心療内科での診察内容はどのようなもの?治療の流れとあわせて解説!

公開日:2024/11/05
心療内科での診察内容はどのようなもの?治療の流れとあわせて解説!

人間が元気に活動するためには身体面だけでなく心理面でのケアも欠かせません。身体的に健康でも心理的に問題があると、正常に活動できなくなり身体面の不調にもつながります。心理面の不調になかなか気づかず、身体の不調が出てからようやく気づくケースも珍しくありません。
心理面と身体面の両面から健康を守る診療科として「心療内科」があります。「ストレス社会」と呼ばれる現代では、心療内科の重要性が大きく高まっています。この記事では心療内科の概要や治療を行う流れなどを紹介します。

心療内科とは

心療内科は心理的な要因で起こる身体面の疾患を心身両面から治療する診療科です。生活習慣病やストレス関連の疾患を治療するために心理的なアプローチが求められるようになり、精神科を母体に発展しました。心療内科での診察内容や受診すべきタイミングなどを以下で詳しく解説します。

診察の内容

心療内科では、心理的な原因による疾患を心理面・身体面の両方から診察・治療します。強い緊張やストレスなどを感じると、人間の体には心身を問わずさまざまな問題が発生します。問題を解決できないままでいると病気にかかったり病気が悪化したりするため、心療内科での診察・治療が必要です。
実際の診察では逆の順序をたどる場合も珍しくありません。すでに起こっている心身の不調から根本の原因を探り出して、メンタルケアやストレス解消策の提案などを行います。身体検査・血液検査・心理検査など幅広い手法を活用して、患者が抱えている問題の根本的な原因を見つけます。

処方される薬

心療内科で処方される薬は抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬など、心理面の改善を助けるものが中心です。
抗うつ薬としては「ジェイゾロフト」や「レクサプロ」のような「SSRI」と呼ばれる薬が多く処方されます。SSRIは脳内の神経伝達を安定させる薬で、近年ではSSRI以外の抗うつ薬も多く存在します。
抗不安薬は大きく2種類にわかれており、一般的には効果が高い「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」が処方されます。「デパス」「ソラナックス」「レキソタン」など多くの薬が対象です。
睡眠薬は「ハルシオン」「レンドルミン」「ドラール」などの「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」が一般的に用いられます。患者ごとの睡眠状態にあわせた薬が処方されます。
その他、漢方薬の一種である生薬も心療内科で処方されます。抗うつ薬と漢方薬は服用開始から効果が出るまで時間がかかるケースも多くあるため、医師と一緒に経過を確認しながらの処方・服用が必要です。

医療費

保険診療の場合、心療内科の受診にかかる医療費は医療機関を問わずおおよそ決まっています。基本的には初診で2,500円から3,000円程度、再診で1,500円から2,000円程度です。血液検査や心理検査などを行ったり診断書を書いてもらったりすると、追加の費用がかかるため医療費も増加します。薬を処方してもらう場合も別途薬局に支払う費用が発生します。
医療費は自立支援医療制度を利用していれば少なく抑えられます。自立支援医療制度を利用していると医療費の自己負担額を1割に抑えられるため、相場の1/3の費用で受診可能です。薬の費用も1割負担に抑えられます。

受診すべきタイミング

心療内科は心身の不調が生じた際に受診すべき病院で、早めに受診すべきタイミングが複数存在します。大きく心理面と身体面の2パターンに分類されるため、自分がいずれかの不調を感じていないか考えましょう。ひとつだけ起きるのではなく、複数の不調が同時に発生するケースも珍しくありません。
心療内科を受診すべき主なタイミングは以下のとおりです。

〇心理面

  • 意欲がわかない
  • 集中できない
  • 人と会いたくない
  • 自信を持てない

〇身体面

  • 眠れない
  • 食欲がない
  • 疲れやすい
  • ミスが多い

自分だけでなく周囲の人物が心身に不調を感じている可能性もあります。本人は不調による変化を認識できていないケースも少なくありません。お互いに不調や変化を敏感に感じ取って、変化を伝えたり心療内科の受診を進めたりしましょう。

精神科・メンタルクリニックとの違い

心療内科と似た診療科に「精神科」があり、同じく意味合いが近い言葉として「メンタルクリニック」も挙げられます。
精神科は精神疾患を専門的に扱う診療科であり、基本的には心理面での不調が担当分野です。一方、心療内科は心理面に由来する身体的不調を扱う診療科です。そのため、厳密に考えると精神科と心療内科では異なる分野を扱います。しかし現実には多くの精神科医や心療内科医が両方の診療科を扱っており、担当分野も部分的に重なっています。
メンタルクリニックは心療内科と精神科をともに扱う医療機関ですが、「病院」ではなく「診療所」として扱われます。医療法により病床数が20床に満たない医療機関は診療所と定められており、精神疾患を扱う診療所が「メンタルクリニック」とされます。
実際のところ、患者が利用するうえで心療内科・精神科・メンタルクリニックのいずれも大きな違いはありません。受診する際は通いやすさや評判などを基準に決めましょう。

心療内科での治療の流れ

心療内科における治療の流れは、整形外科や消化器内科などほかの多くの診療科と基本的に同様です。多くの心療内科で初診時に事前予約を求められる点には注意しましょう。電話やインターネットなどで初診日時を予約して、当日向かいます。病院に着いて以降は、問診票の記入や実際の診察などをスタッフや医師の指示に従いつつ行いましょう。心療内科における治療の一般的な流れを以下で詳しく解説します。

問診表を記入する

心療内科に初診として来院した場合、最初に問診票の記入が求められます。受付で問診票を受け取って各項目を記入しましょう。住所や氏名などの個人情報だけでなく、患者の症状や生活習慣、アレルギー情報などさまざまな内容を記入します。患者の心理を深く把握するために心理検査を行うこともあるため適宜従いましょう。
心療内科によっては「予診」を行う場合もあります。有資格者に症状・経緯・生活環境などを伝えて、その後の診察・治療に役立つ情報を集めます。思わぬ情報を治療に役立てられる可能性もあるため、「人に伝えづらい」「症状と関係があるかわからない」など考えず積極的に相談してください。

診察する

問診票や予診で得られた情報をもとに、医師が患者を直接診察します。基本的には医師からの質問に答えていけば問題ありません。緊張してうまく答えられない可能性もあるため、困りごとの要点をメモにまとめておくと安心できます。
診察後、必要に応じて血液検査や心理検査も行います。医師やスタッフの指示に従って検査を受けましょう。検査の必要がなければ会計をして、その回の受診は終了です。処方箋が出ている場合は忘れずに薬局で薬を受け取り服用しましょう。基本的に心療内科の診察は1回で終わらず、長期間の定期的な受診が求められます。次回の受診日を忘れないように注意してください。

治療する

患者の病気や症状などをもとに、カウンセリングや薬物療法など各種の治療行為を行います。カウンセリングでは患者と会話して、患者のストレスを解消させたり問題解決の手段を探したりします。薬物療法は抗うつ薬や抗不安薬などを患者に服用させてメンタルの改善を図ります。カウンセリングと薬物療法の優先順位は医師や患者によって異なりますが、基本的には家で服薬して来院時にカウンセリングを受ける形です。
患者の症状によってはカウンセリングや薬物療法以外の治療方法を用いる場合もあります。運動や食事の面から生活環境の改善を図ったりストレスマネジメントを行ったりと、患者ごとに最適な治療方法を実施します。

心療内科を受診しやすくする「自立支援医療制度」について

心療内科への通院はある程度長い期間を要するため、都度支払う医療費が家計面での負担になる可能性もあります。金銭面の負担を抑えつつ心療内科を受診する方法として、厚生労働省により「自立支援医療制度」が設けられています。心身の障害を除去・軽減するために医療費の自己負担額を軽減してくれる制度で、通常は3割必要な医療費の自己負担額を1割まで抑制可能です。
自立支援医療制度を利用するためには市町村の役所で手続きが必要です。手続きの際に医師の診断書が求められるため、初診時から自立支援医療制度の利用はできません。自立支援医療制度を利用したい旨について、早めに医師に伝えて診断書を用意してもらいましょう。
自立支援医療制度の利用が始まると「自立支援医療受給者証」が交付されます。受給者証は1年間の有効期間が設けられており、引き続き利用したい場合は有効期間終了前に更新が必要です。病態・治療方針が変わらなければ、診断書の再提出は2回に1回で構いません。

自立支援医療についてはこちらの記事も参考にしてください。

まとめ

心療内科の概要や治療を行う流れなどを紹介しました。心理面から身体の不調を診察・治療する心療内科は、ほかの診療科と異なる独自の視点から治療してくれる医療機関です。受診方法は多くの診療科とあまり変わりません。事前予約を行ってから当日医療機関に向かいましょう。医療費の負担が重い場合は自立支援医療制度の利用が効果的です。
発達障害の診断や障害福祉サービスの利用などは心療内科の医師による診察が求められます。「生きづらい」と感じている方、あるいはその周囲にいる方は、一度心療内科の受診を検討してみてください。