雪虫の大量発生による影響は?雪虫の生態や影響を抑える対策なども紹介!

公開日:2024/10/08
雪虫の大量発生による影響は?雪虫の生態や影響を抑える対策なども紹介!

北海道では、秋の終わりごろに「雪虫」という小さな虫を多く見かけるようになります。雪や綿毛のように白くモコモコした体が特徴的な虫で、「綿虫」と呼ばれる場合もあります。雪虫は昔から冬の始まりを教えてくれる風物詩として知られてきました。しかし、近年では近い種類の昆虫共々大量発生して悩みの種にもなっています。雪虫そのものや大量発生などについて知識を得て、雪虫による悪影響を抑えましょう。この記事では雪虫の概要や大量発生による影響、対策などを紹介します。

雪虫とは

秋の北海道で飛び回る雪虫には主に2種類存在しており、それぞれ外見や生態が異なります。雪虫の影響や対策などをしっかりと把握するために、まずは雪虫について知っておきましょう。この章では雪虫の概要を解説します。

種類

秋の終わりにフワフワと飛び回って「雪虫」と呼ばれる昆虫には、主に2種類存在します。どちらもアブラムシの仲間で見た目や生態も似ているため、両方をまとめて「雪虫」と称されます。

・トドノネオオワタムシ
体を白い綿毛のような形の蝋で覆っている点が大きな特徴です。飛ぶ力が弱く、風に流されてフワフワと飛行します。白くモコモコした見た目と風に流されながら飛ぶ様子が雪のように見える昆虫です。

・ケヤキフシアブラムシ
トドノネオオワタムシと異なり、白い綿状の物質が体についていません。綿状の物質がないためトドノネオオワタムシと比べて黒っぽく見えます。厳密には「雪虫」ではありませんが、トドノネオオワタムシと混同されやすい昆虫です。

生態

雪虫は1年の間に複数種類の植物を利用して成長・繁殖します。
トドノネオオワタムシの場合、ヤチダモやハシドイなどモクセイ科の木に産み付けられた卵から春に幼虫が生まれます。このときの幼虫はメスのみで、木の表面で育ち産卵します。新たに生まれた世代は羽根を持っており、夏にトドマツの木へと移動して根に卵を産みます。トドマツの根で成長・産卵を繰り返して、秋になると再び羽根を持つ世代が生まれます。この羽根を持つ世代が「雪虫」と呼ばれるもので、もう一度モクセイ科の木に飛んでいき産卵します。冬の間にメスだけでなくオスも生まれて、交尾を挟んで産卵して春を待ちます。
ケヤキフシアブラムシの卵はケヤキの樹皮から孵ります。幼虫は葉の裏に寄生してこぶのような「虫えい」を作り、虫えいの内部で成長・産卵します。夏に羽根を持つ世代が生まれて虫えいからササやタケに移り、もう一度成長・産卵を繰り返します。秋に再び羽根を持つ「雪虫」世代が生まれて、ケヤキへと戻って雌雄両方の特徴を持った世代を生みます。このケヤキで生まれた世代は卵を体内に抱えたまま樹皮で死に、春まで卵を守ります。春になると親の体が剥がれ落ちて、あらわになった卵から幼虫が生まれます。
どちらの種類も秋に羽根を持って別の植物へと移動する習性があり、秋に移動する世代を指して「雪虫」と称されます。

初雪との関係

雪のような姿と飛び方が特徴的な雪虫ですが、実際の雪とも関連する昆虫です。昔から「雪虫が飛ぶと1週間で雪が降る」と言われており、初雪の時期を大まかに知らせてくれる存在としても知られてきました。
ただ、実際に1週間で初雪を迎えるケースはあまり多くありません。ウェザーニュース社が2007年から2011年に行った調査では、雪虫の大量発生から初雪までの平均日数は2.24週間でした。2023年の札幌市でも初雪の観測が11月16日だったため、10月下旬の大量発生から2週間程度経過しています。
いずれにせよ、雪虫の出現は初雪・冬が近づいているサインです。衣替えや暖房器具の点検など、冬の支度を進めていきましょう。

参照:初雪を知らせる使者!?雪虫の不思議 | ウェザーニュース
   雪の初日 | 札幌管区気象台

雪虫が大量発生する原因

雪虫は年によって大量発生する場合があり、主に夏の猛暑が原因とされています。近年では2019年や2023年などに大量発生しました。周辺に存在する植物の種類によっても発生する雪虫の種類が異なるため、夏の暑さや多く見かける木の種類に注意しておきましょう。雪虫が大量発生する主な原因を以下で紹介します。

夏の気温

雪虫の生態はまだわかっていない点が多く存在しますが、大量発生する主な原因として夏の気温がかかわっているとされます。夏場の暑い日が続くと雪虫は成長・産卵を多く繰り返して、例年より多くの「雪虫」世代を生みます。そのため、夏の猛暑が雪虫の大量発生につながっていると言われます。近年の夏は北海道でも厳しい暑さの日が多く、雪虫にとって大量発生しやすい気候になっています。気象庁によると、2024年の夏も平年より気温が高い夏でした。そのため、2024年の秋も雪虫が多く発生するかもしれません。

参照:日本の地域平均気候表 | 気象庁

雪虫の出現量は気候条件により左右されるため、条件が良ければ複数回大量発生する場合もあります。2023年は秋でも暖かい日が多く、10月下旬に大量発生したのち11月下旬にも再度大量発生しました。

周辺の植生

雪虫は複数種類の植物を利用して成長・繁殖する昆虫のため、利用する植物の有無によっても発生する量が変わります。
北海道全域で広くみられるトドノネオオワタムシはヤチダモやトドマツなどを利用します。どちらも北海道全域で生育可能な植物で、街路樹や防雪林などとして活用されているケースも少なくありません。北海道内の各地に利用できる植物が存在するため、トドノネオオワタムシも各地に広く生息可能です。
一方、ケヤキフシアブラムシは成長・繁殖にケヤキが必要です。ケヤキは北海道に自生していないため、基本的にはケヤキフシアブラムシも北海道に生息できません。北海道内でケヤキフシアブラムシを見かける理由として、ケヤキが街路樹に広く利用されている点を挙げられます。札幌や函館などの都市部にケヤキが多く植えられて、ケヤキフシアブラムシも生息できる環境になりました。特に札幌中心部には多くのケヤキがあるため、トドノネオオワタムシ以上にケヤキフシアブラムシが大量発生しやすくなります。

参照:北限のケヤキ | 森林科学
   トドマツ、ヤチダモ、ケヤキ | 北海道の街路樹 -街路樹の種類と事例集-

雪虫の大量発生による影響

雪のような見た目でフワフワと飛び回る雪虫は、少数であれば秋の終わりの風物詩として幻想的で儚い印象を受けるでしょう。しかし大量発生すると、風情がなくなるだけでなくさまざまな悪影響にもつながります。雪虫の大量発生による主な影響として以下のものが挙げられます。

外を歩きづらくなる

雪虫が大量発生すると、野外の移動に少なくないストレスが発生します。歩いているだけで多数の雪虫が体にぶつかり、服に留まるだけでなく髪についたり口に入ったりと不快な思いをするでしょう。刺したり毒を持っていたりなどの直接的な悪影響はありませんが、うっとうしく感じて外出する意欲が失われる可能性もあります。人によってはアレルギー反応を起こす場合もあるとされるため要注意です。
徒歩だけでなく、自動車で移動していても雪虫の悪影響が生じます。走行中の車体に雪虫がぶつかるとそのまま死骸が付着するため、ボンネットやフロントガラスなどを中心に車体が汚くなります。不快感や掃除の手間・費用が増えて、やはりストレスの発生につながるでしょう。

樹木が荒らされる

雪虫は成長・繫殖の過程でさまざまな植物を利用しますが、場合によっては利用された植物に悪影響が生じる可能性もあります。
トドノネオオワタムシはモクセイ科の樹木やトドマツなどに寄生して、樹液や組織液を吸って成長します。大きく成長した木であれば影響ありませんが、小さな幼木の場合は成長が阻害されたり枯死したりする場合もあるとされます。被害が生じた部位には裂け目ができるため、別の寄生虫により被害が広がる可能性もあります。

参照:トドノネオオワタムシ | 北海道立総合研究機構

ケヤキフシアブラムシの場合、主にケヤキに悪影響を生じさせます。ケヤキフシアブラムシはケヤキの葉に「虫えい」と呼ばれる壺のようなこぶを作り、葉の見た目を損ねます。夏になり虫えいから出ていくと虫えいは茶色く変色するため、さらに目立ちやすくなります。虫えいによる樹木への健康被害は基本的にありませんが、樹木全体に被害が生じると枝枯れにつながるおそれもあります。

参照:No.17 ケヤキフシアブラムシ | 宮城環境保全研究所
   ケヤキフシアブラムシ | 北海道立総合研究機構

悪臭が発生する

雪虫が大量発生すると悪臭を感じやすい点にも注意が必要です。雪虫は広い意味でカメムシの仲間であり、カメムシほどでなくとも独特の臭いがあります。1匹ずつであればごく微量でも、大量に発生すると臭いも強まります。特に、生きているものより死骸が強い臭いを発します。大量発生により雪虫の死骸が溜まると、「生乾きの洗濯物」とも呼ばれる独特な悪臭が感じられるでしょう。
雪虫の臭いはケヤキフシアブラムシに由来するものが中心です。周辺でケヤキフシアブラムシが多く出現する場合、飛び回っている雪虫そのものだけでなく臭いにも注意しましょう。

雪虫への対策

雪虫の大量発生による影響の特に身近な例として、外出時に多数ぶつかって体や服についてくる点が挙げられます。極力ストレスなく外出できるように、可能な範囲の対策を行っておきましょう。雪虫への主な対策方法を以下で紹介します。

マスクをつける

雪虫が大量発生している状態で外出する場合、極力マスクをつけるようにしましょう。口や鼻を覆って雪虫の侵入を防げます。特に雪虫によりアレルギー反応を起こす人は、体調を守るためにもマスクが欠かせません。雪虫の侵入だけでなく雪虫の臭いによる不快感を抑えられる点もメリットです。
雪虫によるアレルギー反応への対策は花粉症の対策に似ています。マスクだけでなくゴーグルをつけたり、帰宅後に手洗い・うがいを念入りに行ったりする対策も有効です。雪虫が大量発生する時期は気温が低下してくる時期でもあるため、防寒も兼ねて帽子や手袋などの着用も積極的に検討しましょう。

ゆっくり歩く

雪虫が発生している場所を通る際は、可能な限りゆっくり歩きましょう。早く通り過ぎたい一心で走ったり早歩きしたりすると、雪虫と高速でぶつかり体につきやすくなります。場合によってはぶつかってそのまま雪虫がつぶれるおそれもあります。落ち着いてゆっくり歩き、雪虫が極力体につかないように注意しましょう。
自転車やバイクなどを使うと徒歩以上に移動速度が上がるため、雪虫が非常に多くぶつかりやすくなります。可能であれば、雪虫が大量発生している時期には自転車やバイクなどでの移動を控えたほうが良いかもしれません。

ツルツルした材質の服を着る

着用する服の選択も雪虫への対策になります。可能な限り表面がツルツルした材質の服を選びましょう。飛んできた雪虫が留まったり引っかかったりしづらくなるため、服が雪虫だらけになる問題を防げます。逆に綿や羊毛など毛足が長い材質の服は雪虫が引っかかりやすく、服についた雪虫を払う難易度も上がります。うまく払わないと雪虫がつぶれて服を汚すため、可能な限り払う必要がない状況を整えましょう。
服についた雪虫を払う際は、雪虫の周辺を叩いて落としましょう。雪虫に直接触るとつぶれやすいため、周りを叩いて雪虫が飛んでいくようにします。直接雪虫に触れられるならば、羽根をそっとつまんでゆっくり服から引き離す方法もあります。雪虫をつぶさないように注意しましょう。

気象条件に注意する

雪虫の出現量はその日の気象条件によってある程度左右されます。基本的には風が弱く晴れた日に飛びやすく、特に夕暮れの時間帯が適しているとされます。雪虫が活動しやすい気象条件が整うと出現量も増えるため、風が弱く晴れた日の夕方は雪虫に注意しましょう。
雪虫は飛ぶ力が弱く、風に流されやすい昆虫です。風が強い日であれば雪虫も飛びづらくなるため、比較的安心して出かけられるかもしれません。可能であれば夕方の移動も避けてみましょう。雪虫が多い時間帯の移動を避ければ、ストレスなく歩き回れる可能性が上がります。

まとめ

雪虫の概要や大量発生による影響、対策などを紹介しました。晩秋の北海道を飛び回る雪虫は、少数であれば儚さや風情を感じられる昆虫です。しかし大量発生すると厄介者にもなるため、雪虫の影響を抑えられるような対策を施しましょう。
雪虫は秋の終わりに飛び回る昆虫であり、冬の到来や雪の降り始めを教えてくれる存在でもあります。雪虫への対策に加えて冬支度も進めておき、季節の変わり目を落ち着いて迎えられるようにしましょう。

雪虫のような秋の話題に関してはこちらの記事一覧も参考にしてください。