就労継続支援A型事業所では何時間働ける?勤務時間や休日の数など紹介!

公開日:2024/12/17
就労継続支援A型事業所では何時間働ける?勤務時間や休日の数など紹介!

心身にさまざまなハンディキャップを抱えている障害者は、健常者と比べて生活維持のための就労を行いづらい問題があります。問題解決のために、国や企業がさまざまな形で障害者の就労手段を設けています。
障害者の主な就労手段として「就労継続支援A型事業所」があります。障害者が働きやすい環境を整えられている福祉サービスですが、場合によっては勤務時間や賃金などの面でマッチしないかもしれません。後悔せず充実した気持ちで働けるように、自分と事業所との相性を考えておきましょう。この記事では就労継続支援A型事業所の概要や勤務時間、障害者が長く働く方法などを紹介します。

就労継続支援A型事業所とは

就労継続支援A型事業所は障害者を対象とする就労支援サービスです。一般企業での就労が難しい障害者に就労や金銭収入などの機会を与えるものです。障害者は事業所と雇用契約を結んで、ある程度の収入を得つつ働けます。雇用契約を結ぶため、賃金は最低賃金以上が保証されます。
就労継続支援事業所にはA型だけでなくB型も存在します。主な違いは雇用契約の有無で、B型事業所は雇用契約を結ばないため最低賃金が保証されません。収入は少なくなりますが、障害者自身の体調にあわせた勤務を行いやすくなる利点もあります。
A型事業所での業務内容は事業所ごとに異なります。清掃・梱包・データ入力などが多く、直接的な対人コミュニケーションをあまり求められない業務も珍しくありません。一方で、飲食業を中心に積極的なコミュニケーションを求められる場合もあるため確認が必要です。

就労継続支援事業所についてはこちらの記事一覧も参考にしてください。

参照:就労継続支援A型 | 厚生労働省

就労継続支援A型事業所での勤務時間・休日数

就労継続支援A型事業所で働く場合、勤務時間や休日は事業所の規定に従います。雇用契約を結ぶため法的な規定も存在しますが、基本的には事業所にあわせて働く必要があるでしょう。多くの事業所ではフルタイムでの勤務が認められていない点や、事業所・タイミングによっては土曜日の出勤が必要な場合もある点などに要注意です。就労継続支援A型事業所の勤務時間や休日について、以下で詳しく解説します。

勤務時間

就労継続支援A型事業所での勤務時間は事業所ごとに定められています。厚生労働省による2022年度の調査では、調査対象の約半数にあたる49.6%が「4時間以上4時間30分未満」に設定していました。

参照:(2) 基本報酬スコアの状況 | 厚生労働省

フルタイムで勤務可能な事業所が少ない理由として、「事業所の利用者はフルタイムで働けない人も多い」「事業所のビジネスモデル上フルタイムでは利益が出づらい」などの点があるとされます。業務内容の難易度が高めの事業所では、利用者がフルタイムで働き多くの利益を出せる場合もあります。
障害者でも働きやすいように、勤務時間中の休憩時間が多めに設けられている場合もあります。「1時間に10分の休憩をとれる」のような形で、昼休み以外の小休憩であれば賃金も支給されるでしょう。残業もほぼ発生せず、定時を迎えたら勤務終了です。

休日数

就労継続支援A型事業所での休日数は、主に「週2日休み」か「月8日休み」の2パターンが採用されています。週2日休みは5日働いて2日休む一般的な形式で、主に土・日曜日が休日とされます。月8日休みは月の日数-8日を勤務日数とする形式で、祝日や土・日曜日の数によって土曜日の出勤も発生します。月8日休みのパターンは、障害者が1ヶ月間にサービスを利用できる日数の上限です。

参照:1 利用日数に係る特例の適用に関する届出について | 札幌市

月8日休みのパターンは週2日休みパターンより勤務日が増えるため、利用時の負担が増えやすくなります。一方で得られる賃金も増えるため、体調や希望収入額などと照らし合わせて検討しましょう。

有給休暇

就労継続支援A型事業所の利用時には雇用契約を結ぶため、利用者には有給休暇が付与されます。年間の付与日数は勤続年数や週ごとの勤務時間によって法律で定められており、最低でも法規定された日数を使用可能です。条件ごとの有給休暇付与日数は以下のとおりです。

勤続年数(年)付与日数(日)
0.510
1.511
2.512
3.514
4.516
5.518
6.5以上20
週5日以上、あるいは週30時間以上働いている場合
  付与日数(日)
週の労働日数(日)1234
年の労働日数(日)48~7273~120121~168169~216
勤続年数(年)0.51357
1.52468
2.52469
3.525810
4.536912
5.5361013
6.5以上371115
週4日以下、かつ週30時間未満働いている場合

有給休暇は基本的に1日単位で使用可能ですが、事業所によっては1時間単位で使用できる場合もあります。1時間単位で使用できれば「午前中だけ有給休暇を取得する」のような選択も可能になります。事業所に取得可能単位を確認しておきましょう。

参照:次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています | 厚生労働省
   労働基準法 第三十九条 | e-GOV

就労継続支援A型事業所以外で障害者が長く働く方法

就労継続支援A型事業所は障害者が働きやすい環境を整えられていますが、勤務時間や収入などの面で不満を感じる可能性もあります。場合によってはA型事業所以外の職場で働く選択肢も必要になるでしょう。基本的には障害者雇用が選択肢として挙げられますが、障害を公開しない方法も存在します。障害者が就労継続支援A型事業所以外で長く働く主な方法を以下で紹介します。

なお、障害者の就職に関してはこちらの記事も参考にしてください。

一般企業の障害者雇用を利用する

障害者が長時間働く基本的な方法として、障害者雇用制度を活用して一般企業に就職する方法が挙げられます。事業者は一定割合の障害者を雇用するよう法律で義務付けられており、障害者でも働きやすいようにさまざまな配慮がなされています。ハンディキャップにより健常者と同様の就労が難しい人でも、障害者雇用であれば就労できる可能性が向上するでしょう。

参照:障害者雇用促進法 第四十三条 | e-GOV

障害者雇用は障害者でも働きやすい体制が設けられている一方、業務内容や賃金に制約がかかりやすい面もあります。障害者向けの環境整備度合いが企業ごとに異なる点にも注意して、自分が働きやすい企業を選びましょう。

特例子会社に就職する

障害者雇用による就職先として、一般企業だけでなく特例子会社も選択肢に挙げられます。障害者雇用に特別な配慮をしている企業で、特例子会社に勤める障害者も親会社での障害者雇用率に含められます。一般的な障害者雇用以上に充実した環境整備を行えるため、障害者にとっても働きやすいメリットがあります。障害者雇用を前提にしている職場で、落ち着いて業務に取り組めるでしょう。
特例子会社への就職を考える場合、求人数や収入面などに注意して検討しましょう。特例子会社は一般企業より少ないため求人数も少なく、特に地方では非常に数が限られる場合もあります。賃金設定も一般企業より安いケースが珍しくないため、多く稼ぎたい場合には適さないかもしれません。働きやすさと収入のバランスを考えましょう。

特例子会社についてはこちらの記事も参考にしてください。

参照:「特例子会社」制度の概要 | 厚生労働省
   特例子会社一覧 | 厚生労働省

障害を伏せて一般就労する

障害を公開せずに一般就労する選択肢もあります。「クローズ就労」と呼ばれる働き方で、健常者と同じように就職するため基本的にはフルタイムでの勤務が求められます。障害者雇用にこだわる必要がなくなり、全国で多数出されているさまざまな求人がすべて選択肢に入ります。業務内容や待遇なども非常に幅広く、自分が求める条件の求人を探しやすくなるでしょう。
クローズ就労する場合は入社後も健常者として扱われる点に注意が必要です。障害への配慮を受けられないため、障害者雇用と比べて働きづらく感じる可能性もあります。通院の調整も行いづらくなるでしょう。クローズ就労は就職後に負担が増えやすい、という点を考慮しつつ検討してください。

就労継続支援A型事業所の利用に向いている人

就労継続支援A型事業所は障害者が働きやすい環境である一方、一般企業での就労と比べて不足する部分も存在します。A型事業所か一般企業か、自分により適している就労先を判断しましょう。就労継続支援A型事業所の利用に向いている人の例を以下で紹介します。

一般企業での就職が難しい人

主に障害のハンディキャップにより一般企業での就職が難しい場合、就労継続支援A型事業所での勤務が適しています。一般企業で働くには良好な体調や十分な体力などが求められますが、障害者は条件を満たしておらずうまく働けない可能性があります。特に障害が原因で退職した場合、短期間での再就職ができない場合も少なくありません。
無理に一般企業での再就職を目指さず、まずA型事業所で体調を整えてみてください。A型事業所は短時間の勤務が多く、必要以上の負担を感じずに働けます。A型事業所でリラックスして働き、心身の状態が改善されてから改めて行動しても遅くありません。

支援や配慮を受けつつ働きたい人

障害に対するさまざまな支援や配慮が必要な人にも、就労継続支援A型事業所の利用が適しています。A型事業所では障害者の就労を前提にしているため、障害者が働きやすいような体制・環境が整えられています。職業指導員による綿密な指導・サポートを受けられる場合も多く、一般企業での障害者雇用以上に手厚い支援を期待できるでしょう。
A型事業所での支援内容は自身の希望や医師の診断などによって決まります。必要な支援を考えておくとスムーズに働けるでしょう。事業所の利用を通じて心身もリフレッシュさせられれば、より健康的な生活を送りやすくなります。

ある程度収入を得つつ就労訓練をしたい人

就労継続支援A型事業所を利用してステップアップも図れます。A型事業所では最低賃金以上の安定した収入を得つつ、さまざまな業務を日々こなします。業務で求められるスキルや知識を習得したりコミュニケーションの練習をしたりと、事業所での業務をさまざまな訓練につなげられます。A型事業所で訓練したスキル・知識を、一般企業への就職やその後の業務にも活用できるでしょう。
就労訓練を主目的としてA型事業所を利用する場合、事業所で扱っている業務内容を忘れずに確認しておきましょう。自分が訓練したい内容の業務や希望するスキルを習得しやすい業務などを扱っている事業所ならば、より能率的に訓練できます。近年ではIT分野を扱う事業所も増えているため、ITスキルの習得を考える場合にも要チェックです。

まとめ

就労継続支援A型事業所の概要や勤務時間、障害者が長く働く方法などを紹介しました。A型事業所は障害者が働きやすい環境を整えられているサービスですが、勤務時間や賃金などの面で不足を感じるかもしれません。業務内容や受けられる支援に加えて、勤務時間や賃金も検討して事業所を選びましょう。場合によっては事業所でなく一般企業や特例子会社などへの就職も選択肢に入ります。
A型事業所や一般企業などの就労先を問わず、働く際には健康的な生活の維持が大切です。心身の健康や充実度合いなどのバランスを考えて、最も健康的に生活できると考えられる方法を選びましょう。