音を不快に感じる聴覚過敏とは?症状や原因、主な対策などを紹介!

公開日:2024/10/04
音を不快に感じる聴覚過敏とは?症状や原因、主な対策などを紹介!

人間は聴覚によって、身の回りにあふれている多種多様な音を聞き取っています。一般的に聞こえる音は不快感を生じさせませんが、人によっては一般的な音でも強い不快感を覚える場合があります。「聴覚過敏」と呼ばれる症状で、ストレスを感じて生活にも支障をきたしやすくなります。何らかの病気が隠れている可能性もあるため、早めに対応して適切な対策をとりましょう。この記事では聴覚過敏の症状や原因、対策などを紹介します。

聴覚過敏とは

聴覚過敏は耳に入ってくるさまざまな音に対して敏感になる症状で、一般的な音が非常に大きく聞こえたり響いたりするように感じられます。音を聞くだけで苦痛や不快感が生じて、日常生活に支障をきたす可能性もあります。反応する音や不快感の度合いなどは人・体調によって異なる点が特徴です。医師によってとらえ方が異なる点もあり、医師ごとに診断結果や対処法などが変わりうる症状です。聴覚過敏の概要を以下で詳しく解説します。

症状

聴覚過敏になると、日常的に発せられるさまざまな音に対して強い不快感が生じます。明確な定義がないため医師の判断基準も定まっていませんが、主に甲高い音や大きな音などに対して過敏になりやすい傾向があります。過敏になる音の種類や数が一人ひとり異なるため、場合によっては人によって異なる対応が必要です。
聴覚過敏で発生しやすい主な症状として以下のものが挙げられます。

  • ほかの人が気にならない音でも多く反応する
  • 人が多い場所にいると疲れたり体調が悪くなったりする
  • 人の話し声が気になって集中できなくなる
  • 大きな音を聞くと不安やパニックになる
  • 特定の音が気になって頭痛やめまいなどを起こす
  • 子供の声や食器の触れ合う音など高い音を苦手に感じる

不快に感じやすい音

聴覚過敏を抱えていると、人によってさまざまな音を不快に感じやすくなります。不快感を覚える音の種類は人によって異なりますが、主な音の例は以下のものです。

〇人の声に関する音

  • 女性の声や赤ちゃんの泣き声
  • 人ごみでの話し声
  • 継続的に続く咳の音

〇家の中で聞こえる音

  • 掃除機やドライヤーなどの音
  • 冷蔵庫やエアコンなどの作動音
  • 水洗トイレの流れる音
  • 食器が触れ合う音
  • 扉を開け閉めする音
  • 時計の秒針の音

〇外出先で聞こえる音

  • 自動車や電車などの走行音
  • 救急車のサイレン
  • 館内放送やBGM
  • エスカレーターの動作音

同じ人でも体調や気分によって症状が変化する場合もあります。体調が悪かったり強い不安を感じていたりすると、聴覚過敏の症状も悪化しやすい傾向があるようです。

耳栓の有効性

人によっては、聴覚過敏への対処法として耳栓やイヤーマフなどを使用する場合もあります。特定周波数の音を抑えられるとされますが、現状で科学的な根拠は認められていません。逆に、耳栓が原因で聴覚過敏を慢性化させるおそれもあるとされています。耳栓で音を遮断していると脳が音に対して敏感になり、聴覚過敏の症状を悪化させるという説です。耳栓を常用しているとつけていないときに不安を感じやすくなり、ストレスから聴覚過敏の悪化を招く可能性もあります。イヤーマフの場合は耳の通気性が悪くなる点にも注意が必要です。耳の周りの皮膚や耳の中での炎症に気をつけましょう。
耳栓は使い過ぎると症状の悪化や合併症などを招くおそれがあります。音が気になる場合はすぐ耳栓に頼らず、場所を移動したりほかの音を聞いたりするなど別の対処法から試してみましょう。

聴覚過敏の主な原因

聴覚過敏はさまざまな原因で生じうる症状です。原因によって対処法にも違いがあるため、まず原因に見当をつけてから対策を考えましょう。医師に診察してもらうと正確な原因がわかりやすくなります。聴覚過敏の主な原因として挙げられる要素を以下で紹介します。

耳の不調

聴覚過敏は音に関する症状のため、耳に原因がある可能性を検討できます。人間の耳は大きな音をそのまま脳に伝えず、少し音量を小さくしてから伝える機能が備わっています。何らかの原因で音量調整機能が働かなくなると、大きな音がそのまま脳に伝わり不快感の発生につながります。
聴覚過敏につながる耳の病気として「メニエール病」や「突発性難聴」などが挙げられます。多くの音が聞こえづらくなり、脳が聴覚をカバーしようと特定の音を敏感に感知することが原因です。メニエール病の場合、突発的なめまいや吐き気などが生じる場合もあります。
耳以外の病気として「顔面神経麻痺」の可能性も挙げられます。顔面神経麻痺にかかると音量調整機能を担う「アブミ骨」がうまく動かなくなり、音が必要以上に大きく聞こえます。顔を動かしづらくなったり味がしづらくなったりする場合もある病気です。

脳の不調

脳の機能が不調を起こして聴覚過敏の発生につながる場合もあります。人間の脳には聞こえてきた音を必要なものと不要なものに振り分ける機能があります。何らかの理由でこの機能がうまく働かなくなり、必要以上に音を取り込もうとして不快感を生じる原理です。
聴覚過敏につながる主な脳の不調に「てんかん」や「片頭痛」が挙げられます。脳の神経細胞が過敏になり、不要な音も取り込んで不快感の発生につながります。
発達障害による聴覚過敏も起こりえます。主な障害は「自閉症スペクトラム障害」や「注意欠如・多動症」です。発達障害を抱えていると音のような外的刺激に対して敏感になりやすくなるためとされますが、具体的な原因は判明していません。

発達障害のような各種障害に関してはこちらの記事も参考にしてください。

心の不調

心理的な不調により聴覚過敏の症状があらわれるケースもあります。主な原因として「ストレス」と「うつ」が挙げられます。
ストレスの増加やうつ状態は自律神経の乱れにつながり、交感神経が活発に働き過ぎる場合があります。交感神経の活性化が心拍数の増加や血管収縮などを招き、耳の不調をも招く流れです。
ストレスやうつが原因で聴覚過敏を生じる場合、基本的には別の症状も同時に生じます。各症状から原因を考えたり、原因にあわせた改善策をとったりと工夫が可能でしょう。多くの直接的な原因は自律神経失調症のため、自律神経の調子を整える対策の実施も効果的です。

ストレスの影響や発散方法についてはこちらの記事も参考にしてください。

聴覚過敏への対策

聴覚過敏は日常生活に少なくない悪影響を及ぼす症状のため、さまざまな対策によって症状の抑制が必要です。生活環境の改善や周囲からのサポートなど、多方面からの対策を講じましょう。医師による診察は早めの検討が大切です。聴覚過敏への対策について以下で詳しく解説します。

生活環境を見直す

普段の生活環境を見直すとストレスの軽減につながり、聴覚過敏を防げる可能性があります。睡眠を十分にとったり適度に運動したりと生活リズムを整えて、ストレスを減らせるように意識的にリラックスできる時間も設けましょう。食事の栄養バランスにも注意が必要です。日用品の買い物にストレスが溜まる場合はインターネット上の通信販売も活用しましょう。
仕事中にストレスが溜まりやすい場合、可能な範囲で職場環境を変えてみましょう。上司やカウンセラーなどに相談して、業務内容を変えてもらったり休憩場所を設けたりする手段があります。仕事場所も極力静かな場所にできれば、ストレスの発生を抑えられるかもしれません。

医師の診察を受ける

聴覚過敏のような不調が生じた場合、早めに医師の診察を受けましょう。特に難聴・めまい・痛みなど聴覚過敏以外の症状も出ている場合、身体に何らかの病気が隠れているかもしれません。聴覚過敏以外に目立った症状がなくとも、生活に支障をきたす程度ならば早めの診察が必要です。
聴覚に関する症状のため、最初に受ける病院は耳鼻科がおすすめです。必要に応じて精神科やペインクリニックなどと協力して治療を進めます。治療期間は原因によって異なります。場合によっては長期間の治療が求められる可能性もあるため、治療期間を確保する意味でも早めの診察が重要です。
聴覚過敏は明確な定義がなく、医師によって診断結果が異なる可能性もあります。場合によってはセカンドオピニオンも検討して、適切な治療を受けられるよう努めましょう。より適切な治療法を教わったり、有効な医薬品を処方してもらえたりする可能性が高まります。

周囲の人に理解を求める

聴覚過敏の悪化を防ぐためには、自分だけでなく周囲の協力も重要です。家族や同僚など周囲の人に聴覚過敏の症状や対処法などを伝えて、悪影響を受けづらい環境を整えてもらいましょう。聴覚過敏は外見でわかりづらい症状のため、自分から伝えない限り聴覚過敏であると理解してもらえません。理解に乏しい環境の場合、「我慢しろ」「いずれ慣れる」などと言われるおそれもあります。聴覚過敏の症状や原因、慣れや我慢で解決できるものではないことなどをわかりやすく伝えられるよう努めましょう。
身近に聴覚過敏の人がいる場合、聴覚の面から積極的にサポートするように心がけましょう。騒音が生じづらい環境づくりやリラックスしやすい配慮などの提供が大切です。

聴覚過敏保護用シンボルマークを身につける

周囲の環境によって症状の具合が左右される聴覚過敏への対策として、目立つ場所に「聴覚過敏保護用シンボルマーク」を掲示しておく手段があります。無料で印刷・利用できるシンボルマークで、自分が聴覚過敏であることを周囲の人へと視覚的に伝えられるものです。街なかや電車内など面識のない人と多く対面する環境でも、スムーズに自分の症状を伝えられます。配慮を得られる可能性も向上させられるでしょう。
聴覚過敏保護用シンボルマークは法的に定められたものではなく、掲示する義務も設けられていません。必要に応じて任意に用いるもののため、「シンボルマークの助けを借りたい」と感じた場合に掲示しましょう。掲示場所はカバンのような周囲から目立つ場所がおすすめです。

参照:「聴覚過敏保護用シンボルマーク」 無償公開データ | 株式会社 石井マーク

まとめ

聴覚過敏の症状や原因、対策などを紹介しました。さまざまな音を不快に感じやすくなる聴覚過敏は、日常生活に大きな影響を及ぼします。反応する音の種類・反応の程度・聴覚過敏の原因などは種類が多いため、人それぞれの的確な診察・治療・対策が求められます。
音は日常生活で非常に多く聞こえてくるものであり、音から不快感が生じる聴覚過敏は強いストレスの原因にもなります。なるべく積極的にストレスを発散できるよう工夫して、周囲の人もストレスを抑えられるよう支援するようにしましょう。

聴覚過敏のような精神面の病気についてはこちらの記事一覧も参考にしてください。