請求者との生計維持関係を確認するために使用)
  • 配偶者や子供の収入確認書類(障害基礎年金の場合は子供のみ)
  • 医師や歯科医師の診断書(障害状態を確認するために使用)

〇その他、本人の状況によって必要なもの

  • 請求者自身の所得証明書(障害基礎年金のみ)
  • 年金加入期間確認通知書(共済組合への加入期間がある場合)
  • 年金証書(本人あるいは配偶者がほかの公的年金から受給している場合)
  • 障害者手帳(障害の状態を確認するために使用)
  • 合算対象期間の確認書類

    参照:障害基礎年金を受けられるとき
       障害厚生年金を受けられるとき

書類を提出する

申請に必要な書類をそろえたら既定の窓口に提出して、日本年金機構での審査を経て年金受給が始まります。審査に通過した際に「年金決定通知書」と「年金証書」が送付されて、一般的には送付後1~2ヶ月で支払い開始です。
書類の提出先は年金の種類によって異なります。障害基礎年金は市区町村の役所に、障害厚生年金は年金事務所や年金相談センターに提出します。障害基礎年金の場合でも、初診日の時点で配偶者であれば提出先は年金事務所や年金相談センターです。

受給できなかった場合

障害年金を申請する際に、受給資格を満たさなかったり審査を通過できなかったりして年金の受給ができない可能性もあります。受給できなかった場合も各要素を再考して再度申請すれば、受給できるようになるかもしれません。
受給資格を満たさない場合は初診日に注目しましょう。生まれつきの障害であれば出生日が初診日になるほか、調べた初診日より前に関連症状で別の病院を受診していればそちらが初診日になります。初診日が20歳未満の場合は保険料納付要件を問われなくなるため、受給資格を満たしやすくなります。
審査の結果「不支給」や「却下」と判断された場合はそれぞれの意味を考えましょう。「不支給」は障害の程度が軽い場合に出される判断で、「却下」は保険料納付や初診日などの問題があった場合に出されます。どちらの場合も通知から3ヶ月以内であれば「審査請求」として不服を訴えられるほか、書類をそろえなおして再度の申請も可能です。なぜ審査を通過できなかったか考えて問題点を見つけられれば、場合によっては判断を改められるかもしれません。

障害年金受給時のチェックポイント

障害年金を受給する際には、把握しておくべき複数のチェックポイントがあります。お得な要素だけでなくマイナスになりうる要素もあるため、受給者としてできること・しなくてはならないことを調べておきましょう。特に高齢になると要素が増えるため要注意です。障害年金を受給する際の主なチェックポイントを以下で紹介します。

国民年金の保険料が免除されることもある

障害年金を受給していると、国民年金保険料の納付が免除される可能性もあります。障害等級が2級以上の場合、役所に届け出て国民年金保険料の免除制度を利用可能です。過去にさかのぼって2級以上の障害年金を受給する場合、すでに納めていた国民年金保険料の返金も受けられます。
免除制度を利用すると、将来受給できる老齢基礎年金が減額される点には要注意です。過去10年分であれば免除された保険料の追納も可能なため、自身の経済状況に応じて考えましょう。
なお、免除制度は国民年金に限って設けられている制度です。厚生年金保険は免除できない点にも注意しましょう。

更新手続きが求められる

障害の種類によっては定期的に再審査・更新の手続きが求められます。四肢欠損や失明など回復が見込めない障害の場合は「永久認定」を受けられるため、更新手続きは必要ありません。しかし、症状の軽重が変わりうる障害は「有期認定」となり、受給者ごとに1~5年の範囲で更新が必要です。
更新手続きの際には「障害状態確認届」が郵送されます。医師に「診断書」の欄を記入してもらい、同封されている返信用封筒で返送しましょう。役所や年金事務所などへの直接提出も可能です。

受給中に障害等級を変更できる

障害年金の受給を始めて以降も、状況に応じて障害等級や年金の金額を変更可能です。障害の程度が重くなれば等級も上がって、逆に軽くなれば等級は下がります。受給できる年金の金額は障害等級に応じて決まるため、等級の変化にあわせて金額も増減します。
変更する際は「額改定請求書」に医師が作成した診断書を添付して、役所や年金事務所などに提出しましょう。なお、障害等級の変更は原則として障害年金の受給権利を受けてから1年が経過していないと実施できません。また、3級の障害厚生年金を受給している65歳以上の方は障害等級の変更ができない点にも要注意です。

老齢年金や遺族年金との選択が求められる

障害年金を受給している場合、原則としてほかの年金である老齢年金や遺族年金を受給できなくなります。例として、障害基礎年金の受給者が老齢基礎年金も受給可能になった場合は障害・老齢のどちらかを選ばなくてはなりません。同じ支給事由で複数の年金を受け取れない点にも注意が必要です。遺族年金において多いケースで、父の死亡による遺族基礎年金の受給中に母の死亡による遺族基礎年金が発生した場合は同様に選択が求められます。
受給者が65歳以上の場合、異なる支給事由でも複数の年金を受け取れる可能性があります。老齢基礎年金の受給者が遺族厚生年金を受給可能になった場合、両方の年金を同時に受け取れます。障害年金の受給者が老齢年金を基礎・厚生ともに受給可能になった場合、障害・老齢のそれぞれから基礎・厚生を一つずつ選択して受給できます。自分がどの年金を受給できるか把握して、効果的な組み合わせを選びましょう。

まとめ

障害年金の概要や受給までの流れ、受給者のチェックポイントについて解説しました。日常生活にハンディキャップを抱える障害者にとって、生活を資金面から支えてくれる障害年金はありがたい存在です。受給資格の有無や受給手続きなどを把握して、障害年金の受給を考慮してみましょう。
障害年金は国で設けられている制度であり、非常に多くの人からの協力を得て維持されています。社会への感謝を忘れず、自分でも可能な範囲で社会への貢献を目指してください。