就労継続支援A型事業所の利用方法は?事業所の選び方とあわせて紹介!

就労継続支援A型事業所の利用方法は?事業所の選び方とあわせて紹介!

日本において、障害者はさまざまな福祉サービスによってハンディキャップを補えるよう支援されています。障害者が抱えるハンディキャップの一つに就労の難しさがあり、就労面に対する福祉サービスとして「就労継続支援A型事業所」が設けられています。障害者でも就労機会を得やすくなるサービスですが、利用の際には独特な手順が必要です。
この記事では就労継続支援A型事業所の概要・利用手順・選ぶポイントを紹介します。

就労継続支援A型事業所とは

就労継続支援A型事業所は、障害者総合支援法で定められている就労支援サービスです。障害者と雇用契約を結んでさまざまな業務を実施します。一般就労が難しい障害者でも賃金を得つつ就労スキルや経験を積めます。賃金は最低賃金が保証されるため、ある程度の収入を得られる点も利点です。
就労継続支援A型事業所について、以下で詳しく解説します。

主な業務内容

就労継続支援A型事業所では、事業所ごとにさまざまな内容の業務を扱っています。一般的にあまり複雑な作業は行わず、軽作業が中心です。主な業務として以下のものが挙げられます。

・データ入力
パソコンを用いて多数のデータを入力します。自分の席で黙々と進められる作業です。

・清掃
ホテルやオフィスビルなど各種施設内を清掃します。体を動かしながら働ける作業です。

・クリーニング
衣類や寝具などをクリーニングします。洗濯物の仕分けや配送まで行う場合もあります。

・梱包
各種製品を検品・梱包・発送します。事業所によっては雑貨などの製作から行います。

・調理
レストランやカフェなどで調理作業を行います。働きながら調理スキルも習得可能です。

就労継続支援A型事業所での業務内容についてはこちらの記事も参考にしてください。

利用料金・期間

就労継続支援A型事業所を利用する際には利用料金が発生する可能性もあり、世帯の収入状況によって異なります。「生活保護を受給している」「市町村民税を課せられていない」のどちらかに該当する世帯であれば、利用料金は発生しません。市町村民税が課せられている世帯のうち、所得割が16万円未満の場合9,300円まで利用料金が発生します。生活保護や所得割などの各基準に該当しないならば、利用料金は37,200円まで発生します。
利用期間に関して、A型事業所には設けられていません。事業所と雇用契約が続いているならば継続して利用できます。ただ、事業所によっては雇用契約締結時に契約期間が設けられる場合もあります。事業所を利用する際は雇用契約の内容をよく確認しましょう。

対象者

障害者総合支援法によると、就労継続支援A型事業所の対象者は「通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者」とされています。具体的な対象者は以下の要素にあてはまる人です。主に障害福祉サービスを利用しても就労がうまくいかなかった人や、一度就労してから離職した人が該当します。

  • 移行支援事業を利用したが、企業などでの雇用に結びつかなかった人
  • 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業などでの雇用に結びつかなかった人
  • 就労経験がある人で、現在は雇用関係の状態にない人

以前は年齢の面でも65歳までの制限がありましたが、2018年4月以降は65歳以上でも要件を満たせば事業所を利用できます。

似ている障害福祉サービスとの違い

就労継続支援A型事業所と似ている障害福祉サービスに「就労継続支援B型事業所」「就労移行支援事業所」があります。いずれも障害者を対象とした就労サービスですが、A型事業所とは少し異なります。
就労継続支援B型事業所は利用者と事業所の間で雇用契約を結ばないサービスです。雇用契約を結ばないため利用時間に融通を利かせやすい一方、賃金は最低賃金よりも安く設定されます。自分が継続して働けるかわからない場合に、B型事業所で心身を慣らしていくと安心できます。
就労移行支援事業所は利用者の一般就労を本格的に支援するサービスです。2年間の利用期限があり、期間内に知識・スキルの習得や生産活動・職場体験などの機会提供を受けます。事業所から支援を受けつつ、集中して一般就労を目指したい場合に有用でしょう。

就労継続支援B型事業所や就労移行支援事業所などのサービスについては、こちらの記事も参考にしてください。

就労継続支援A型事業所を利用する手順

就労継続支援A型事業所は障害福祉サービスのため、正社員やアルバイトなどへの就労とは異なる手順が求められます。大きな違いとして役所内での審査にある程度時間を要する点があり、時間やお金の面である程度余裕を持った計画・行動が必要です。就労継続支援A型事業所の利用手順を以下で詳しく解説します。

主治医と相談する

就労継続支援A型事業所を利用したい場合、まず主治医に相談しましょう。事業所での就労が可能な状態か、障害福祉サービスの利用が必要かなどを判断してもらいます。主治医の許可なく利用するとトラブルにつながったり体調を悪化させたりする恐れもあります。事業所を長く有効活用するためにも、主治医の目から見て自分に問題がないことを確認しましょう。

事業所の求人に応募する

主治医の許可が出たら、利用したい事業所を探して求人に応募します。求人はインターネットやハローワークなどで探せるため、業務内容やアクセスなどを考慮して最適な事業所を選びましょう。見学や体験を行える事業所であれば、積極的に利用してイメージをつかむと効果的です。
応募の際、多くの事業所では履歴書・職務経歴書やハローワークからの紹介状が求められます。あらかじめ用意しておきましょう。求人への応募後は面接を受けて、採用され次第本格的に手続きを行います。

役所で事業所の利用申請を行う

事業所から採用通知を受けたら、市区町村の役所で事業所を利用する旨申請します。役所の障害福祉担当者から福祉サービス利用について聞き取りを受けて、「サービス等利用計画書」を作成します。計画書は担当者が聞き取り内容をもとに作成してくれるため、自身の障害や事業所を利用したい意思などを正確に伝えましょう。
聞き取りの際には必要な支援やサービス利用の妥当性などが検討されます。深刻に考える必要はありませんが、ありのままの現状を伝えましょう。誤った内容をもとに計画書が作成されると、適した支援を受けられずトラブルを招くかもしれません。

受給者証を発行してもらう

サービス等利用計画書の作成後、自治体での審査を受けてから「障害福祉サービス受給者証(受給者証)」を発行してもらいます。計画書の内容から障害福祉サービスの利用が適当であると判断してもらい、証明書として受給者証を受け取る形です。受給者証はA型事業所を含めた各種障害福祉サービスの利用に必要なため必ず受け取りましょう。自宅まで郵送してもらえる場合もあります。
計画書を作成してから受給者証を受け取るまでには多少期間が空きます。受給者証を受け取るまで事業所の利用はできないため、事業所をすぐに利用したい場合には注意が必要です。

事業所と雇用契約を結び利用開始する

障害福祉サービス受給者証が発行されたら、就労継続支援A型事業所と雇用契約を結び利用開始できます。先に面接して内定が出ているならばその事業所を利用して、内定が出ていないならば面接から行います。事業所の利用開始後も受給者証は保管しておきましょう。
受給者証の受け取りに時間がかかる分、事業所の利用開始までも時間が必要です。必然的に賃金の支払いまでも期間が空くため、特に金銭面に不安がある場合はあらかじめ所要期間を計算しておきましょう。

就労継続支援A型事業所の選び方

就労継続支援A型事業所は全国各地で多数運営されています。事業所ごとに業務内容や雰囲気などが異なり、自分に最適な事業所を選ぶ必要があります。選ぶ事業所によってその後の日常生活が大きく変化するため、慎重に考えて選択しましょう。
就労継続支援A型事業所を選ぶ際の主なポイントを紹介します。

業務内容

事業所で実施している業務の内容を確認しましょう。全国の事業所で幅広い内容の業務が行われており、自分に合う業務と合わない業務が存在します。業務内容への興味や好みだけでなく、障害との相性や作業環境などによっても「合う・合わない」が左右されます。求人票やホームページのチェックに加えて、見学や体験も活用して業務内容をしっかり確かめましょう。
A型事業所の業務は軽作業類が多くみられますが、近年ではパソコンを使用する業務も増加しています。一方で飲食店での接客業務を扱う事業所も多く、事業所ごとに業務内容や求められるスキルが多彩です。自分がやりたいこと・できることを把握したうえで業務内容を選択しましょう。

事業所へのアクセス

自宅から事業所までのアクセスも重要な選択基準です。時間がかかったり駅から遠かったりすると通う際の負担が大きくなるため、利用しづらくなるかもしれません。通勤ルートや所要時間を検索して、問題なく通えそうか確認しましょう。可能であれば、利用時間帯に合わせて事業所まで行ってみると正確に把握できます。一般的に中心街は通勤時間帯に人が増えるため、精神的・身体的に負担がかかりやすくなります。混雑による負担を抑えたい場合、中心街から離れている事業所を選ぶ手段も有効です。
交通費にも注意が必要です。事業所によっては交通費が支給されないケースもあるため、交通費がかかりすぎると金銭的な負担が大きくなります。利用したい事業所までの交通費はいくらか、同時に交通費の支給を受けられるか確認しましょう。

賃金

事業所の業務をこなして支払われる賃金も確認しておきましょう。直接的な報酬である賃金が多ければ、業務へのやる気が増して続けやすくなります。生活も楽になるでしょう。
A型事業所は利用者と雇用契約を結んでおり、多くの事業所で都道府県ごとの最低時給が支払われます。同額の時給でも利用時間によって賃金が変わるため、働ける時間と必要な金額を考えて検討しましょう。厚生労働省の調査によると、2021年度にA型事業所が支払った平均賃金は時給926円、月額81,645円でした。
事業所によっては利用時間を段階的に延長できる場合もあります。最初は短時間の業務で心身を慣らして、徐々に長時間働き賃金を増やしていく選択も可能です。

事業所内の設備・雰囲気

事業所に設けられている設備や事業所内の雰囲気も選択基準として重要です。どちらも見学や体験で把握できるため、直接事業所に入って確認しましょう。
トイレ・洗面台・休憩室など、事業所内の設備が使いやすければ毎日の業務で負担を感じづらくなります。作業室や廊下などの広さも心理面に影響しうるでしょう。特に身体障害を抱えている方は、事業所内や周辺のバリアフリー化が進んでいるか確認しておく必要があります。
事業所内の雰囲気は主に人間関係で決まります。職員の人柄や利用者同士の仲が良好であれば、朗らかで明るい雰囲気の事業所になるでしょう。利用開始直後の環境や業務に不慣れな段階で、職員やほかの利用者が友好的に接してくれれば安心して利用を続けられます。

就労継続支援A型事業所の探し方

就労継続支援A型事業所を探したい場合、事業所そのものだけでなく事業所から出されている求人も探すと効率的です。事業所には利用可能な人数の上限があり、上限を満たしている事業所は求人を出しません。求人から事業所を探せば、まだ利用できる事業所をスムーズに見つけられます。
札幌市の就労継続支援A型事業所を探せるWebサイトとして、主に以下のものが挙げられます。

・WAM NET
独立行政法人の福祉医療機構が運営している総合情報提供サイトです。福祉や医療などに関する制度の内容や取り組み状況などの情報を閲覧できます。
WAM NET内で全国の障害福祉サービス事業所を検索できる機能もあり、住所・事業所名・事業所番号などさまざまな方面から調べられます。

・ハローワーク
厚生労働省が運営している総合的雇用サービス機関です。全国の求人情報や雇用保険・雇用対策など国の制度を活用して、地域住民の雇用支援を行っています。
A型事業所もハローワークに求人を出しているため、全国のハローワークやインターネットから事業所を探せます。紹介状の発行もハローワークで行ってもらえます。

・元気さーち
札幌市保健福祉局が運営している障害福祉サービス事業所の情報提供サイトです。札幌市内で運営されている各種事業所の空き情報を検索できます。
札幌市が運営しているサービスのため、市内の事業所に特化した情報を得られます。事業所の連絡先や公式サイトも確認可能です。

・各種求人サイト
さまざまな企業が運営している各種の求人サイトでもA型事業所を探せます。障害者求人で絞り込めるサイトならば、より容易に探せるでしょう。各サイトで使い方や強みが異なるため、複数サイトを確認して自分に適したサイトを見つけると効率的です。

まとめ

就労継続支援A型事業所の概要・利用手順・選ぶポイントを紹介しました。A型事業所は障害者が就労やスキルアップなどの機会を得られるサービスです。自分に最適な事業所を選び、必要な手順を把握してスムーズに利用開始しましょう。
A型事業所の利用期間に制限はありませんが、ずっと利用し続けるだけでなく事業所から一般就労へのステップアップも可能です。事業所での業務をこなして生活を落ちつけつつ、希望するならば一般就労の選択肢も検討してみましょう。