さまざまな機能をお得で柔軟に使えるSIMフリースマートフォンとは?
現代では、世界中で非常に多くの人がスマートフォンを使用しています。豊富な機能で生活を便利にしてくれますが、端末によっては便利な機能を十分に生かせない場合もあります。極力制約を受けないスマートフォンを使いたい場合は「SIMフリースマートフォン」を選びましょう。購入時・使用時ともに幅広い選択肢を設けられます。この記事ではSIMフリースマートフォンの概要やメリット、選択時の注意点などを紹介します。
SIMフリースマートフォンとは
SIMフリースマートフォンは、利用できる通信会社が特定の会社に限定されないスマートフォンです。最初に契約・購入した通信会社だけでなく、あとからほかの通信会社と契約して「乗り換え」利用も行えます。
SIMフリースマートフォンで通信会社を変える場合は「SIMカード」の交換を行います。SIMは「Subscriber Identity Module(加入者識別モジュール)」の略で、スマートフォンの契約者に割り振られるカードです。利用していた通信会社から解約する場合はSIMの登録も解除する必要があります。元のSIMカードを外して、新しく契約する会社のSIMカードに入れ替えなくてはなりません。SIMカードの交換方法はスマートフォンの機種ごとに異なるため、説明書やサポートなどで確認しましょう。「eSIM」と呼ばれるデータのみのSIMカードを使う方法もあります。
SIMロックについて
SIMフリースマートフォンは「SIMロックがかけられていないスマートフォン」とも表現されます。
SIMロックは通信会社が特定のSIMカード以外を使用できないように設定することで、主に自社のSIMカードを使わせる目的で用いられました。利用者は最初に契約した通信会社以外を利用できず、通信会社を変更する際は端末の交換も求められていました。
法改正により2021年からSIMロックが原則禁止されて、新しく購入するスマートフォンはSIMロックがかけられていない状態で受け取れるようになりました。施行以前に販売された端末もSIMロックの解除が可能になり、通信会社を問わず使用できる「SIMフリースマートフォン」が一般化していきました。2025年現在、一般的に購入できるスマートフォンはSIMフリーになっています。
SIMカードの種類
SIMカードは大きさと通信可能な要素の2点で分けられます。それぞれの詳細は以下のとおりです。
〇大きさ
SIMカードの大きさ・物理的なカードの有無によって4種類に分けられます。
・標準SIM
25mm×15mmのSIMカードです。日本でスマートフォンが普及し始めた時期に採用されていた大きさで、近年の機種には対応していません。
・microSIM
15mm×12mmのSIMカードです。2010年ごろから普及した大きさで、2025年現在では中古の機種で見かける可能性があります。
・nanoSIM
12.3mm×8.8mmのSIMカードです。標準SIMやmicroSIMより厚みも薄くなっています。2025年現在では主流の大きさです。
・eSIM
「Embedded SIM(組み込み式SIM)」の略で、物理的なカードを使わずに必要なデータを端末内に記録する仕組みです。SIMカードを交換せずに通信会社を切り替えられます。
〇通信可能な要素
スマートフォンから通信可能な要素によって2種類に分けられます。
・データSIM
インターネットやメールなどのデータ通信のみ行えるSIMカードです。電話番号を付与されませんが、各種アプリの通話サービスで通話可能な場合もあります。
・音声通話SIM
電話番号が付与されて、データ通信に加えて音声通話やSMSなども使用できるSIMカードです。機種変更時に電話番号の引き継ぎも行えます。
参照:SIMカードのサイズは3種類ある | povo
SIMカードのサイズ | QTmobile
SIMカードのサイズは3種類 | UQmobile
デュアルSIM
スマートフォンの機種によっては、同時に2枚のSIMカードを使用する「デュアルSIM」の利用も可能です。2つの通信会社を適宜切り替えて、使用する通信回線も変更できます。片方のSIMカードをeSIMにしたりデータSIMプランにしたりと柔軟な運用が可能です。「仕事用とプライベート用」「通信制限がかかったときの予備」など、さまざまな形で活用できるでしょう。
デュアルSIMの注意点として、バッテリーの消費速度が速まる可能性もあります。特にAndroidのスマートフォンで起こりやすく、使用していないSIMカードが電波を受信しようと活発に活動してバッテリーを多く消費します。必要に応じて充電器やモバイルバッテリーなどを携帯しましょう。
参照:バッテリーの消耗が早まることがある | Android Magazine
SIMフリースマートフォンを選ぶメリット
通信会社を柔軟に選べるSIMフリースマートフォンにはさまざまなメリットがあります。総じてコストを抑えやすくなるため、「毎月スマホ代がかさむ」という人はSIMフリースマートフォンの利用を積極的に検討してみましょう。SIMフリースマートフォンを選ぶ主なメリットを紹介します。
幅広い通信会社を利用できる
SIMフリースマートフォンは基本的に通信会社の制約が生じないため、好みに応じて幅広い会社を利用できます。通信会社の変更も気軽に行えます。多数存在する通信会社を試してみて、自分に最適な会社・プランを探してみましょう。料金プラン・付随するサービス・通信会社の使用回線と生活範囲の相性など、さまざまな要素から検討できます。
通信会社を選択する際は大手キャリアだけでなく「MVNO」の各社も候補に入れてみましょう。MVNOは大手キャリアの通信回線を借りてサービス提供している通信会社で、「格安SIM」とも呼ばれます。通信速度やサポートなどの弱みはありますが、低価格で手軽に利用できる利点もある通信会社です。
多くのスマートフォン端末から選択できる
選択できる端末の幅が大きく広がる点もSIMフリースマートフォンの利点です。通信会社が固定されていると、大半の場合は通信会社から販売されている端末を購入・使用する必要があります。端末の選択肢が狭まり、希望に沿った端末を選べる可能性が低下します。SIMフリースマートフォンであれば通信会社にかかわらず、ほぼすべてのスマートフォンを選択肢に含められます。世界中のメーカーから販売されているさまざまなスマートフォンを対象に選べるでしょう。
SIMフリースマートフォンの場合、現行機種だけでなく旧モデルの機種も選べるようになります。中古品の端末や型落ちモデルを安く購入すれば、コストを抑えつつ機種変更できるでしょう。
海外でも通信しやすくなる
SIMフリースマートフォンであれば、日本国外に行っても自分のスマートフォンで容易に通信できます。
携帯電話の通信会社は国によって異なるため、海外に出ると日本とは異なる会社の利用が求められます。Wi-Fiやローミングなどを用いる方法もありますが、荷物や通信費が増えやすくなる問題も生じます。
海外でも通信できる便利な方法として、現地の通信会社が提供しているSIMカードを自分のスマートフォンで使用する方法が挙げられます。滞在日数や通信する量にもよりますが、スマートフォンを安く気軽に使用しやすくなるでしょう。海外に行く際は、現地で使用する通話・通信プランについてあらかじめ調べてみてください。
複数の回線を使用しやすくなる
SIMフリースマートフォンであれば、複数の通信回線を併用しやすくなる利点もあります。格安の端末や通信会社を利用して、コストを抑えつつスマートフォンの併用が可能になります。仕事用とプライベート用のように使い分けると便利でしょう。
使用している機種がデュアルSIMに対応していれば、1台の端末で複数回線の利用も可能です。使用端末を使い慣れている1台のみにまとめつつ、複数回線のメリットも享受できるでしょう。音声通話やデータ通信など、使用場面ごとにお得な回線を使い分けられます。
SIMフリースマートフォンを選ぶ際の注意点
多くのメリットがあるSIMフリースマートフォンですが、場合によってはトラブルを招く可能性もあります。特に海外メーカーの機種や古いモデルを使用する場合、発生しうる問題について把握しておく必要があるでしょう。SIMフリースマートフォンを選ぶ際に意識すべき主な注意点を紹介します。
十分なサポートを受けづらくなる
SIMフリースマートフォンを使用している場合、通信会社で購入したスマートフォンと比べてサポートが少なくなります。スマートフォンを販売している通信会社は大手キャリアが多く、全国各地の店舗やコールセンターでの手続きや相談などが可能です。一方、SIMフリースマートフォンは一般的に家電量販店やECサイトなどで購入します。それらの店舗では特に通信契約に関するサポートを行えない場合が多く、情報を得られず困るかもしれません。
通信会社としてMVNOを利用する場合も注意が必要です。MVNOの多くは実店舗を設けずにコスト削減して低価格サービスの実現につなげています。各種サポートをオンライン上でしか受けられない場合が多く、担当者と直接会話しての解決が図れません。
バンドが対応していない場合もある
SIMフリースマートフォンは大半の通信会社で使用できますが、一部「バンド」の問題で使用できない可能性もあります。バンドは電波の種類のことで「周波数帯」とも呼ばれます。大手キャリア各社はそれぞれ異なるバンドの電波をユーザーに提供しており、MVNOも大手キャリアの回線を使用しています。スマートフォンの機種によって特定のバンドを使用できない場合があり、SIMフリースマートフォンでも非対応のバンドでは通信できません。利用している通信会社で提供されているバンドと、使用したいスマートフォンに対応しているバンドを確認しておきましょう。
技適認定を受けていない可能性がある
SIMフリースマートフォンの端末によっては、技適の認定を受けておらず通信が違法になる場合もあります。技適とは「技術基準適合証明」の略で、無線機器が法的に問題ないことを認定する制度です。無線機器が用いる電波は無節操に使用すると通信妨害につながり、社会的な混乱を招くおそれがあります。電波の使用状況を国で管理するために技適制度が設けられており、問題なしと判断された機器には「技適マーク」が付けられます。
SIMフリースマートフォンは世界中の機種を選択肢に含められますが、海外で販売されている機種には技適マークが付いていない場合も珍しくありません。技適認定を受けていない機種は日本国内での使用が違法になるため、購入・使用前に必ず技適マークの有無を確認しましょう。スマートフォンの多くは設定画面から表示できます。
参照:(1)技術基準適合証明(電波法第38条の6) | 総務省
技適マークのQ&A | 総務省
日本独自の機能を使えない可能性がある
SIMフリースマートフォンとして海外の機種を使用する場合、機種によっては日本独自の機能に対応していない可能性もあります。日本国内で販売されているスマートフォンは「おサイフケータイ」「緊急地震速報」などさまざまな機能に対応しています。しかし、海外メーカーの一部機種は各種機能に対応していません。近年の機種は対応しているものが増えていますが、古い機種を使用する場合は注意しましょう。
日本独自機能に対応していない機種を使用する場合、機能によっては代替できるサービスやアプリなどを使う手段もあります。特に「おサイフケータイ」は各種のスマホ決済サービスが対応範囲を広げているため、代用しやすくなっています。
SIMフリースマートフォンの選び方
SIMフリースマートフォンを選ぶ場合、世界中のメーカーから販売されている多種多様な機種が候補に入ります。候補が多すぎて選べなくなった場合、まず特定の分野で絞り込んでから選んでみましょう。SIMフリースマートフォンの選択時に絞り込める主な分野を以下で紹介します。
対応バンドで選ぶ
特に中古のAndroidスマートフォンを使用する場合、使いたい機種が利用している通信会社のバンドに対応しているか確認しましょう。大手キャリアから販売されていた機種は一部のバンドに対応していないケースがあり、購入しても十分に通信できないおそれがあります。対応バンドはSIMロックを解除しても変わらないため要注意です。
大手キャリアから販売された機種の場合、基本的には現在利用中の通信会社が用いている回線の提供元であれば問題ありません。「ドコモの回線を使用する会社ならばドコモから販売された機種を選ぶ」のように対応しましょう。なお、最初からSIMフリーとして販売された機種やiPhoneはすべてのバンドに対応しています。
価格で選ぶ
SIMフリースマートフォンは非常に種類が多いため、大まかな価格帯で候補をある程度絞り込みましょう。一般的には安価なものから「エントリーモデル」「ミドルレンジモデル」「ハイエンドモデル」の3段階に分けられます。各価格帯の主な特徴は以下のとおりです。
・エントリーモデル
およそ3~4万円までのスマートフォンです。性能面では控えめながら電話・インターネット・カメラなどの基本的な機能は備わっています。安さを重視するほか、初めて使うスマートフォンにもおすすめされます。
・ミドルレンジモデル
およそ4~8万円以内のスマートフォンです。エントリーモデルと比べてさまざまな便利機能が追加されており、コストパフォーマンスに優れています。一般的なアプリやゲームなども十分に使用できるでしょう。
・ハイエンドモデル
およそ8万円以上のスマートフォンです。高性能なSoC・RAM・カメラなどが搭載されており、動画編集や4K撮影などを行えます。ストレスなくスマートフォンを使いこなしたい場合に適しています。
参照:【ポイント1】価格帯(グレード)で選ぶ | ヨドバシドットコム
価格をチェック | Joshin webショップ
価格で比較 | ノジマ
性能で選ぶ
スマートフォンの性能でも検討してみましょう。一般的に、高性能な機種であれば使用時のストレスを感じづらくなります。スマートフォンの性能を比較する際にチェックすべき要素として、主に以下のものが挙げられます。
・SoC
System on a Chipの略で、パソコンのCPUやGPUに相当します。スマートフォンの処理能力を決めるパーツで、SoCの性能が高ければスマートフォンも快適に動作しやすくなります。
・RAM
Random Access Memoryの略で「メモリ」とも呼ばれます。データの一時的な保存に用いられるパーツで、性能が低いと多くの処理を並行しづらくなります。複数のアプリを同時に使いたい場合はRAM性能が高めのものを選びましょう。
・ストレージ容量
データを保存可能な容量です。容量が多いほど多くのデータを保存しておけます。本体に内蔵されているストレージのほか、クラウドストレージやSDカードなどで容量の追加も可能です。
ストレージについてはこちらの記事も参考にしてください。
・画面サイズ
画面そのものの大きさです。近年のスマートフォン画面は6インチ以上のものが多く、大画面で映像を観られる一方片手での操作がしづらくなっています。ちょうどよいサイズのものを選びましょう。
参照:【ポイント3】ディスプレイサイズ | ヨドバシドットコム
画面サイズ | Joshin webショップ
画面サイズで比較 | ノジマ
・防水・防塵性能
端末の水やほこりなどに対する耐久性です。防水・防塵性能が低いと、主に屋外や水回りなどでの使用時に故障しやすくなります。「IP〇〇」という記号で表記されます。左に防塵性能が0~6で、右に防水性能が0~8で記載されます。
参照:【ポイント7】防水・防塵性能 | ヨドバシドットコム
防水、防塵性能を示す「IP」コードと「IPX」とは? | KDDI
IPコードは保護性能をあらわす規格 | ソフトバンクニュース
利用できる機能で選ぶ
自分が使いたい機能を利用できるスマートフォンから選択する方法もあります。おサイフケータイ・急速充電・デュアルSIMなど、機種によって多くの機能が搭載されています。SIMフリースマートフォンの強みを生かす場合、デュアルSIMは特に有用でしょう。各機種の公式サイトや家電量販店での説明などを確認して、目当ての機能を使えるスマートフォンを確認しましょう。
機能面で選ぶ場合、SIMフリースマートフォンではキャリアアプリを使えない点に注意しましょう。大手キャリアで購入したスマートフォンには、最初から通信会社独自のアプリがインストールされています。一方SIMフリースマートフォンにはインストールされていないため、もしもキャリアアプリを使用したい場合は要注意です。
まとめ
SIMフリースマートフォンの概要やメリット、選択時の注意点などを紹介しました。SIMフリースマートフォンは利用できる通信会社や料金プランなどの選択肢が幅広く、柔軟にスマートフォンを扱えます。一方で場合によってはトラブルを招く可能性もあるため、よく調べたうえで信頼できる店舗から購入しましょう。
スマートフォンは現代人の必需品になっており、日常的に多くの場面で使用されます。便利で快適な生活のためにはスマートフォンの活用が欠かせないため、幅広く扱えるスマートフォンが有用です。自分にあったものを選びやすいSIMフリースマートフォンで、生活を一層便利にしてみてください。