障害者の就職について解説!就職活動から就職後までのポイントも!

公開日:2024/07/23
障害者の就職について解説!就職活動から就職後までのポイントも!

障害者は生活に多くの制約がかかる一方で、官民問わず幅広い支援を受けられる点もあります。就職についても支援制度が設けられており、ハンディキャップを補いつつ就職・勤務を図れるでしょう。
障害者の就職において、受けられる支援だけでなく注意すべきポイントも複数存在します。各種のポイントを把握して、自分が納得できる職場への就職を目指しましょう。この記事では障害者の就職方法やポイント、就職後に意識すべき点などを紹介します。

障害者の就職枠

障害者が就職する場合、健常者と同様の求人に応募する「一般枠」に加えて「障害者枠」も選択できます。それぞれに異なるメリットとデメリットがあるため、自分に適していると思われる方法で就職しましょう。障害者の就職枠について以下で詳しく解説します。

障害者枠

障害者を対象とする雇用のことで、「オープン就労」とも呼ばれます。障害者雇用促進法によって雇用者に対して一定割合の障害者を雇用する義務が設けられており、2024年4月以降は民間企業で2.5%に設定されています。2026年7月以降は民間企業で2.7%に引き上げられる予定です。

参照:障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第四十三条
   障害者雇用率制度について

障害者に向けた雇用制度のため、利用には障害者手帳の所持が必要です。障害者枠で就職した場合、会社側も自分が障害者であるとあらかじめ理解してくれているメリットがあります。業務内容・出勤形態・通院タイミングなどに対する配慮を受けられて、障害を抱えつつ無理なく勤務できます。一方、一般的に求人の種類が少なく給与額も安い点がデメリットです。

障害者枠での就職に関して「特例子会社」という選択肢も存在します。障害者雇用を前提に設けられた子会社で、障害者でも働きやすい環境が整備されています。詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

一般枠

健常者を対象とする雇用の事で、障害者が利用する場合は「クローズ就労」とも呼ばれます。通常の求人のため種類が非常に多く、障害者雇用より給与水準も高く設定されています。興味のある仕事をして多くの収入を得られる可能性が高まるでしょう。
一方、一般枠で就労した場合は会社側から障害に対する理解を得られません。健常者と同様の仕事量や成果を求められるため、就職後の勤務で大きな負担がかかるおそれもあります。ほかの社員と十分なコミュニケーションをとれず、社内で孤立する場合があるかもしれません。

障害者が就職するためのハードル

障害者は法律によって就職活動を支援されていますが、実際には思いどおりの就職ができないケースも少なくありません。主に求人数や向き・不向きの問題が大きく、障害者が就職するうえでのハードルとなっています。障害者の就職におけるハードルについて、以下で詳しく解説します。

求人の種類や数が少ない

障害者枠で出される求人の数は基本的に多くありません。障害者は健常者よりも人数が少ないため、障害者のみを対象とする障害者枠の求人数も少なくなります。求人の数だけでなく職種の幅も狭く、選択肢のさらなる減少につながっています。障害者枠求人の職種は事務職や軽作業が中心です。希望に沿っていれば大きな問題はありませんが、希望しない職種の場合は求人探しに苦労するでしょう。
正社員求人の少なさも障害者枠における問題点です。契約社員やパートタイム労働者などの求人が中心のため、正社員として働きたい場合は求人がさらに限定されます。契約社員やパートタイム労働者は正社員より給与額が安く、金銭的に苦しくなりやすい点にも要注意です。

特性や希望に適している求人が見つからない

求人の絶対数が少ない障害者枠の場合、自身の障害特性や希望する業種に合う求人を探しづらくなります。障害者は健常者以上に向き・不向きの差が大きいケースも珍しくありません。求人数が少ないと障害特性上務められない求人の割合が増加するため、自分に適した求人を見つけづらくなります。
求人の数に関係なく、自分の「やりたいこと」と「できること」が一致しない可能性もあります。興味がある分野の仕事を障害の影響であきらめざるを得ない、という状況が増えると、就職への意欲も低下するでしょう。「できること」がわからずに悩むケースも考えられます。

障害者が就職するまでの流れ

一般的に、障害者が就職する際は複数のステップを踏んで企業からの採用まで至ります。健常者の就職活動も複数ステップに分かれますが、障害者の場合は少し内容が増えるため注意しましょう。自分の人となりや障害の状態などを考慮して、自分にとって働きやすい企業を選ぶ必要があります。障害者が就職するまでの流れを以下で解説します。

主治医に相談する

障害者が就職活動を始める場合、最初に主治医と相談しておきましょう。現在の自分が就職して問題ないか医師の判断を仰ぎます。「症状は落ち着いているから問題ない」と自己判断で動くと、思いのほか回復しておらず体に悪影響を生じさせるかもしれません。主治医は自分の障害や症状などについて詳細な知識を持っています。就職の可否や症状悪化の対策など、各種のアドバイスをもらってから就職のために行動しましょう。
精神障害者が就職のためにハローワークを利用する場合、登録時に主治医からの意見書を求められる場合が多くあります。求職者が精神障害を抱えていることと、就職に問題がないことを判断する資料として用いられます。主治医に意見書を書いてもらう必要があるため、手続きの面でも主治医への相談は行うべきでしょう。

自己分析する

健常者と同様に、障害者の就職活動も自己分析が重要です。自分の性格や強み・弱み、持っているスキルなどを分析しましょう。自己分析すると自分のアピールポイント・目標・能力などをはっきりと把握しやすくなり、応募先の企業に自分を理解してもらえる可能性が上がります。過去の自分についてのさまざまな要素を書き出して、その後現在の自分が取り組んでいることを考えましょう。自分が取り組んできた物事から自分の価値観がわかります。
障害者が自己分析を行う場合、健常者と同じ内容に加えて自分の障害も分析が不可欠な要素に含まれます。「どのような特性を持っているか」「社内でどのような配慮が必要か」などを自分の言葉で伝えられるように、事前の整理が必要です。障害について分析する場合、人によっては思い出したくない要素があるかもしれません。思い出したくない部分は飛ばしても問題ないので、時間をかけて可能な範囲でまとめ上げましょう。

興味がある企業を研究する

就職活動では自分自身だけでなく入社を希望する企業や業界の研究も欠かせません。応募予定の企業について、基本情報・今後の方向性・障害者雇用に関する情報などを調べましょう。企業の公式Webサイトやパンフレット、企業説明会などで情報を得られます。応募したい企業が決まっていない場合は業種や業界から研究して絞り込みましょう。
企業研究は「入社後に自分がやりたいことを実現できるか」の判断材料として非常に有用です。「有名だから」「評判が良いから」というだけで決めず、自分に適しているかを重視して各情報から総合的に判断しましょう。

履歴書と職務経歴書を提出する

応募する企業が決まったら履歴書・職務経歴書を作成して提出しましょう。自己分析や企業研究で得られた情報を生かして、経歴・資格・自己PRなどを書き込みます。障害者雇用の場合は障害の状況や配慮してほしい事柄も必要です。複数の企業に応募する際は、書類を使い回さず企業ごとに用意しましょう。
障害者雇用の履歴書には、タイムスケジュールや血糖値など健康状態を記載しておくと役立つ可能性もあります。タイムスケジュールは精神面の安定性を、血糖値は基礎疾患の状態を把握する助けになります。書類選考の際には求職者の健康状態から合否を決める場合もあり、健康状態の判断材料が履歴書に記載されているとスムーズに選考できます。健康状態を判断できなければその場で不採用にされる可能性も上がるため、可能な限り健康状態を記載しましょう。

面接を受ける

応募した企業の書類選考に通過したら、企業の担当者と面接を行います。面接官からの質問に効果的な回答を返して、自分のアピールにつなげましょう。事前に話す内容を整理して何回も練習すると面接本番で緊張しづらくなります。回答の内容だけでなく、話し方や服装、姿勢などもチェックされるため要注意です。練習中の姿を動画に撮って見返すと、自分の癖を客観的に捉えられて改善しやすくなります。
障害者雇用の面接で聞かれる質問には、一般枠の面接と同じ部分も多くみられます。自己紹介・志望動機・転職理由などを答えられるように準備しておきましょう。障害者雇用の大きな特徴として障害の説明と配慮事項についての質問が挙げられます。障害の内容やできること・できないこと、必要な配慮事項などを正直に伝えましょう。

障害者が就職するためのポイント

障害者の就職は健常者と異なる点があるため、就職活動におけるポイントも異なる点がみられます。自分により適した企業に就職できるように、就職活動のポイントを把握して積極的に活用しましょう。障害者が就職するための主なポイントを紹介します。

自分の障害について詳しく把握する

障害者が就職を考える際は、あらかじめ自分の障害をなるべく詳細に把握しておく必要があります。障害によってできること・できないことが変わり、企業から求めるべき配慮の種類にも差が生じます。自分の障害について企業になるべく詳しく理解してもらうために、まず自分が障害への理解を深めなくてはなりません。障害について企業に適切な説明ができないと、企業側も対応方法がわからず採用を躊躇する可能性が上がります。入社後に体調を崩さず長期間働くためにも、障害の把握が役立つでしょう。
障害について企業側に説明するときは、専門用語をなるべく使わずに伝えましょう。専門用語の意味を知らないと、障害者と企業でずれた認識のまま話が進むおそれもあります。すでに障害者雇用を行っている企業の面接官でも、障害の専門用語を知らない可能性は低くありません。誰でもわかる言葉にかみ砕いて、認識の齟齬が生じないよう気をつけて説明しましょう。

心身を安定させる方法を考える

就職活動中や就職後に活用できる心身の安定方法を用意しましょう。環境が大きく変化してストレスも溜まりやすい就職前後は、ストレスを上手に発散していく必要があります。ストレスが溜まりすぎると心身にさまざまな悪影響が生じるため、就職活動や仕事にも問題が起きるかもしれません。
ストレスを発散させて心身を安定させるために、心理状態や体調などのこまめな管理が大切です。普段の生活や出退勤など、日常の各場面で問題が発生しないよう考えて行動しましょう。なんらかの理由で心身が不安定になったら、想定される原因や対策を記録しておくと以降の予防に役立ちます。

ストレスの影響や発散方法についてはこちらの記事も参考にしてください。

就労支援サービスを利用する

障害者の就職を支援してくれる各種就労支援サービスの利用も考えましょう。現代では障害者雇用を中心に扱う就活サイトや就活エージェントなどが多数運営されています。求人探しや書類選考・面接のアドバイスなど幅広い支援をしてくれるサービスです。サービスごとに支援の内容や得意とする業界などが異なります。各サービスについて調べて、自分に最適なものを選びましょう。
職業訓練所や就労移行支援事業所などを利用する方法もあります。職業訓練所はハローワークが設置している職業訓練校を指しており、ハローワークからの求職者が技能訓練を受けられる場所です。就労移行支援事業所は障害者総合支援法に基づき設けられる就労移行支援サービスで、一般就労を目指す障害者にさまざまな支援を行うものです。知識習得や職場開拓など、障害者が就職を目指すうえで大いに役立ってくれます。

参照:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条13項

就労移行支援事業所のような就労支援サービスについてはこちらの記事も参考にしてください。

障害者が就職後に意識すべきポイント

障害者は就職活動時だけでなく就職後も意識すべきポイントが複数あります。努力して就職した職場で長く働けるように、勤務時間を抑えたり社員同士のコミュニケーションをとったりと工夫しましょう。障害について伝えずに就職する一般枠就職の場合、周りに頼れないため一層の注意が必要です。障害者が就職後に意識すべきポイントについて、以下で詳しく解説します。

最初は休憩時間を長めに設ける

障害者枠で就職した場合、最初のうちは休憩時間を長めに取らせてもらいましょう。障害者雇用を実施している企業の多くは障害者の社員にさまざまな配慮をしており、休憩時間の調整も配慮事項に含まれます。就職後間もない時期は環境や人間関係の変化により疲れやすく、特に精神障害者は新しい環境・人間関係への適応までに時間がかかりやすくなります。休憩時間が短いと体力の消耗が早まり、入社後早期に欠勤が続くかもしれません。欠勤するとブランクが空く分仕事の上達に影響します。職場に早く慣れて働けるようになるためにも、最初は多めに休憩して体力を温存しつつ働きましょう。

ほかの社員から理解を得る

自分の障害や必要な配慮などについて、ほかの社員から理解を得られるように努めましょう。障害者枠で入社した場合は比較的周囲から理解を得やすくなりますが、障害の症状や程度は個々人で大きく異なります。「障害の影響が出ている」と理解されない状況も起こりうるため、理解を得やすくできるようほかの社員とのコミュニケーションが必要です。
普段から自分の特性や不調が出やすいタイミングなどを社内に伝えていれば、ほかの社員にとっても「今日は動きづらいタイミングだろう」と予測しやすくなります。調整やカバーが容易になり業務への支障を抑えられるため、周囲の負担軽減の意味でもコミュニケーションで理解を得る必要があります。

社外で相談できる相手を作る

障害者が一般枠で就職した場合、障害について相談できる相手を社外に作っておきましょう。一般枠での就職は健常者として扱われるため、職場からは障害に対する支援をあまり受けられません。症状の悪化や人間関係のトラブルなどを自分だけで解決しなくてはならず、都度大きな負担が生じるでしょう。家族や友人など身近な人物に対しても、障害のようにデリケートな相談は行いづらく感じるかもしれません。 カウンセラーのような外部の専門家がいれば、積極的に相談して体調を維持しやすくなります。
カウンセリングは医療機関のほか、ハローワーク・保健所のような公共機関や民間のカウンセリング機関でも受けられます。無料で受けられる機関や電話・メールなどを利用できる機関などもあるため、自分に適したカウンセリングサービスを探してみましょう。

まとめ

障害者の就職方法やポイント、就職後に意識すべき点などを紹介しました。障害者は健常者と異なる方法での就職が可能ですが、就職活動や就職後に重要なポイントも異なります。自分に適した職場で長く働けるように、多くの工夫を凝らして就職・勤務につなげましょう。
法改正もあり、障害者の人材は多くの企業から積極的に求められるようになっています。障害者でも就職しやすい環境が整いつつあるため、積極的に社会進出して活躍を図れるでしょう。「障害があるから就職できない」のように考えず、自分がやりたいこと・就きたい仕事にまっすぐ向かっていってください。