冬の北海道で注意すべき冬季うつ病とは?対策方法とあわせて紹介!

公開日:2024/11/19
冬の北海道で注意すべき冬季うつ病とは?対策方法とあわせて紹介!

緯度が高く雪も多い北海道では、冬になると日照時間が非常に短くなります。日光をあまり浴びずにいると「冬季うつ病」と呼ばれる精神疾患につながる可能性があり、心身にさまざまな不調が発生します。北海道の長い冬を元気に過ごせるように、生活環境を積極的に改善しましょう。この記事では冬季うつ病について、概要や対策などを紹介します。

冬季うつ病とは

冬季うつ病は季節性の精神疾患で、「季節性感情障害(SAD)」とも呼ばれます。毎年同じ時期にうつ病のような症状があらわれて、季節が変わった時期に回復する病気です。冬に発症するケースが多いため「冬季うつ病」と呼ばれます。男性より女性に多く発症する傾向があります。うつ病に近い病気ですが、発生する原因や一部の症状がうつ病と異なる点も特徴です。冬季うつ病について以下で詳しく解説します。

主な症状

冬季うつ病にかかると、主にエネルギーの低下からつながる症状が多く発生します。気分の落ち込みや疲労感などに加えて、食欲の増加や過眠などが特徴的な症状です。「朝に起きられず昼間でも眠たい」「特に甘いものや炭水化物を無性に食べたくなる」など、一般的なうつ病とは異なる症状がみられます。
冬季うつ病の症状は冬場を中心に多く発生します。傾向として秋から症状が現れ始めて、春になると回復していきます。一方で、春や梅雨など冬以外の季節に発症するケースもあるため注意が必要です。

原因

冬季うつ病の大きな原因に日照時間の短さがあると考えられています。
人間の体は日光を浴びると「セロトニン」という神経伝達物質を多く分泌します。セロトニンは体内時計を整える効果があり、朝日を浴びて増えたセロトニンにより1日の体制を整える仕組みです。セロトニンは時間が経つと「メラトニン」という別の物質に変わります。メラトニンは眠気を催す効果があり、セロトニンが多く分泌されるほど夜に生成されるメラトニンも増えます。セロトニンとメラトニンのバランスが保たれていると、朝にすっきり目覚めて夜にぐっすり眠れるようになります。
日照時間が短い冬は日光を浴びる量も減り、セロトニンが分泌されづらくなります。セロトニンの分泌量が減るとメラトニンとのバランスが崩れて、体内時計にも異常が発生します。体内時計の異常が生じた結果、冬季うつ病のさまざまな症状が発生するとされています。
冬季うつ病は日照時間の短さを原因として発症しやすいため、気候や緯度により罹患者数が異なります。世界的には高緯度ゆえに冬の日照時間が非常に短い北欧で多く発症しており、日本の場合は北海道や北陸などの雪国で多くの患者がみられます。

参照:(3)冬季うつ病のメカニズム | 新潟県庁
   Who is at risk for seasonal affective disorder (SAD)? | Cleveland Clinic

冬季うつ病と一般的なうつ病の違い

冬季うつ病と一般的なうつ病は似た症状もありますが、大きく異なる症状も存在します。
主な違いとして食事と睡眠が挙げられます。一般的なうつ病では食欲の減退や不眠が起こりやすい一方、冬季うつ病の場合は食欲の増進や過眠が多く発生します。食欲増進と過眠によりカロリーが消費されづらくなるため、体重増加につながりやすい点も特徴です。
症状の発生期間にも違いがみられます。冬季うつ病の症状は冬を中心とする一時的なものとして生じやすい特徴があります。一方、一般的なうつ病の症状は基本的に長期間続きます。季節を問わず持続する一般的なうつ病と毎年同じ時期に発生する冬季うつ病とでは、求められる対応方法も異なってきます。

冬季うつ病への対策

冬季うつ病の治療や予防を行う場合、基本的にはセロトニンの分泌量を増やせるように行動します。セロトニンが増えれば体内時計が安定して、冬季うつ病の症状も抑えられるとされます。規則正しく健康的な生活を心がけて、身体面だけでなく心理面での健康も守りましょう。冬季うつ病への主な対策方法を以下で詳しく解説します。

日光を浴びる

冬季うつ病の予防策として積極的に日光を浴びましょう。冬季うつ病はセロトニン不足が主な原因のため、日光を多く浴びて体にセロトニンを多く分泌させる必要があります。気分が乗らないからと1日中暗い室内にいると、セロトニンがさらに不足して冬季うつ病の悪化につながります。朝日を浴びたり外出して散歩したりと、冬の貴重な日光を有効活用しましょう。
生活環境の都合で日光を浴びづらい場合、自宅の照明を明るくする対応法もあります。厚生労働省の資料によると、10,000ルクスの光を20分~60分浴びれば太陽光の代替にできるとされています。通常の室内照明より20倍ほど多い量のため容易ではありませんが、照明器具を強めのものに交換するだけでも多少の効果は得られるでしょう。

参照:季節性情動障害に対する補完療法について知っておくべき6つのこと | 厚生労働省

食生活を見直す

冬季うつ病は食生活の改善でも防止できます。冬季うつ病になると炭水化物の摂取量が増えやすくなるため、肥満や糖尿病など多くの問題につながるおそれもあります。積極的に炭水化物以外の栄養素を摂るように意識しましょう。
特に重要な栄養素が「トリプトファン」というアミノ酸です。人間が体内で生成できない「必須アミノ酸」の1つで、心身の健康を維持するために食事で摂取しなくてはなりません。トリプトファンはセロトニンの分泌に必要なアミノ酸で、主にタンパク質が豊富な食材に多く含まれています。
セロトニンを増やすためには「ビタミンB6」の摂取も大切です。トリプトファンをセロトニンに変えるうえで重要になる物質で、トリプトファンと一緒に摂取すればより効率的にセロトニンを増やせます。
トリプトファンやビタミンB6の摂取に役立つ食材として、主に以下のものが挙げられます。

  • 肉類
  • 魚介類
  • 乳製品
  • 大豆製品
  • ナッツ類
  • バナナ

適度に運動する

冬季うつ病を防止するために適度な運動が有効です。運動するとセロトニンの分泌量が増えるとされており、特に太陽光を浴びられる屋外での運動はセロトニンの増加に役立ちます。晴れの日に散歩したり雪国ならばウィンタースポーツに取り組んだりと、さまざまな形で体を動かしてみましょう。外出しづらい場合はラジオ体操もおすすめです。自宅でも行える運動で、ストレッチの効果も同時に期待できます。
運動にとりかかりやすくする意味でも、事前に旅行のような外出の計画を立てておくようにしましょう。旅行先で歩き回ったりスキーやスノーボードなどで楽しんだりと、運動や外出を楽しんで行えるように準備します。冬でも気分を沈めないようにする意識も大切です。

生活リズムを整える

毎日の生活リズムを整えて規則正しい生活を送れるようにしましょう。朝は早起きしてカーテンを開けて、朝日をたっぷり浴びられるようにします。起床時刻の遅れは体内時計のズレを招く可能性があり、さらなる心身の不調を招きます。就寝時刻の遅れも問題です。遅くまで起きていると睡眠時間が短くなり、睡眠不足につながります。体の疲労を回復させられなくなって体調不良が発生しやすくなるかもしれません。特に冬はウィルス性の病気も流行しやすいため、冬季うつ病以外の病気にもかかりやすくなります。早寝・早起きを心がけて規則正しく生活しましょう。

高照度光療法を受ける

冬季うつ病の治療方法として、病院やクリニックによっては「高照度光療法」という治療を受けられる場合もあります。強い光を患者に浴びせてセロトニンの分泌を促す治療方法で、机上に置く照明や頭に装着するバイザー式の照明などが用いられます。
高照度光療法は冬季うつ病の治療に大きな効果があるとされます。光療法推進委員会の調査によると、高照度光療法で冬季うつ病患者の90%以上に顕著な効果が現れました。薬物療法に匹敵する効果をより早く得られるため、病院で冬季うつ病の治療として高照度光療法が用いられるケースも少なくありません。抗うつ剤のような薬品と併用する場合もありますが、特に軽症の患者に有効な治療手段です。高照度光療法の実施や具体的な効果について、冬季うつ病で病院を受診する際に確認してみましょう。

参照:冬季うつ病と高照度光療法 | 光療法推進委員会

冬季うつ病と同時期に注意すべき病気

気温が低下する冬は冬季うつ病以外にも多くの病気が発生しやすくなります。精神面での病気だけでなく身体面の感染症にも注意しましょう。多くの病気は健康的な生活によって防ぎやすくなります。冬季うつ病と同時に予防して、冬を元気に過ごしましょう。冬季うつ病と同時期に注意が必要な病気の例を紹介します。

寒暖差疲労

冬には「寒暖差疲労」と呼ばれる心身の不調に注意しましょう。気温変化による自律神経の乱れが原因で、疲労感だけでなく肩こり・めまい・気分の落ち込みなど多くの症状が発生します。寒い屋外と暖房が効いている屋内など、気温に大きな差がある環境が発症につながります。寒暖差が大きく変化すると体が寒暖差に対応しようとして多くのエネルギーを消耗します。エネルギーの消耗が疲労を招き、不調につながるものです。
寒暖差疲労は自律神経の乱れによる病気です。防止のためには寒暖差を避けると同時に、自律神経の乱れも防げるよう努めましょう。規則正しい生活や適度な運動に加えて、入浴による疲労回復やリラックスも効果的です。

自律神経の不調についてはこちらの記事も参考にしてください。

インフルエンザ

毎年冬に流行しているインフルエンザにも要注意です。主にA型・B型と呼ばれるタイプのウィルスが広まって、発熱・頭痛・咳など多くの症状が現れます。一般的な風邪より症状が重くなりやすく、関節痛や筋肉痛など全身の症状がみられる場合もある点が特徴です。
インフルエンザは毎年ワクチンが作られており、全国各地で接種できる体制が整えられています。ワクチンの予防接種を受けておけば、万一感染しても症状の悪化を防ぎやすくなるでしょう。規則正しい生活は身体の免疫力を高めてくれるため、ワクチンと同様に重症化を防いでくれます。その他、感染自体を防ぐために手洗い・うがいも欠かさず行いましょう。

ノロウィルス

冬を中心に食中毒の大きな原因となる「ノロウィルス」にも気をつけましょう。食品や水などを介して体内に侵入すると胃腸炎を起こして、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛などが発生します。症状には個人差があり、場合によっては風邪のような症状だけで収まります。
ノロウィルスは症状を和らげるワクチンがないため、感染防止には自主的な予防が重要です。食品の十分な加熱や調理器具の消毒、こまめな手洗いを欠かさずに行いましょう。身近な人がノロウィルスに感染した場合は、周囲にも感染しないように便・吐しゃ物などの扱いに要注意です。

まとめ

冬季うつ病について、概要や対策などを紹介しました。冬季うつ病は冬に多く発症する精神疾患で、一般的なうつ病と似ている点だけでなく異なる点も存在します。防止や治療には太陽の光が効果的です。寒い冬でも家に閉じこもらず、積極的に日光を浴びて体の調子を整えましょう。
冬は気候に加えて年末年始のような慌ただしさもあり、心身が疲労しやすい時期です。心身の乱れは冬季うつ病だけでなくさまざまな病気につながります。積極的に心身をリフレッシュさせて、冬の寒さに負けず元気な生活を送りましょう。

冬季うつ病のような精神面の病気についてはこちらの記事一覧も参考にしてください。
また、冬の話題についてはこちらの記事一覧も参考にしてください。