QRコードとはどのようなもの?身近な技術の強みや活用場面など紹介!

公開日:2025/04/18
QRコードとはどのようなもの?身近な技術の強みや活用場面など紹介!

インターネットの発展やスマートフォンの普及などにより、多くの現代人は多くの情報をやり取りしながら生活するようになりました。情報のやり取りにはさまざまな方法を使用できますが、近年多く用いられる方法として「QRコード」が挙げられます。デンソーウェーブ社から提供されている日本生まれの技術で、現代では世界中の人がQRコードにより多くの恩恵を受けています。生活に欠かせない存在のQRコードについて、改めて詳しく調べてみましょう。この記事ではQRコードの概要や強み、主な活用場面を紹介します。

※QRコードは㈱デンソーウェーブの登録商標です。

QRコードとは

QRコードは多くの情報を記録・活用できるコードです。白黒の正方形が多数並んでいる独特のデザインで、身近な範囲ではスマホ決済や広告などに用いられています。非常に多くの情報を小さく収められる技術で、汎用性の高さや扱いやすさから世界中で活用されるようになりました。QRコードの「QR」は「Quick Response」の略です。
QRコードは1994年に愛知県のデンソー社が開発した技術で、現在も分社化したデンソーウェーブ社が特許を持っています。同社は大手自動車メーカーの部品を製造しており、工場内での効率的な部品管理を目的にQRコードを開発しました。
QRコードの仕組みや歴史、近い役割を担うバーコードとの違いを以下で詳しく解説します。

参照:QRコードとは? | QRコードドットコム
   QRコード®とは | デンソーウェーブ

仕組み

QRコードの多くは、正方形の枠内に白黒の小さな正方形を多数並べた形で作られます。小さな正方形の一つひとつを「セル」と呼び、扱う情報によって異なる形に並べられます。セルの色と並び方が2進数による文字や言葉を表しており、小さなQRコード内でも商品情報やURLなど多くの文字データを記録してくれます。
QRコードには、高速・安定的な読み取りのためにさまざまな固定シンボルが設けられています。主なシンボルは以下のものです。

・ファインダパターン
QRコードの3隅に設けられている大きな正方形です。QRコードの位置を認識するために用いられており、読み取る際は最初にファインダパターンを探します。
ファインダパターンの色は縦・横・斜めのいずれから見ても「1:1:3:1:1」の比率で並んでいます。「これはQRコードである」と判断しやすくするために定められた比率で、従来の印刷物において最も使用頻度の低い比率が用いられました。

・アライメントパターン
QRコードの右下付近にある小さめの正方形です。コードの向きを認識させたりセルのズレや歪みを補正したりするもので、カメラやセンサーなどを斜めからかざしても読み取りやすくなります。

・タイミングパターン
ファインダパターンの角同士を結ぶ線の部分です。セルが白黒交互に配置されています。各セルの中心座標を補正する役割があり、カメラやセンサーなどがQRコードを正しい位置で捉えてくれます。

・フォーマット情報
ファインダパターンの側面に隣り合っているセルの列です。QRコードは「誤り訂正機能」を持っており、ある程度は汚れや欠損などを補って読み込めます。フォーマット情報で誤り訂正機能のレベルを表します。

各種シンボルのほか、「マスキング処理」という手法も活用されています。セルの色が一ヶ所で偏らないようにバランスを保つ処理で、8種類の「マスクパターン」を用いて部分的にセルの色を反転します。使用したマスクパターンもコード内に記載されており、読み取る際にマスクを外して正しく解読できるようになっています。

参照:QRコード開発ストーリー | デンソーウェーブ
   QRコードの概要 | デンソーエスアイ

歴史

世界中で幅広く活用されているQRコードは、もともと工場で多くの部品を管理するために開発されました。QRコードの開発が始まった1992年当時、さまざまな情報管理にはバーコードが用いられていました。バーコードで記録できる情報は20文字程度の英数字に限られており、多くの情報を扱うには多数のバーコードが必要です。1つのコードで多数の情報を管理できるように、デンソー社の開発者が1年半かけてQRコードを開発しました。独特のデザインは「囲碁」から着想を得たものとされます。記録できる情報の量やズレ補正による読み取りの安定性などは、碁盤に並ぶ碁石から生み出されました。
QRコードが誕生すると、特許を持つデンソー社は使用料をとらず積極的に多くの企業・団体へとQRコードを紹介しました。デンソー社と同じ自動車部品業界以外にも広がっていき、2002年にQRコードを読み取れる携帯電話が発売されて一般人にも知られるようになりました。
現在、QRコードは日本だけでなく世界中で使用されるコードになっています。QRコード自体も進歩を続けており、小型・長方形・イラスト入りなどさまざまなタイプのQRコードが生まれました。今後もデザイン・使用感・活用場面など、幅広く進歩を続けるでしょう。

参照:QRコード道のり | QRコードドットコム
   QRコード開発ストーリー | デンソーウェーブ
   QRコードが開発されて30周年 あのデザインは囲碁をヒントに生まれた! 新たな進化も継続中 | CBCweb

バーコードとの違い

QRコードのような情報自動認識技術として「バーコード」も広く用いられています。多くの線を横に並べたもので、QRコードより以前から多方面で活用されてきました。QRコードとバーコードは見た目が大きく異なりますが、ほかにも複数の違いが存在します。主な違いとして以下のものが挙げられます。

・扱える情報量
コードに記録できる情報量ではQRコードが勝っています。バーコードと異なりQRコードは縦横の2方向で情報を記録できるため、バーコードよりはるかに多くの情報を扱えます。商品データやURLなど文章の記録を求められる場面で有用です。

・読み取り速度
コードに記録された情報を読み取る速度ではバーコードが勝るとされます。単純な構造で扱っている情報量も少ないため、QRコード以上に迅速な読み込みが可能です。非常に多くのコードを素早く読み取らなくてはならない小売店のレジに適しています。

・汚れや欠損への耐性
コードが汚れたり欠損したりした場合、QRコードの方が高い確率で読み取れます。記録データを復元する機能が設けられており、コードが一部見えなくとも問題なく読み取ってくれます。コードが汚れやすい工場のような場所で役立ちます。

QRコードの強み

QRコードは既存のバーコードや二次元コードなどと比べて、多くの強みを持っています。非常に多くの情報を扱ったり汚れや向きの変化に強かったりと、幅広い場面で便利に使用できるコードです。作成も容易に行えるため、自身のコンテンツがあれば気軽に活用してみましょう。QRコードの主な強みを以下で紹介します。

多くの情報を扱える

QRコードは扱える情報量が非常に多く、従来のバーコードと比べて数十倍から数百倍にわたります。記録可能な情報の種類も多く、バーコードで扱える英数字に加えて漢字・かな・記号なども記録できます。
40種類設定されているQRコードのバージョンによって記録できる情報量が異なります。漢字を記録する場合、バージョン1では4~10文字しか記録できない一方でバージョン40であれば784~1,817文字まで記録可能です。バージョンが増えるほど多くの情報を記録できるようになりますが、必要なセル数も増えるためコード自体が大きくなります。

参照:QRコードの情報量とバージョン | QRコードドットコム

ある程度汚れても読み取れる

QRコードには「誤り訂正機能」が盛り込まれており、ある程度汚れたり破損したりしてもデータを読み込めます。もともと工場内での使用を想定して開発されたため、コードが汚れやすい環境下でも使用できるように設計されました。
誤り訂正機能には4段階のレベルが設けられています。レベルが上がるほど大きな汚れ・破損に強くなりますが、コード自体も大きくなります。使用するレベルはQRコードを使用するユーザーが選択します。一般的に用いられるレベルMの場合、約15%が汚れ・破損しても読み取り可能です。最も高いレベルHでは約30%まで対応しています。

参照:誤り訂正機能について | QRコードドットコム

向きが変わっても読み取れる

QRコードは360度どの方向からでも読み取れます。3ヶ所の隅に設けられている「ファインダパターン」や右下の「アライメントパターン」によって、カメラやセンサーにコードの向きと範囲を教えています。コード周辺の模様に関係なくコード部分を正しく認識させられるため、どの向きからでも安定して素早く読み取れます。
QRコードの向きを問わず読み取れると、特に多方向からの読み取りが求められる場面で大いに役立ちます。飲食店での代金支払いや工場で多数積まれた製品の管理など、向きを問わないおかげで利便性が格段に向上する場面も珍しくありません。

誰でも使用・作成できる

QRコードはコードの読み取りだけでなくコード自体の作成も無料で行えます。開発元のデンソーウェーブ社自身も、アララ社と共同で「クルクルマネージャー」というWebサービスを提供しています。無料でテキストやURLなどからQRコードを作成できるサービスです。この記事のトップ画像もクルクルマネージャーで作成したQRコードです。あるWebページのURLが記録されているため、スマートフォンやタブレットなどで読み込んでみてください。
QRコード自体は自由に使用できますが、「QRコード」という名前を使用する際は注意が必要です。「QRコード」の名前はデンソーウェーブ社の商標として登録されており、ページ内や紙面などのどこかに登録商標文を掲示しなくてはなりません。掲示場所には比較的自由が利くため、デザインなどを考えつつ掲示しましょう。この記事では冒頭に掲示しています。

参照:クルクルマネージャー公式サイト
   QRコードの知的財産権について | QRコードドットコム

QRコードの使用場面

さまざまな強みを持つQRコードは活躍の幅を広げていき、現在は本来想定されていた製造業界以外の場面でも数多く利用されています。多くの人が日常的に用いるキャッシュレス決済から鉄道の安全な運行まで活躍しており、快適な現代社会の維持に欠かせません。身近な存在になったQRコードの主な使用場面を以下で紹介します。QRコードの恩恵を改めて考えてみましょう。

製造・物流

QRコードは製造業や物流業界で大いに貢献しています。特に製造業はQRコード当初の活用場面にあたる業界のため、幅広い環境・工程で活用できます。物流業も多くの荷物を入荷・ピッキング・出荷する大まかな流れは共通しており、製造業と同じくQRコードの幅広い活用が可能です。
入荷した部品や荷物の数・入庫場所を管理する際に、QRコードでの迅速なデータ読み込みが役立ちます。ピッキングや出荷では都度QRコードを読み取って必要量の把握や出荷実績の管理などを瞬時に行えます。在庫の棚卸をする際にもQRコードが有用です。紙のリストと目視で照らし合わせるより手早く確実に進められるため、効率的に作業できます。

決済

近年ではQRコードを用いたキャッシュレス決済も広く利用されています。あらかじめチャージしたお金や紐づけしたクレジットカードなどを用いて、現金を使わずに商品購入や代金支払いを行えるものです。新型コロナウィルスの流行による非接触決済の需要増加・政府によるキャッシュレス決済の推進などにより、QRコード決済が全国で大きく広まりました。スマートフォンやタブレットで容易に導入できるため、店舗側のハードルが低い点も強みです。
QRコード決済は世界各国で独自のサービスが運用されており、ある国のサービスを他国で利用できないケースも少なくありません。しかし、現在は政府や決済サービス運営会社により多国間での相互利用手続きを進めています。将来的にはQRコードでの決済が世界中で容易に行えるでしょう。

QRコード決済のようなスマホ決済の種類についてはこちらの記事も参考にしてください。

紙面広告

チラシや公共施設内のポスターなど、日常生活で広く見かける紙面広告にもQRコードが多く用いられるようになりました。広告内のQRコードから商品や企業などのWebページにアクセスさせる目的です。手持ちのスマートフォンで手軽・迅速に読み込めるQRコードは広告にも適しており、QRコードの読み取り数から広告の費用対効果も算出できます。より効果的な広告運用にQRコードが役立つでしょう。
広告内にQRコードを入れる場合、コードの読み取りやすさと広告全体のデザイン性を同時に保つ必要があります。コード周辺を白背景で広めに空けたり、コードの色を読み取りやすい色に設定したりしましょう。クルクルマネージャーを提供しているアララ社の検証によると、寒色系は読み取りやすい一方で黄色系が読み取りづらくなるようです。

参照:QRコードの色変更!読み取れない色を検証【カラーQRコード】 | QR Codeお役立ち情報

チケット

公共交通機関の利用やイベント会場の入場などに用いるチケットでもQRコードが活用されています。通常の紙チケットと比べて入場手続きの所要時間が短く、特に多くの利用者がいる際に効率的な入場が可能です。QRコード自体を紙面でなくスマートフォンの画面に表示する場合もあります。紙を用意するコストの削減やチケット転売リスクの軽減などを期待できます。
QRコードを使用するチケットの購入・使用方法は交通機関やイベントによって異なる場合があります。チケットを購入する際は公式サイトや電話などを使い、詳しい購入・使用方法を確認しておきましょう。

鉄道運行

QRコードが鉄道駅のホームドア運用に役立っているケースもあります。
東京の都営地下鉄浅草線では、2019年から各駅でQRコードを活用するホームドアの設置が進められました。浅草線は周辺から多くの私鉄が乗り入れる路線のため、路線内を走る車両の編成や扉の数が安定しません。どの車両が来ても問題なくホームドアを動作させられるように、東京都交通局とデンソーウェーブ社が共同で鉄道専用のQRコードを開発しました。全体の50%が欠損しても読み取れる構造や複数のセンサーによる同時読み取りなど、より高い信頼性を保つために工夫されています。
QRコードを用いる方法により、導入コストも通常の740分の1まで抑えられました。安価で効果的なQRコードによる手法は、現在都営地下鉄以外の鉄道路線でも活用されています。

参照:新型QRコード®を利用したホームドア開閉システム | デンソーウェーブ
   都営地下鉄全駅にホームドア 立て役者となったのは… | NHK首都圏ナビ

まとめ

QRコードの概要や強み、主な活用場面を紹介しました。30年ほど前に工場内での使用を目的として生まれたQRコードは、現代の世界に不可欠な存在となっています。情報量や耐久性など多くの強みを生かして、活躍範囲を広げ続けています。
QRコードは非常に便利ながら誰でも作成できるため、さまざまな使い方を試しやすい利点もあります。URLや文字列などからQRコードを作って、積極的に活用してみましょう。新しい活用方法が見つかり、より一層活躍してくれるかもしれません。