発達障害に近いグレーゾーンとは?特性への対処方法や就労方法など紹介!

公開日:2024/08/16
発達障害に近いグレーゾーンとは?特性への対処方法や就労方法など紹介!

障害者雇用や各種障害福祉サービスなど、現代では発達障害者の「生きづらさ」を解決するサービスが多く用いられるようになりました。サービスだけでなく理解も進みつつあり、発達障害者でもハンディキャップを補い生活しやすくなっています。
しかし、発達障害者に近い特性を持つ「グレーゾーン」と呼ばれる方々に関しては依然理解が進んでいません。発達障害者であるとの診断を受けていないため、特性にかかわらず健常者と同様の行動・結果を求められやすい現状があります。この記事では発達障害におけるグレーゾーンについて、特性への対処方法や就労方法などを紹介します。

発達障害とは

発達障害は脳の発達具合により発生する障害です。発達障害者の脳の働き方は子どものころから健常者の脳と働き方が異なり、行動・情緒の面で特徴がみられやすい傾向にあります。
発達障害の主な特性は「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「注意欠陥多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」の3種類があり、複数の特性が重なってみられるケースも珍しくありません。各特性はおおよそ以下の特徴を持っています。

・自閉症スペクトラム障害(ASD)
コミュニケーション能力や社会性などの発達に関係する障害です。自閉症やアスペルガー症候群などが統合されたもので、特定の物事に強いこだわりを示したり友人を作りづらかったりするケースが多くみられます。

・注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意力や行動力などに特徴がみられる障害です。仕事や授業などに集中できなかったりその場でじっとしていられなかったりします。考える前に衝動的な行動をとるケースも多くみられます。

・学習障害(LD)
特定の能力についての学習・行動を行う際に特徴がみられる障害です。基本的に知的発達の遅れがみられないにもかかわらず、話す・読む・計算するなど特定分野の学習・行動が困難になります。

発達障害を含む各種の障害についてはこちらの記事も参考にしてください。

グレーゾーンとは

グレーゾーンは発達障害の診断基準を部分的に満たしている方を指す言葉です。診断上発達障害者ではないため健常者として扱われますが、発達障害者の症状・特性を持っている場合も珍しくありません。「グレーゾーンは症状が軽い」という考えは間違っているため注意しましょう。発達障害におけるグレーゾーンについて、以下で詳しく解説します。

グレーゾーンの特性

グレーゾーンは発達障害に含まれる主な3特性の基準を部分的に満たしている状態で、発達障害の特性を持ちつつも医師から診断を出されていません。「グレーゾーン」という名前の病気や障害ではない点に注意しましょう。
発達障害の基準を部分的に満たしている状態のため、人によってさまざまな症状・特性がみられます。ASDとADHDの特性を部分的にあわせもっているようなケースも珍しくありません。環境や年齢による変化も大きく、医師が診断結果の断定を避けて「グレーゾーン」と称する場合もあります。

仕事におけるグレーゾーンの問題点

グレーゾーンの方は医師から発達障害という診断を受けていませんが、発達障害者と同様の特性を持っている点で変わりません。そのため、発達障害のグレーゾーンを抱えていると、発達障害者と近い「生きづらさ」を感じるケースがあります。仕事上でグレーゾーンの方や周囲が感じやすい問題点として、以下のものが挙げられます。

・指示の内容を理解しづらい
長い指示や漠然とした指示を受けたときに、指示の内容をしっかりと理解できず必要な行動をとれなくなります。必要以上に時間がかかったりやり直しが必要なほど雑になったりと、業務にかけられる時間と質の塩梅を把握できず極端な結果につながります。

・仕事の段取りを組めない
仕事内容の全体を見渡せず、状況にあわせた臨機応変な対応をとれなくなります。マルチタスクが苦手な場合も多いため、ケアレスミスが増えたり不測の事態に対処できなくなったりとトラブルが発生しやすい問題もあります。

・興味のある仕事以外に集中できない
興味を持てる仕事には集中できる一方で、興味を持てない仕事の場合気が散りやすくなります。必要な技術や知識を習得できず、さらに作業効率が落ちて興味も持てなくなります。周囲から悪印象を持たれやすい点も問題です。

・人間関係が悪化しやすい
相手への配慮をしづらいため不用意な言動をとりやすく、周囲との人間関係を良好に保ちづらくなります。業務に必要な意思の疎通も行いづらいため、業務効率が低下してさらに周囲との関係が悪くなりやすい問題もあります。

「グレーゾーンは症状が軽い」?

発達障害において、「グレーゾーンは障害者と診断されていないため症状が軽い」と考えられているケースがみられます。しかし、実際にはグレーゾーンであっても症状・特性が発達障害者より軽いとは限りません。グレーゾーンは発達障害者としての診断基準を部分的に満たしていない場合の分類であり、発達障害者とほぼ同レベルの支援が必要な場合もあります。
逆に、グレーゾーンだからこそ症状が重くなる可能性に注意が必要です。発達障害という診断がないため健常者とみなされて支援や配慮を受けられず、結果として大きな問題につながるケースもあるでしょう。

グレーゾーンの特性に対する対処方法

グレーゾーンとして生活する際には、特性によるマイナスの影響を最低限に抑えられるような工夫が必要です。多くのストレスによる二次障害が起きていないか確認して、自分の特性と近い発達障害の対処方法を参考にしましょう。自力だけでなく、各種公的機関からの支援も積極的な活用が大切です。グレーゾーンのハンディキャップを埋められるように努めて、場合によっては有効活用も考えましょう。グレーゾーンの方が自身の特性に対して行うべき対処方法を以下で紹介します。

二次障害の有無を確認する

グレーゾーンの方は二次障害を併発しやすい傾向があるため、最初に二次障害の有無を確認しましょう。診断上発達障害者にならないグレーゾーンの方は、周囲から健常者と同水準の行動・結果を求められやすくなります。部分的に発達障害の特性を持っていると健常者と同様の結果を出しづらいため、「できない人」とみなされて多くのストレスが発生します。健常者以上に多くのストレスをため込み、うつ病・不眠症・不安障害など多くの二次障害につながるかもしれません。
二次障害は放置すると症状が悪化していき、治療に長い時間や入院が求められる恐れもあります。「発達障害者と診断されなかったから問題ない」と思い込まず、症状が重くなる前に診察・治療を受けましょう。

発達障害に対する対処方法を調べる

自分と近い特性を持つ発達障害者が行っている対処方法を取り入れてみましょう。グレーゾーンの診断を受ける場合、発達障害のなかから近いものや傾向がみられるものを医師から教えられます。教えられた発達障害への対処方法を調べて、自分にも適用できそうなものを積極的に活用しましょう。
対処方法だけでなく、近い発達障害の強みを生かす選択も効果的です。例として、ADHDを持つ方は行動力が高い傾向にあるため、積極的な行動が求められる環境で活躍しやすくなります。グレーゾーンでもADHDに近い場合、同様に行動力を生かせる環境への移動を考慮してみましょう。

公的機関の支援を受ける

公的機関からの支援も大いに役立ちます。発達障害者を支援する公的機関は多くあり、機関によっては診断を受けていなくとも利用可能です。主な機関として以下のものが挙げられます。

・発達障害者支援センター
発達障害者への総合的な支援を行う機関です。全国47都道府県すべてに設けられており、基本的には無料で利用できます。サービス内容は自治体ごとに異なるため、あらかじめ利用したい支援センターについて確認しておきましょう。

・障害者就業・生活支援センター
障害者の就業面や生活面への一体的な支援を行う機関です。主に仕事探し・入社前後のサポート・日常生活でのアドバイスなどを行います。2023年4月時点で全国337ヶ所と非常に多く設置されており、多くの人にとって利用しやすい支援センターです。

・ハローワーク
厚生労働省が運営している職業紹介所で、無料での職業紹介・就労支援サービスを受けられる機関です。障害者専門の窓口も設けられており、障害者手帳がなくとも相談や求人情報提供は受けてくれます。障害者向けの就職面接会も実施しています。

・就労移行支援事業所
障害者の一般就労を支援する機関です。自治体に申請して許可を得られれば、障害者手帳がなくとも利用できます。全国各地で非常に多く運営されているため、距離・環境・サービス内容などを検討して最適な事業所を選択できるでしょう。

グレーゾーンの方が就労する方法

グレーゾーンの方が就労を目指す場合は念入りな職種の選択が重要です。グレーゾーンでも各種発達障害に近い特性を持っているため、特性ごとに職種の向き・不向きが存在します。不向きな職種を選ぶとうまく働きづらくなり、ストレスから二次障害の発生につながる恐れもあります。発達障害の主な特性に向いている職種の例は以下のものです。

〇ASD
興味を持てる分野に一人で黙々と取り組める職種がおすすめです。

  • 研究者
  • 校正・検閲
  • プログラマー

〇ADHD
積極的に動いて多方面からアプローチできる職種がおすすめです。

  • 営業
  • プランナー
  • 記者

〇LD
読み書きや計算より感性やセンスを求められる職種がおすすめです。

  • 芸術家
  • 広告業
  • 役者

就職活動の際には、自分の特性を詳しく把握して応募先の企業に正しく伝えましょう。特にグレーゾーンの場合は特性の種類やハンディキャップの幅が広いため、自分の特性や必要な配慮について正確に把握してもらわなくてはなりません。自分がグレーゾーンである旨も伝えておきましょう。グレーゾーンであると隠して入社しても仕事中に問題が起こりやすく、トラブルや退職の原因になる恐れがあります。
応募先の企業による障害者への理解・対応を調べておくとより効果的です。障害者でも安定して働ける環境が整備されていれば、グレーゾーンであっても同様に安定的な就労が可能でしょう。業務内容と自分の特性との相性確認も欠かせません。

まとめ

発達障害におけるグレーゾーンについて、特性への対処方法や就労方法などを紹介しました。グレーゾーンの方は健常者として扱われながらも発達障害者に近いハンディキャップを抱えています。「生きづらさ」を解消するためにさまざまな対処を行い、就職活動の際にも工夫が必要です。
グレーゾーンの方は健常者とも発達障害者とも異なる気苦労があり、ある意味では発達障害者以上に「生きづらい」と感じているケースもあります。「障害者手帳を持っていないならば普通の人だ」と早合点せず、本人・周囲ともに無理が生じない対応や行動を心がけましょう。