自律神経失調症とはどのような病気?主な原因や対策方法などを紹介!

公開日:2024/10/25
自律神経失調症とはどのような病気?主な原因や対策方法などを紹介!

人間の身体は繊細なバランスで維持されており、どこかの部位が不安定になるとさまざまな不調を起こす可能性もあります。特に心身のバランスを維持する「自律神経」の乱れは非常に多くの不調につながるため、バランスを保てるよう積極的に対策しましょう。この記事では、自律神経の乱れにより発症する「自律神経失調症」の概要・原因・対策方法などを紹介します。

自律神経失調症とは

自律神経失調症は体内に存在する「自律神経」が何らかの理由で不安定になる病気です。自律神経は心身のバランスを保っている神経のため、自律神経が不安定になると全身でさまざまな不調が生じます。症状や原因も多種多様ですが、「ストレスが原因で身体面に不調を起こす」というケースが比較的多くみられます。自律神経失調症について以下で詳しく解説します。

自律神経とは

自律神経は人体に張り巡らされている神経の一種で、無意識に働く身体機能を制御するものです。呼吸・体温調節・消化など多くの動作を扱っており、自身の意思にかかわらず常に働き続けています。
自律神経は担当する役割によって「交感神経」と「副交感神経」に分けられます。交感神経は身体活動を活発化させる役割があり、心拍数の増加や血圧の上昇などを起こします。一方、副交感神経の役割は身体をリラックスさせることです。心拍数の減少や血圧の低下などを起こします。活発に行動する昼間は交感神経が、睡眠をとる夜間は副交感神経が優位に機能して、規則正しく健康的な生活を支えています。
交感神経と副交感神経のバランスが乱れると、心身の各所でさまざまな不調が生じます。優位になっている神経によって不調の内容が大きく変化して、自律神経失調症の幅広い症状につながります。

主な症状

自律神経失調症の症状は非常に幅広く、同時に複数の症状が出るケースも少なくありません。大きな原因が思い当たらないまま各種の症状が現れた場合、自律神経失調症の可能性も考慮してみましょう。自律神経失調症の主な症状として以下のものが挙げられます。

  • 動悸
  • めまい
  • 頭痛
  • 胃痛
  • 腹痛
  • 便秘
  • 下痢
  • 吐き気
  • 疲労感
  • 不安感
  • 集中力低下

症状が出る部位や症状の内容によって、それぞれ異なる病名がつけられる場合もあります。頭痛ならば「片頭痛」、下痢や便秘は「過敏性腸症候群」、息苦しさによる呼吸数の増加であれば「過換気症候群」などが挙げられます。

うつ病との違い

自律神経失調症と似た症状が生じる病気として「うつ病」も挙げられます。気分が落ち込みやすくなり、不眠・食欲不振・疲労感なども感じやすくなる病気です。自律神経失調症と同じくストレスが大きな原因の一つに挙げられますが、うつ病は自律神経失調症と比べて精神面の不調が生じやすくなります。逆に自律神経失調症は身体面の不調が中心です。
自律神経失調症とうつ病は発症のメカニズムにも違いがあります。自律神経失調症は自律神経のバランスが崩れて発症する一方、うつ病はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質が減少して発症するとされます。それぞれ異なる病気ですが、自律神経失調症による症状からストレスを感じてうつ病につながる可能性もあるため注意が必要です。

自律神経失調症のタイプ

自律神経失調症は大まかな原因によって4つのタイプに分けられます。人によって該当しやすいタイプが異なり、症状が進行して別のタイプに変わる場合もあります。自律神経失調症の各タイプは以下のとおりです。

・本態性型自律神経失調症
生まれつきの体質に主な原因がみられるタイプです。交感神経と副交感神経のバランスが乱れやすく、日常生活におけるストレスはあまり影響がありません。傾向として低血圧や虚弱体質の場合に多くみられます。

・神経症型自律神経失調症
心理的な影響が主な原因になるタイプです。精神的なストレスによる体調変化に敏感で、少しの変化でも体調不良につながりやすくなります。神経質な人や感受性の強い人に多く見られる傾向があります。

・心身症型自律神経失調症
日常的なストレスが原因になるタイプです。自律神経失調症の原因として多くみられるタイプで、多くのストレスをため込んで自律神経のバランスが崩れやすくなります。真面目な人や責任感が強い人は特に発症しやすいとされます。

・抑うつ型自律神経失調症
多くのストレスをため込むと発生するタイプです。心身症型自律神経失調症の症状が進行したものとされており、意欲低下や不安のような「うつ症状」がみられるようになります。身体面でも頭痛や不眠などの症状がみられる場合もあります。

自律神経失調症の主な原因

自律神経失調症はストレスが溜まりすぎると発症しやすい病気ですが、ストレス以外にも発症の原因が存在します。「特にストレスを感じていないのに自律神経が不調を起こした」という状態も起こりうるため、複数の原因を把握しておきましょう。自律神経失調症の主な原因の例を以下で紹介します。

ストレス

自律神経失調症の大きな原因としてストレスが挙げられます。人間関係や仕事上のプレッシャーなど、日常生活で溜まっていく多くのストレスが自律神経のバランスを乱します。「緊張して汗をかく」「悩みごとがあり眠れない」など、ストレスによる自律神経の乱れは日常的なものです。自律神経の乱れが長期間続くと心身により多くの不調が生じて、さらなるストレスの増加と不調の悪化を招きます。
ストレスは非常に多くの場面で感じうるもので、人によって感じるタイミングや程度も異なります。「皆平気でこなしていることなのに自分はつらく感じる」という場合でも、自分を責めてさらにストレスを増やさないようにしましょう。

ストレスについてはこちらの記事も参考にしてください。

生活習慣

生活習慣の乱れも自律神経失調症を招きます。睡眠不足や栄養バランスの偏りなど、生活習慣の悪化が自律神経のバランスの乱れにつながります。睡眠不足で生活リズムが乱れると体は休むタイミングを見失います。自律神経の適切な活性化タイミングがわからなくなり、正常に働いてくれなくなるでしょう。栄養バランスの偏りは必要な栄養素の不足につながり、神経伝達物質の乱れや脳内の血流低下も招きます。自律神経は脳につながっているため、神経伝達物質や脳内血流が自律神経の働きに影響します。
特に睡眠不足は大きなストレスの発生につながっている可能性もあります。夜勤や長時間の残業などが原因で睡眠不足に陥っている場合、仕事によるストレスも溜まって大きな影響が生じるでしょう。

各種疾患

さまざまな疾患により自律神経の乱れが発生するケースもみられます。多くみられる原因として甲状腺ホルモンの乱れがあり、代謝の変化から自律神経失調症へとつながります。また、女性の場合は女性ホルモンの変化も大きな原因として挙げられます。甲状腺ホルモンの乱れも女性に起こりやすいため、自律神経失調症は女性に多く発生する病気です。
ホルモンの乱れ以外にも、自律神経失調症につながる疾患が存在します。パーキンソン病や糖尿病なども自律神経の乱れを起こすため注意が必要です。ストレスの発散や生活習慣の改善などを行っても自律神経の乱れが治らない場合、念のために病院で検査を受けてもよいかもしれません。

自律神経失調症への自分で行える対策

自律神経失調症の発症を防ぐには医師の診察が基本ですが、ほかにもさまざまな方法で対策できます。ストレスの発散や生活習慣の改善など、自律神経のバランスを保つために工夫してみましょう。自己催眠を活用して意識的に調子を整える方法もあります。この章では自律神経失調症に対して自分で行える主な対策方法を紹介します。

ストレスを発散する

自律神経失調症の大きな要因はストレスのため、極力ストレスを溜めないようにする必要があります。ストレスを溜めすぎると交感神経が必要以上に活性化し続けて、体が休まらずに多くの不調を招きます。自律神経の不調だけでなくうつ病のような精神面の病気が発生するおそれもあるため、ストレスへの対策は積極的に行いましょう。
ストレスの発散にはさまざまな方法があり、自分に適している方法の選択が大切です。無理なく手軽に実行できて、心地よくリラックスできる方法を選びましょう。軽い運動や甘いものの摂取、入浴など幅広い方法が挙げられます。
ストレスの発散に加えて、必要以上にストレスを溜めないような工夫も重要です。可能な限りストレス源から離れたり積極的に休息をとったりして、溜まるストレスより発散できるストレスが多くなるように努めましょう。

生活習慣を整える

日常の生活習慣を整えて、規則正しく健康的な生活を送れば自律神経失調症を防ぎやすくなります。生活習慣を整えると生活にメリハリがつき、交感神経と副交感神経の働き具合をスムーズに切り替えられます。
生活習慣のなかでも特に睡眠が重要です。睡眠中に脳内の疲労物質をリセットしてくれるため、十分な睡眠は脳のリフレッシュに欠かせません。就寝前にはパソコン・スマートフォンなどの使用を極力控えましょう。脳が活発に活動して十分に眠りづらくなります。起床時には極力朝日を浴びましょう。体内時計がリセットされて、1日のリズムを整えてくれます。
睡眠のほかに適度な運動も効果的です。交感神経と副交感神経をバランスよく刺激してくれます。ほどよい疲労感が入眠を促す効果もあるため、睡眠の改善からみても運動が役立ちます。
生活習慣を改善するために食事のバランスも考慮しましょう。1日3食欠かさずに、炭水化物だけでなくタンパク質やビタミンなどもそろえて摂取します。デザートにヨーグルトや果物などを添えても効果的です。

生活習慣改善に重要な睡眠についてはこちらの記事も参考にしてください。

自律訓練法を活用する

言葉とイメージで自律神経をコントロールする「自律訓練法」を活用する方法もあります。自己催眠で意識的に心身をリラックスさせて自律神経のバランスを回復させる方法です。心療内科や教育・スポーツなど多くの分野で導入されており、自分自身で場所や時間帯を問わず行えるメリットがあります。
注意点として、自律訓練法は人によって副作用が生じる場合もあります。頭痛が起こりやすい人・糖尿病を抱えている人・心臓の異常がある人などは実施しないようにしましょう。妄想が出やすい精神疾患を抱えている場合も状態を悪化させるおそれがあります。不安を感じる場合、自律訓練法を実施してよいか医師に相談してみましょう。
自律訓練法はゆったりとリラックスして行います。初めに準備として以下の手順を行います。

  • 意識が逸れないようにお手洗いを済ませる
  • 体を締め付けない服に着替えてアクセサリーやメガネなども外す、髪を束ねている場合はほどく
  • 部屋を薄暗くして、静かに落ち着ける環境をつくる
  • 椅子に腰かける、あるいは両手足を少し開いて仰向けに寝る

準備完了後に自律訓練法を始めます。軽く目を閉じたまま「言語公式」と呼ばれる言葉を心のなかで唱えましょう。言語公式は以下の順番に唱えます。

  1. 「気持ちが落ち着いている」
  2. 「右腕→左腕→両脚が重たい」
  3. 「右手→左手→両脚が温かい」

言語公式を唱えてリラックスした感覚を得られたら、最後に「消去動作」を行い催眠状態から復帰します。消去動作の方法は複数あるため、自分に適している方法を採用しましょう。主な消去動作は以下のものです。

  • 両手を握って開く
  • 両手を握ったまま両腕を上げ下げする
  • 背伸びして深呼吸する

参照:自律訓練法とは | 日本自立訓練学会

まとめ

自律神経失調症の概要や原因、対策方法などを紹介しました。自律神経は体調を整えてくれる重要な神経で、バランスが乱れるとさまざまな不調の発生につながります。主にストレスや乱れた生活習慣などが原因のため、可能な限り規則正しくストレスを溜めない生活を目指しましょう。場合によっては別の病気が隠れている可能性もあるため、医師による診察も積極的な検討が必要です。
自律神経失調症による症状は非常に幅広く、別の病気と勘違いする可能性も少なくありません。逆に自律神経が原因と思い込んで、別の病気を見逃すおそれもあります。体の不調を感じたら病院に行き、原因を把握してから適切な対策をとりましょう。

自律神経失調症のような精神面の病気についてはこちらの記事一覧も参考にしてください。