特例子会社とは?障害者が働きやすい環境を得られる企業について紹介!

公開日:2024/09/20
特例子会社とは?障害者が働きやすい環境を得られる企業について紹介!

障害者が就労する場合、一般企業への障害者雇用や就労継続支援事業所の利用などさまざまな選択肢があります。また、障害者が就労する選択肢として「特例子会社」も挙げられます。障害者の就労に特化した企業で、障害者・企業ともにメリットを得られる制度です。特例子会社について知識を持っておき、自分にとって最適な進路選択の一助としましょう。この記事では特例子会社の概要や就職するメリット・デメリット、就職方法などを紹介します。

特例子会社とは

特例子会社は障害者雇用の促進・安定化を図り設立された企業です。障害者雇用に関する条件や設立の要件を満たして厚生労働省から認可されています。特例子会社は親会社の一事業所として扱われますが、従業員は親会社に雇用されているとみなされます。グループ全体での障害者雇用率を引き上げられる制度で、障害者でも安定的に働きやすい職場を得られる点が大きなメリットです。
厚生労働省によると、2023年時点で特例子会社は全国に598社設立されています。都道府県別では東京都が189社と最も多く、以下大阪府55社・神奈川県50社・愛知県31社と続きます。岩手県のみ特例子会社が設立されていません。

参照:特例子会社一覧

特例子会社制度成立の経緯

特例子会社制度は、多くの障害者がより働きやすい環境を整えるべく設けられた制度です。
日本において企業への障害者雇用が義務化された1976年以前、障害者の雇用はほぼ進んでいませんでした。社内設備や他従業員からの理解などに課題があったため、障害者雇用を専門に扱う会社を設立・整備できるように特例子会社制度が設けられました。
健常者を対象に雇用する職場と分ければ、障害に沿った職場環境の設計や労働条件の整備などを行いやすくなります。また、特例子会社での障害者雇用率は親会社にも加算されます。特例子会社制度は、障害者の法定雇用率を上げたい企業側と就労環境を整えてほしい障害者が同時に得する制度です。

障害者雇用枠との違い

障害者が就労する際の選択肢として、一般的な企業に障害者雇用枠で入社する方法も挙げられます。特例子会社・障害者雇用枠ともに障害者が就労するうえで有用な制度ですが、それぞれ違いも存在するため把握しておきましょう。特例子会社と障害者雇用枠の主な違いは以下のものです。

・勤務する障害者の人数
一般的に、特例子会社は一般的な企業より多くの障害者が勤務しています。一般的な企業の場合、障害者の従業員は多くありません。

・社内環境
特例子会社は障害者の就労に特化しているため、社内の環境も障害者が働きやすいように整備されています。相談員のようなサポート体制も充実しているでしょう。

特例子会社の主な業務内容

特例子会社の多くは親会社やグループ内各社をサポートする業務を行っています。主に事務補助業務や清掃・管理業務が多く、その他として製造業務やデータ入力業務などが含まれます。比較的単純な作業を多く担当する点が特徴です。特例子会社の業務内容について、野村総合研究所が公開している2018年の調査結果は以下のようになっています。

業務内容の上位回答

  • 事務補助:79.1%
  • 清掃、管理:50.0%
  • 製造(機械、食品等):23.5%
  • 物流:20.4%
  • サービス:16.8%
  • その他:30.1%

「その他」の例

  • PCのキッティング、解体等 
  • ガス検知器検査、研究試験代行
  • キズ検品
  • ギフトラッピング
  • サービス技術(Tシャツ、プリント加工、デザイン制作)

参照:障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査 調査結果「問3:特例子会社の業務内容」

特例子会社で働くメリット

特例子会社は障害者の就労に特化している職場のため、障害者にとって一般的な企業とは異なる独自のメリットが存在します。特例子会社ならではのメリットを把握して、就職先を考える際の検討材料にしましょう。特例子会社で働く主なメリットを以下で紹介します。

障害者に適した勤務環境が整っている

障害者の就労を前提にしている特例子会社では、障害者が働きやすい勤務環境が整えられています。「バリアフリー対応のオフィス」「医師・相談員などによる綿密なサポート」など、障害者が働くために重要な各サービスを受けられる職場です。業務のマニュアルを用意して、障害者が業務に取り組みやすいよう配慮している場合もあります。既存の環境整備だけでなく、さらなる環境の改善にも積極的に動いてくれるでしょう。
勤務中以外に通勤への配慮もなされやすいメリットがあります。時差出勤やフレックスタイム制を導入していればラッシュの時間帯を避けつつ通勤可能です。その他、勤務時間の調整や通院時間の確保なども考慮してくれる傾向があります。

人間関係を良好に保てる

特例子会社の従業員は大半が障害者のため、障害者同士で共感できて積極的に助け合えます。近い特性を持つ従業員ならばさらに親密な関係を築けるでしょう。従業員同士の人間関係を良好に保つと業務の円滑化やストレス軽減などにつながるため、仕事を長く快適に続けられます。
障害を持つ従業員同士で悩みを共有したり、ハンディキャップを補い合って業務効率を上げたりできる利点もあります。「視覚障害者が聴覚障害者のために会議の内容を文字起こしする」のように、できること・できないことを補いつつ活気ある職場の形成が可能です。

特例子会社で働くデメリット

特例子会社は障害者のために多くの配慮を行ってくれる職場ですが、特例子会社の特徴に由来するデメリットも存在します。就職後に「失敗した」と感じずに済むよう、あらかじめデメリットも把握しておきましょう。特例子会社で働く主なデメリットを以下で紹介します。

収入が少なくなりやすい

特例子会社の給与水準は一般的な企業より安い傾向にあり、キャリアアップもしづらいケースが多く見られます。特例子会社として障害者に多彩な配慮を行うとコストがかさむため、給与額に多くの予算を回せなくなります。キャリアアップの面を見ると、特に知的・精神障害者が管理職を務めづらい傾向もあるようです。

参照:障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査 調査結果「問22:障害者の従事している業務内容・役割」

ただ、近年では状況も変わりつつあります。特例子会社において業務経験や実務スキルを重視される求人が増加しており、各社の業種やPCなど専門的なスキルを活用できます。専門スキルを求められる業務は給与水準が高くなりやすいため、特例子会社でも収入の少なさを補えるでしょう。

求人数が少ない

特例子会社そのものの少なさに由来して、特例子会社の求人も少ない問題があります。特例子会社の所在地が関東に集中しているため、特に関東以外の地方では特例子会社への就職が難しくなります。特例子会社に限定して求人を探す場合、求人の選択肢が大きく限られる点は考慮しておきましょう。
就職後の業務内容も限定的な内容が多くなるかもしれません。特例子会社の多くは親会社やグループ内で生じた定型業務を請け負っているため、業務内容のバリエーションが少なくなります。幅広い業務をこなしたい場合は物足りなさを感じる可能性もあります。

特例子会社での勤務に適している人

特例子会社は比較的特殊な企業・職場のため、就労に適している人の特徴も一般的な企業とは異なる面があります。特例子会社での勤務に適している人の主な特徴として以下のものが挙げられます。

・一般企業での就職に不安を感じている
障害への配慮や業務内容など、さまざまな理由で一般的な企業での就職に不安を感じるならば特例子会社が適しています。働きやすい環境で安心して働けるでしょう。

・障害者同士で働きたいと考える
「健常者が多い一般的な企業では働きづらい」と考える場合は特例子会社がおすすめです。従業員の多くが自分と同じ障害者のため、ほかの従業員と互いに共感できます。

・就労移行支援を利用している
就労移行支援事業所で就職を目指している人も特例子会社を選択肢に入れてみましょう。一般的な企業と比べて体調やスキルによる影響を受けづらく、職歴を積みやすくなります。

特例子会社への就職方法

特例子会社は数が少なく、あまり多くの求人が出されていません。そのため特例子会社の求人を探すためには工夫が必要です。特例子会社の求人探しに有用なサービスとして以下のものが挙げられます。有効に活用しましょう。

・ハローワーク
厚生労働省が全国に設置している公共職業安定所です。ハローワークには障害者雇用を専門に扱う窓口があり、特例子会社の求人は障害者雇用の窓口から探せます。求人紹介だけでなく、障害者の就職活動や働き方のアドバイスも受けられます。

・障害者向けの転職エージェント
障害者雇用を中心・あるいは専門に扱う民間の転職サービスです。ハローワークで扱っていない求人を探せる場合も少なくないため、ハローワークと組み合わせて幅広い求人を見つけられます。サービスによっては、企業ごとに雇用実績のある障害種別も調べられます。

・障害者就業・生活支援センター
障害者の生活を多方面から支援している機関です。就職だけでなく日常生活のサポートも受けられるため、就労関連以外に悩みを抱えている場合は積極的に利用を考えましょう。全国各地に多数設けられており、利用しやすい点も強みです。

・就労移行支援事業所
障害者の就職活動を支援する民間のサービスです。ビジネスマナーや業務スキルを習得したり面接対策のような就職活動サポートを受けたりできます。就職後の職場定着支援も行っており、働き始めて以降も安定して働くための支援を受けられます。

障害者が就職を考える際のポイントについてはこちらの記事も参考にしてください。

まとめ

特例子会社の概要や就職するメリット・デメリット、就職方法などを紹介しました。障害者の就労に特化している特例子会社は障害者が働くうえでさまざまな配慮がなされており、ハンディキャップをあまり感じずに働けます。特例子会社ならではの特徴を把握して、就労先の進路に加えましょう。
現代はさまざまな形で障害者でも社会生活を送りやすい環境が整えられつつあり、将来的にはさらに環境整備が進むとみられます。障害者でも実力に応じて広く社会から求められるようになります。まずは特例子会社のような働きやすい職場で経験とスキルを積み、社会の要求に応えられる実力を身につけていきましょう。