学習や趣味など幅広く活用できるシングルボードコンピュータを紹介!

現代ではパソコンやスマートフォンなどコンピュータが身近な存在になっていますが、具体的な構造まで知っている人は多くありません。さまざまな家電にもコンピュータが搭載されてインターネット接続も行われている時代、コンピュータについて知らないと問題が起きるかもしれません。
コンピュータについて学べる電子機器として「シングルボードコンピュータ」が挙げられます。手軽に試せるシンプルなコンピュータで、学習だけでなく趣味やビジネスなどにも活用できます。この記事ではシングルボードコンピュータの概要や特徴、活用場面などを紹介します。
シングルボードコンピュータとは
シングルボードコンピュータは、小さな1枚の基板に必要な機能を搭載したコンピュータのことです。頭文字をとって「SBC」とも呼ばれます。パソコンやスマートフォンよりも小さな範囲に、コンピュータとして欠かせない最低限のパーツがまとまっています。安価で構造も単純なため、コンピュータ分野の教育や各種電子機器への組み込みなど幅広い分野で活用できます。IT技術やIoT技術の発展・浸透に従って、シングルボードコンピュータの活躍場面も拡大しています。シングルボードコンピュータの構造と主な製品は以下のとおりです。
構造
シングルボードコンピュータの構造は一般的なデスクトップパソコンと大きく変わりません。「マザーボード」と呼ばれる基盤にSoC・RAM・ストレージ・各種端子などが搭載されています。手のひら程度の小さなサイズに、コンピュータとして動作可能な機能・要素の大部分が収まります。端子にキーボード・モニター・電源アダプタなどを接続すれば、パソコンと同じ要領で使用可能です。
ストレージにはSDカードが多く用いられており、OSもSDカード内に組み込みます。OSはWebサイトからダウンロードするほか、ストレージ内にあらかじめ入っている場合もあります。
主な製品
シングルボードコンピュータは世界各国から販売されており、特に有名な製品として「Raspberry Pi」が挙げられます。また、シングルボードコンピュータに近い「ワンボードマイコン」として「Arduino」も存在します。どちらも世界中で多くの用途に用いられている製品で、それぞれに異なる特徴やメリットがあります。主な特徴として以下のものが挙げられます。
・Raspberry Pi
2012年にイギリスで開発された製品です。もともと教育用のコンピュータとして作られており、価格の安さとシンプルな構造から子供の学習以外でも大ヒットしました。「ラズベリーパイ」という名前を略して「ラズパイ」とも呼ばれます。
1枚の基板上に最低限の機能がすべて備わっているだけでなく、多数の機器と接続して自由にカスタマイズできます。OSや各種ネットワークも使用できるため、特にWebシステムや複数システムの連携などが得意分野です。
・Arduino
2005年にイタリアで開発された製品です。電子工作やロボット制作を学ぶ学生向けの安価なマイコンボードとして開発されています。読み方は「アルデュイノ」「アルディーノ」などが用いられます。
Raspberry Piと異なり、ArduinoはOSを使用しません。一度に1つの動作へと集中するため、複雑な処理が苦手な一方でリアルタイム性を確保できます。モーターやスイッチのように単純でハードウェアよりの動作が得意分野です。
参照:Raspberry Pi公式サイト
Arduino公式サイト
シングルボードコンピュータとほかのコンピュータとの違い
コンピュータが身近な存在になっている現代では、シングルボードコンピュータ以外にもさまざまなコンピュータが広く用いられています。また、シングルボードコンピュータに近い形態のコンピュータも存在します。シングルボードコンピュータを適切に使えるように、ほかのコンピュータとの違いを把握しておきましょう。以下ではシングルボードコンピュータとパソコンやワンボードマイコンとの主な違いを紹介します。
パソコンとの違い
シングルボードコンピュータとパソコンは基本的な構造が似ていますが、さまざまな点で違いも存在します。主な違いは以下のとおりです。
・安価に購入できる
シングルボードコンピュータはパソコンと比べて安く調達できます。安価なものであれば数千円で購入できるため、気軽に調達して学習や工作などに使えます。高価なパソコンよりも使用のハードルを低くできるでしょう。
カスタマイズ性が高い
シングルボードコンピュータには非常に多くの機器を接続できるため、パソコン以上に柔軟なカスタマイズが可能です。接続した機器を操作するプログラムを組んで、工夫すればパソコンでも作れない機器を作れるでしょう。
・性能は高くない
シングルボードコンピュータ自体の性能は、パソコンと比べて高くありません。高い負荷がかかる複雑な処理は難しく、性能面の拡張性も低めです。複雑で高度な処理を行いたい場合はパソコンを使用しましょう。
ワンボードマイコンとの違い
シングルボードコンピュータに近い電子機器としてワンボードマイコンも挙げられます。どちらも1枚の基板にコンピュータとして最低限の機器が搭載されているものですが、ある程度の違いも存在します。主な違いは以下のとおりです。
・OSを搭載する
ワンボードマイコンと異なり、シングルボードコンピュータの多くは汎用的なOSを搭載します。キーボードやモニターなどを接続すればパソコンのように使えるため、シングルボードコンピュータ上で直接プログラムを組めます。
・性能が高い
シングルボードコンピュータはワンボードマイコンと比べて高めの性能を持っています。パソコンほどでなくともある程度の処理は行えるため、ワンボードマイコンより複雑な使い方が可能です。
シングルボードコンピュータの特徴
シングルボードコンピュータはさまざまな特徴を持っており、独自の使い勝手に寄与しています。良い特徴だけでなく注意すべき特徴もあるため、問題なく使いこなせるように把握しておきましょう。シングルボードコンピュータの主な特徴を以下で紹介します。
価格が安い
シングルボードコンピュータの大きな特徴として価格の安さが挙げられます。数千円で購入できる製品も多く、気軽に手に取って活用できます。学習・趣味・ビジネスなど、いずれの分野でも安さは大きな魅力です。安価な製品であれば誰でも手を出しやすく、ユーザーの増加により情報収集も容易になります。
価格の安さはユーザーの積極性にも好影響をもたらします。一般的に、高価な製品を使用する際は故障を恐れて柔軟な使い方ができません。逆に製品が安ければ、万一失敗して壊しても大きな損失の発生を防げます。失敗を恐れず積極的に新しい使い方を試せるため、ユーザーの成長に貢献してくれます。
汎用性が高い
さまざまな機器を接続できる汎用性の高さもシングルボードコンピュータの特徴です。各種センサー・LED・モニターなどを接続して、各機器の操作も可能です。多種多様な電子機器を自作して活用できるでしょう。活用できる分野も学習やビジネスなど多彩なため、アイデア次第で思いもよらない使い方が生まれるかもしれません。
シングルボードコンピュータにはさまざまな種類があり、それぞれ得意分野も異なります。現在使用している製品よりも、さらに自分が作りたい電子機器に適している製品があるかもしれません。多くの製品を調べてみて、お気に入りの製品を探してみましょう。
使いこなすまでのハードルが高い
シングルボードコンピュータは幅広い用途に使えますが、使いこなすためのハードルは高めです。
シングルボードコンピュータの使用には電源やSDカードなど周辺機器も必要で、すべて買いそろえる場合ある程度の出費が求められます。使用環境や目的によってはケースやクーラーなども用意する必要があるほか、厳しい環境で問題なく動作する機器の選択が必要です。購入後の運用にも注意しましょう。接続する機器によっては、使用のためにプログラミングが必要になる場合もあります。
使用機器の選択や動作プログラムの作成など、シングルボードコンピュータの効果的な利用にはコンピュータに関するある程度の知識が必要です。
精度や耐久性は高くない
シングルボードコンピュータの多くは精度や耐久性が低めです。もともと教育用に開発された製品が多く、休みなく動作し続ける環境は想定されていません。特に電源やストレージで不調を起こしやすく、使用場面によってはトラブルにつながる場合もあります。使用機器や設定などである程度改善できる場合もありますが、根本的な解決をできるとは限りません。
シングルボードコンピュータを使用する際は具体的な用途について検討しましょう。厳密な制御や高度な安全性を要求される用途の場合、十分な性能を発揮してくれない可能性もあります。無理に条件を満たそうとするとコストの増加につながるかもしれません。事前の検討でシングルボードコンピュータの利点を生かせるよう努めましょう。
シングルボードコンピュータの活用場面
小さくシンプルな構造のシングルボードコンピュータは、コンピュータが用いられるさまざまな場面で活用されます。コンピュータについて学んだり新たな電子機器を作ったりと、幅広いユーザーの需要を満たしてくれるでしょう。自分ならではの活用方法を考えてみてください。シングルボードコンピュータの活用場面の例を以下で紹介します。
簡易的なパソコンを作る
シングルボードコンピュータは単体でコンピュータとして使えるため、簡易的なパソコンを作れます。OSをインストールできたりGUIに対応していたりする製品が多く、一般的なパソコンに近い感覚で使用できるでしょう。製品によってはオフィスソフトやWebブラウザなども使用可能です。最低限の用途であれば比較的安価にパソコンを用意できます。
消費電力の小ささや少なくない記憶容量を生かしてサーバーの作成も可能です。パソコンで作成するよりも消費電力を抑えられるため、低コストでサーバーを運用できます。一方でシングルボードコンピュータは耐久性が高くない面もあるため、構造やサーバーの使用目的などを考えてから作成しましょう。なるべく負荷がかかりづらく、重要なデータを扱わないサーバーに適しています。
プログラミングを学習する
シングルボードコンピュータはプログラミングの学習教材として適しています。教育目的で開発された製品が多く、シンプルな構造による理解しやすさもあってプログラミング入門に活用できます。価格の安さから導入もしやすいため、積極的に使用してプログラムやコンピュータへの理解を深められるでしょう。
シングルボードコンピュータでのプログラミングはプログラミング言語を使用する本格的なもの以外も可能です。「ビジュアルプログラミング」と呼ばれる子供や初心者でもわかりやすい方式も使用できるため、プログラミングを基礎から学ぶために役立てられます。
電子機器に搭載する
シングルボードコンピュータはワンボードマイコンに近い電子機器のため、電子工作の部品として組み込めます。多くの電子機器に搭載されているマイコンと同じ役割を担い、自作した電子機器を制御してくれます。音楽プレイヤーや防犯カメラなど、工夫次第で多彩な電子機器を自作・活用できるでしょう。
シングルボードコンピュータにはさまざまな機器やソフトウェアを接続・インストールが可能で、製品によっては非常に多くの選択肢が存在します。カスタマイズの選択肢が増えれば作成できる電子機器の可能性も広がるため、より多くの機器を作れるようになります。シングルボードコンピュータで使用できる機器の情報を多く得て、自分に適した電子工作を行ってみましょう。
IoT機器に組み込む
近年存在感を強めているIoT機器にもシングルボードコンピュータが活用されます。
IoTは「モノのインターネット」を意味する言葉で、インターネットへの接続が可能な電子機器を指します。インターネットで機器の動作を自動化させたり機器同士を連携させたりできるものです。IoT化させた家電は「スマート家電」とも呼ばれます。
シングルボードコンピュータはインターネット接続が可能であり、電子機器への組み込みも容易に行えます。そのため、比較的手軽に各種の機器をIoT化させられるようになりました。「インターネット接続でラジオやモバイルルーターを作る」「光センサーも組み合わせて空室チェックする」など、幅広い利用が可能です。
IoTを活用するスマート家電についてはこちらの記事も参考にしてください。
まとめ
シングルボードコンピュータの概要や特徴、活用場面などを紹介しました。シングルボードコンピュータは小型ながらコンピュータとして必要な機能がそろっています。そのため、コンピュータの学習や組み込みでの電子工作など幅広い分野で活用できます。シングルボードコンピュータの使い方や強みなどを把握して、スキルアップや楽しみなどに役立てましょう。
現在では小中高校の授業でプログラミング学習が必修化されています。世界的なIT技術の進歩とあわせて、コンピュータへの知見が不可欠なものになりました。技術や知識を習得するためには実際に触って楽しめると効果的です。気軽に手を出しやすいシングルボードコンピュータを使って、これからの時代に対応できるスキルを身につけましょう。