ITとはどのようなもの?身近で奥深いIT技術を業界とあわせて紹介!
現代は誰もがパソコンやスマートフォンを日常的に扱うようになり、ほかにも多くのコンピューター機器に囲まれて生活するようになりました。「ソーシャルメディアを見ながら出勤してパソコンで仕事をこなし、ソーシャルゲームをしつつ帰宅して寝る前に動画を観る」という生活も珍しくありません。
日常生活の大部分を占めているコンピューター機器はIT技術によって誕生・発展してきました。身近な存在であるIT技術は非常に奥が深く、コンピューターとかかわりが薄そうな領域にも関与しています。 この記事では、奥深く身近なITについての概要や将来性などを紹介します。
ITとは
ITという言葉は「Information Technology(情報技術)」の略称です。コンピューターの情報システムやインターネットの通信技術を組み合わせて活用される技術の総称を意味しています。
ITと似た言葉に「ICT」があります。ICTは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、ITと比べて通信やコミュニケーションの要素を重視して用いられやすい言葉です。
近年では国内外を問わず「IT」より「ICT」のほうが多く用いられるようになっています。ビジネスから日常生活まで、幅広くICTを活用した製品やサービスなどが活躍するようになりました。チャットアプリで連絡をとったりソーシャルメディアで情報発信したりと、IT・ICTは現代社会に欠かせない存在となっています。
ITの将来性
ITは時代とともに重要性を増しており、今後もさらに存在感を強めていくと考えられます。特に大きな理由として、インターネット利用の増加が挙げられます。
総務省が2021年に行った調査では、2020年に平日のインターネット利用時間がテレビ視聴時間よりも初めて長くなりました。年代別にみると若年層ほどインターネットの割合が高く、10代の場合はテレビよりインターネットを3倍長く利用しています。一方、休日はテレビ視聴時間のほうが長くとられています。しかし、20代以下はインターネット利用時間のほうが長く、30代でも7ポイントの僅差まで迫るようになりました。多くの人がテレビよりインターネットで情報を得るようになっており、インターネットを含むITの重要性増加に貢献しています。
IoTの発展もITの重要性にかかわってきます。IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略称で、さまざまなモノをインターネットと接続する仕組みです。パソコンやスマートフォンだけでなく、家電・自動車・工作機械などあらゆるモノがIoT化の対象になりえます。モノを遠隔操作したり最適な状態を維持させたりと、従来と比べて遥かに幅広く活用できます。 インターネットの発展という強力な追い風により、IT全体の重要性も今後さらに増していくでしょう。
IT業界とは
IT業界とは、各種のIT技術を活用してさまざまなサービスやコンテンツを提供する業界を指します。IT業界を構成する企業を「IT企業」と呼び、IT企業の集合体がIT業界です。
IT技術には非常に幅広い技術が含まれており、IT技術を扱うIT業界のビジネスも多種多様です。扱う分野によって大きく4つの業界に分けられるため、対応する業界を調べれば詳細な情報を得やすくなります。IT業界を構成する4つの業界について以下で解説します。
インターネット業界
インターネット上で利用できるサービスやコンテンツを提供する業界です。IT業界においてメジャーな分野であり、有名な企業が多く存在します。ソーシャルメディア・検索ポータルサイト・ECサイトなど、現代の日常生活に欠かせないサービスがインターネット業界のさまざまな企業から提供されています。ソーシャルゲームや動画配信サービスなども含まれるため、新しい娯楽を多く提供する業界でもあります。
インターネット業界では一般消費者向けのBtoC事業だけでなく、ほかの企業を対象にしたBtoB事業も盛んです。対象顧客やサービス・コンテンツ内容の違いによって、多くの企業が幅広いビジネスを行っています。業界で活躍する人材も幅広く、Webエンジニア・Webデザイナー・Webマーケターなどが各担当分野から業務をこなします。
ハードウェア業界
各種コンピューター機器の製造・販売を行う業界です。パソコン・スマートフォン・タブレットなど、コンピューター機器の多様化に合わせて業界のビジネスも拡大しています。コンピューターを搭載する端末だけでなく、マウス・ディスプレイ・ケーブルなど周辺機器も扱います。近年ではIoTの発展にともない、自動車や医療機器など非常に幅広い製品がハードウェア業界のビジネスに含まれるようになりました。
ハードウェア業界においては「ハードウェアエンジニア」と呼ばれる人が中心に活躍しています。製品に搭載する電子機器をつくる仕事で、部品の製作や回路の設計などを行います。IT業界内の他業種と比べて、少々異なるスキルが必要な仕事です。
ソフトウェア業界
コンピューターの内部で動作するソフトウェアを開発する業界です。ソフトウェアはプログラミング言語で作られたプログラムによって構成されており、ソフトウェア業界での主な業務もプログラムの作成が挙げられます。コンピューターのOSや、表計算ソフト・文字入力ソフトのようなパッケージソフトウェアなどを開発・販売します。 BtoCだけでなくBtoBも盛んな業界で、企業が使用する業務用ソフトウェアの開発も広く行われています。業務用ソフトウェアを開発する企業は「システムインテグレーター」、略して「SIer(エスアイアー)」と呼ばれます。メーカーの生産状況管理ソフトウェアや金融機関の入出金管理ソフトウェアなど、顧客の需要に合わせたソフトウェアを開発する業種です。
通信業界
モバイル回線・Wi-Fi通信・インターネット接続サービスなど、各種通信サービスを扱う業界です。電波や回線を提供する「電気通信業」や電波を活用して情報提供する「放送業」など、多くの分野に分かれています。インターネット上で情報・サービスを提供する「インターネット付随サービス業」も存在します。通信機器が固定されているか否かでも分けられます。自宅やオフィスなどの同一地点で行う通信は「固定電気通信業」、スマートフォンや携帯電話などで場所を固定せず行う通信は「移動電気通信業」の担当です。
通信業界では主に「ネットワークエンジニア」と呼ばれる人が活躍しています。通信機器の開発・運用・管理という、ネットワークシステムを構築する流れの全般が担当範囲です。
ITの活用例
IT技術はIT業界を中心に用いられている技術ですが、近年では他業界でも多くのIT技術が活用されるようになっています。交通業界における自動車の自動運転システムや鉄道の交通ICカードなどのように、IT技術を用いた新たな進歩が多くの業界でみられるようになりました。IT業界以外でIT技術が活用されている例を以下で4つ紹介します。
教育
IT・ICT技術は教育現場での導入が進められています。文部科学省が学校教育のICT化を推進しており、ICT技術を用いた新しい形の教育が行われるようになりつつあります。主な活用例として以下のものが挙げられます。
- 紙の教科書ではなくパソコンやタブレットで閲覧できる電子データを使用する
- オンライン上で授業を配信して、教室にいなくとも授業を受けられるようにする
- 授業の一環としてプレゼンテーション資料やPDFを作成・共有して発表する
- 試験の採点や出欠などをソフトウェアで効率的に実施・管理する
生徒にIT技術の活用方法を習得させるためには、教員もIT技術について理解している必要があります。生徒だけでなく教員の勤務環境にも積極的にIT技術を取り入れれば、最新技術の扱いに慣れている人材の育成をより効率的に進められます。
医療
医療現場でもIT・ICT技術が活用されるようになっています。厚生労働省ではICT技術による医療機関同士のネットワーク構築を進めています。地域の医療機関が情報を連携させて、医療サービスの向上を図るものです。医療現場でのIT・ICT技術活用例として、以下のものが挙げられます。
- 電子化したカルテをネットワークで共有して、部署・病棟間の情報交換を容易にする
- ビデオチャットを使用して遠隔地からオンラインで診療する
- AIやビッグデータの活用により、未発見の病気や治療法を発見しやすくする
- 災害などで病院が機能不全に陥ったときのバックアップを確保する
その他、医療分野では「IoMT」と呼ばれる技術も注目されています。医療機器とITシステムを連携させて、医療データの収集・分析をリアルタイムで行います。診察の効率や正確性を向上させられる技術です。
建築
建築分野もIT技術の活用が進められている分野です。少子高齢化による生産年齢人口の減少などを背景に、国土交通省が建設業のIT化を進めています。
建築分野で重要なIT技術として「BIM/CIM」が挙げられます。BIM/CIMはIT技術を活用する新しい形の建築方法で、建築の各工程にBIM/CIMモデルを使用するものです。BIM/CIMモデルとは、建築物の3Dモデルに各部品の素材・数量・寸法などを組み合わせたデータを指します。事前調査から維持管理の全段階に至るまで、情報を充実させつつBIM/CIMモデルを活用していきます。事業の関係者全体での情報共有も行い、各業務の高度化・効率化を図ります。ドローンでの測量やロボットによる維持管理などとあわせて、従来と比べて早く・安全に・精密な建築が可能になります。
農業
農業分野でのIT技術活用も進められています。農林水産省に推進されている「スマート農業」が大きな活用法で、田植え機やコンバインなどを用いる現状の機械化農業をさらに進めたものです。スマート農業によるメリットとして、主に以下の3点が挙げられます。
- 作業を自動化して必要な人員を少なく抑えられる
- 作業記録をデジタル化・自動化して、誰でも熟練者と同様の作業を行える
- ドローンや人工衛星のデータを活用して、生育や病虫害の予測・対策ができる
農業従事者は他業種以上に少子高齢化の進行が激しいため、少数の高齢者が大部分の農業生産を担う状況に陥っています。スマート農業で人数・体力が少なくとも問題なく生産できるようになり、新規に就農するハードルも下げられるでしょう。
IT業界で役立つスキル
幅広い分野のビジネスを行うIT業界で働く場合、会社や職種によって多彩なスキルが求められます。しかし、IT業界全体で有用になりうるスキルも複数あるため、それらのスキルを習得できればIT業界で活躍しやすくなるでしょう。この章ではIT業界で役立つスキルを4つ紹介します。スキルの習得方法とあわせて覚えておくと便利です。
プログラミングスキル
IT業界で働く場合、プログラミングスキルは高確率で求められます。特にエンジニアとして勤務するならばほぼ確実に必要でしょう。IT業界で扱うサービスやコンテンツはプログラムによって作られているものが多く、プログラムを作成するためにプログラミングが必要です。近年はスクールやオンラインなど多くの場所でプログラミングの学習を行えるため、スキルを習得する難易度は下がってきています。
プログラミングにはプログラミング言語を使用しますが、作成するプログラムやコンテンツなどの内容によって適したプログラミング言語が異なります。Web分野ではPHPやJavaScript、スマートフォンアプリ開発にはSwiftやKotlinなど、業界・案件にあわせた言語の選択が必要です。
プログラミング言語についてはこちらの記事も参考にしてください。
情報収集スキル
IT業界で活躍するためには情報収集のスキルも必要です。不明点や問題解決策を調べたり業界の最新トレンドについていったりと、業界や業務内容に関する多くの情報を効率的に集めなくてはなりません。IT技術は成長が早いため、新しいコンテンツや仕様が変わったソフトウェアなども日々生まれ続けています。
情報収集の方法は複数あるため、各方法の使い分けも重要です。インターネットで検索したり書籍を探したりと、環境や求める情報に応じて探し方を考えましょう。周囲の人に聞くことも大切です。
情報収集によって知識を蓄積すると、IT業界内での勤務だけでなく他業界への転職にも活用できます。業務用ソフトウェアのような基幹システムの知識があれば、多くの業界で社内システムの管理・改善を行えるでしょう。Webサイト開発の知識・経験を生かして、他業界で自社サイトの開発も可能です。
コミュニケーションスキル
IT業界ではコミュニケーションスキルも求められます。パソコンに向かって黙々と作業しているイメージが強いITエンジニアですが、実際にはチームのメンバーや顧客など多くの人と頻繁に会話します。顧客の要望を正確に引き出したりプロジェクトの進捗状況を確認したりと、多くの場面で人とのコミュニケーションが欠かせません。
コミュニケーションをとる際は話す能力と聞く能力が同時に求められます。相手の意図を正しく読み取り、自分の考えをわかりやすく伝えなくてはなりません。エンジニアを対象としたコミュニケーション講座が開かれていることもあります。コミュニケーションに苦手意識がある場合は積極的に参加を検討してみましょう。
論理的思考力
IT業界、特にITエンジニアを目指す場合は論理的な思考を行えるように努めましょう。論理的思考力とは物事の筋道を立てて考える能力を指しており、ITエンジニアが行う多くの業務で求められる能力です。顧客への提案・スケジュールの策定・プログラミング作業など、ITエンジニアは論理的思考力が役立つ業務を多数こなさなくてはなりません。
論理的思考力は複数の方法で向上させられます。問題集やアプリなどを活用するだけでなく、ニュース記事を多く読んだり考えを文章にまとめてみたりすることも効果的です。その他、トラブルや身近な物事について「なぜそうなったか」を何度も繰り返し考えることも役立ちます。根本の原因にたどり着くまで続ければ、論理的思考力を鍛えるだけでなく問題解決の助けにもなるでしょう。
まとめ
ITの概要や将来性、IT業界の内容などを紹介しました。現代社会に欠かせない存在となっているIT技術は、今後さらに多くの場面で活用されると考えられます。幅広い業界でIT技術が求められるようになっており、活躍の範囲も広がり続けるでしょう。
IT技術の発展を支えるIT業界は巨大なため、多くの人材が業界から求められています。ITに関する知識を得て、業界の一員を積極的に目指してみましょう。