就労継続支援事業所とは?ほかの障害福祉サービスとあわせて解説!

公開日:2023/12/22
就労継続支援事業所とは?ほかの障害福祉サービスとあわせて解説!

身体や精神などにハンディキャップを抱える障害者は、一般企業で健常者と同様に働けないケースが多く見られます。現代では一般の就労が難しい障害者のためにさまざまなサービスが提供されていますが、適したサービスを選択する必要があります。「生活のために収入を得たいが一般企業に就職できない」「障害福祉サービスは種類が多く、どれを利用すべきかわからない」などと悩む障害者も多くいるでしょう。

障害福祉サービスの代表的な例として「就労継続事業所」が挙げられます。軽作業やデータ入力など事業所ごとに異なる各種の業務をこなして、一定額の工賃を受け取るシステムです。

この記事では有力な障害福祉サービスとして、就労継続支援事業所の概要や他サービスとの違いなどを解説します。

就労継続支援事業所とは

就労継続支援事業所は、障害や難病などにより一般就労が難しい方に就労機会を提供する福祉サービスです。事業所を利用すればある程度の収入を得られるだけでなく、事業所での仕事を通じて知識・経験の蓄積も期待できます。「事業所でスキルや生活リズムなどを整えてから改めて一般就労を目指す」という選択も可能でしょう。 就労継続支援事業所はA型・B型の2種類に分かれており、それぞれ対象者や利用条件などが異なります。A型事業所とB型事業所の内容や違いを以下で解説します。

A型事業所

就労継続支援A型事業所では、利用者が事業所と雇用契約を結んで利用します。雇用契約を結ぶため工賃に最低賃金が適用されて、利用者はB型事業所と比べて多くの収入を得られます。事業所にとっても雇用状態を安定させられるため、作業能力や収益の改善を期待しやすくなります。

A型事業所の利用条件は以下のものです。主に特別支援学校の卒業者や一般企業の退職者などが該当します。体力や職業能力が不足していると一般就労しづらくなるため、A型事業所の利用も有力な選択肢になるでしょう。

  1. 移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
  2. 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
  3. 就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者

B型事業所

就労継続支援B型事業所は、利用者と事業所のあいだで雇用契約を結びません。工賃が安くなる代わりに就労時間の縛りも発生しないため、利用者は自身への負担を抑えつつ利用できます。事業者にとっては賃金・就労体系の自由が利くメリットを挙げられます。

B型事業所の利用条件は以下のものです。A型事業所の利用者より障害の程度が重い方や高齢の方などが多く該当するでしょう。さまざまな理由で雇用契約に基づく勤務をできない場合に有力な選択肢となります。

  1. 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
  2. 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
  3. 1及び2に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者

就労継続支援事業所と障害者雇用の違い

障害者が就労する方法として、就労継続支援事業所だけでなく障害者雇用も挙げられます。障害者雇用は障害者雇用促進法により設けられている制度で、従業員の人数に応じた人数の障害者を雇用するよう事業者に定められています。一般的に事業者は障害者雇用で採用した従業員に対してさまざまな配慮を行いますが、障害者も可能な限り従業員として効率的な業務の進行が求められます。

すなわち、障害者雇用とは一般の事業者が従業員として障害者を採用することを指します。障害福祉サービスとして就労機会を提供する就労継続支援事業所とは、優先順位や障害者への対応などで違いがあります。障害を持っていても健常者とほぼ同様の勤務ができるならば障害者雇用を、同様の勤務が難しいならば就労継続支援事業所を活用しましょう。

就労継続支援事業所以外の障害支援サービス

障害者の支援サービスは就労継続支援事業所以外にも存在します。就労継続支援事業所とは利用者に提供されるプログラムや利用可能期間などさまざまな違いがあるため、自分に適したサービスを選択しましょう。

この章では、主な障害支援サービスである就労移行支援事業所と精神科デイケアについて解説します。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般就労を目指す障害者が必要な知識・技能を習得できるようサポートする事業所です。就職後も職場に定着できるように、定期的な職場訪問サービスも提供します。

就労移行支援事業所と就労継続支援事業所には、以下2点の大きな違いがあります。

・利用可能時間の有無

就労移行支援事業所は標準2年間の利用可能期間があり、2年以内に一般企業や就労継続支援事業所などに就労しなくてはなりません。「2年の間に就職できる」というイメージを持てるならば、就労移行支援事業所の選択が有効です。

・工賃の有無

就労移行支援事業所では工賃が発生しません。事業所の利用中は収入を得られないため、障害年金や利用料減免など各種の手法を用いて家計をやりくりする必要があります。基本的に交通費の支払いや昼食の提供も行われないため注意しましょう。

精神科デイケア

精神科デイケアは主に精神障害者を対象としているサービスで、障害者が就労・復職・進学などを目指せるようサポートするものです。基本的に精神科を設ける病院や診療所が開設しており、デイケアの利用者も病院や診療所の患者が多くを占めます。利用者はスポーツ・創作活動・ミーティングなど幅広いプログラムを行い、精神疾患の抑制を図れます。

精神科デイケアは医療分野からのサービスであり、福祉分野の就労継続支援事業所とは競合しません。そのため、精神科デイケアとの併用も可能です。A型事業所は就労時間の縛りがあるためデイケアの利用時間にも制約が生じますが、B型事業所ならば柔軟に併用できます。就労継続支援事業所で働いてからデイケアに向かい、心身の負担をリフレッシュできるでしょう。

まとめ

就労継続支援事業所の概要や、障害者雇用および他支援サービスとの違いについて解説しました。障害者が収入を得つつスキルアップを図れる場として、就労継続支援事業所は大いに役立つサービスです。利用を検討する際は他支援サービスやA型・B型による違いなどの情報を集めて、自分に適していると確かめてから申し込みましょう。

少子高齢化の進行により労働力の不足が深刻化している昨今では、障害者も貴重な人材として活躍しやすくなっています。就労継続支援事業所で生活基盤と就労スキルを整えて、社会を支える一員としての活躍を目指してみてください。

なお、就労継続支援事業所についてはこちらの記事一覧も参考にしてください。