A型事業所を調べていると、勤務時間や休みのことが気になってくるのではないでしょうか。1日にどのくらい働くのか、休みはどれくらいあるのか。そして、体調に波があっても続けられる働き方なのか。
就労継続支援A型事業所は、事業所と雇用契約を結んで働く場所です。雇用契約を結ぶということは、労働基準法が適用されるということでもあります。お給料に最低賃金が保証されるのと同じように、有給休暇についても法律で決められたとおりに扱われます。
この記事では、A型事業所の勤務時間と休日の考え方、そして有給休暇のしくみについてまとめました。あわせて、検索していると目にすることの多い「出勤率8割」という数字が何のためのものなのかもご説明します。見学に行く前に知っておくと、確認したいことがはっきりしてくるかと思います。

就労継続支援A型事業所とはどんな場所か

就労継続支援A型事業所は、障害福祉サービスのひとつです。一般企業で働くことに難しさを感じている方が、事業所と雇用契約を結んだうえで働きながら、必要な支援を受けられる場所になっています。
いちばん大きな特徴は、雇用契約を結ぶという点です。契約を結ぶ以上、利用者さんは労働者として扱われます。お給料は都道府県ごとに定められた最低賃金以上が保証されますし、労働時間や休憩、休日についても労働基準法のルールが適用されます。

同じ就労継続支援でも、B型事業所は雇用契約を結びません。そのぶん最低賃金の保証はありませんが、体調にあわせて通う日数や時間を調整しやすい面があります。どちらが良い悪いということではなく、今の体調やご希望に合うのはどちらか、という選び方になるかと思います。
事業所ごとに扱っている仕事の内容も異なります。データ入力や軽作業のように、人と話す場面が少なめの仕事もあれば、接客のようにコミュニケーションが中心になる仕事もあります。気になる事業所があれば、どのような仕事をしているのかを早めに確かめておくと安心です。

参照:障害者の就労支援対策の状況 | 厚生労働省

A型事業所の勤務時間はどのくらい?

1日の勤務時間は4時間台が最も多くなっています

勤務時間は事業所ごとに決められています。全国的な傾向としては、1日4時間台の事業所が多いようです。
厚生労働省が2022年度に行った調査では、A型事業所の1日あたりの平均労働時間について、「4時間以上4時間30分未満」と回答した事業所が49.6%と、およそ半数を占めていました。次いで「5時間以上6時間未満」が18.4%、「4時間30分以上5時間未満」が15.5%となっています。
ただ、これはあくまで調査時点での全国的な傾向です。実際の勤務時間は事業所ごとに違いますし、その後変わっている可能性もあります。気になる事業所の勤務時間は、見学のときに直接確認していただくのが確実です。

参照:就労継続支援A型におけるスコア方式による基本報酬の算定等に関する調査 集計結果 | 厚生労働省

フルタイムの事業所が少ないのはなぜでしょうか

一般企業と比べると、A型事業所はフルタイム勤務のところが多くありません。理由はいくつか考えられています。
ひとつは、利用される方の体調です。A型事業所を利用される方の中には、長時間働くことがまだ難しい状況の方もいらっしゃいます。無理のない時間設定にすることで、通い続けやすくする狙いがあります。
もうひとつは、事業所側の事情です。A型事業所は利用者さんに最低賃金以上のお給料をお支払いする必要があり、そのための収益を生産活動で確保しなければなりません。勤務時間を長くすればお給料の総額も増えるため、事業所の収支と釣り合う範囲で時間を設定しているという面があります。
なお、扱う仕事の専門性が高い事業所では、比較的長い勤務時間を設定している場合もあります。先ほどの調査でも、「6時間以上7時間未満」が7.3%、「7時間以上」が2.9%という結果が出ていました。

休憩や残業はどのようになっているのでしょうか

休憩については、労働基準法で定められたルールが適用されます。それに加えて、事業所によっては短い休憩をこまめに取れるようにしているところもあります。集中が続きにくい方や、体調に波のある方にとっては、こうした配慮があると働きやすくなるかもしれません。
残業については、発生しない、あるいはほとんどないという事業所が多いようです。決められた時間になったら仕事を終えて帰る、という形が基本になります。予定を立てやすく、通院や家庭の用事とも両立しやすい働き方だといえるかと思います。

A型事業所の休日はどう決まる?

「週2日休み」と「月8日休み」の2つのパターンがあります

A型事業所の休日は、大きく2つのパターンに分かれます。
ひとつは週2日休みです。5日働いて2日休むという、一般的な会社と同じ形になります。多くの場合、土曜日と日曜日が休みです。
もうひとつは月8日休みです。1か月の日数から8日を引いた日数が勤務日になります。たとえば31日ある月であれば、23日が勤務日という計算です。このパターンでは、祝日や曜日の並びによっては土曜日に出勤する月も出てきます。
先ほどの厚生労働省の調査では、A型事業所の1か月あたりの開所日数は平均23.5日でした。月8日休みに近い日数の事業所が一定数あることがうかがえます。

月8日休みという区切りには理由があります

なぜ8日という数字が出てくるのかというと、障害福祉サービスの支給決定に関わっているためです。
障害福祉サービスは、お住まいの市区町村から支給決定を受けて利用します。就労継続支援の場合、1か月に利用できる日数には原則として上限が設けられており、その月の日数から8日を引いた日数が上限とされています。月8日休みという設定は、この上限にあわせた形といえます。
ただし、これはあくまで原則です。事業所の運営上の理由から原則の日数を超える支援が必要な場合には、届出をすることで例外が認められるしくみもあります。札幌市でも、利用日数の特例について手続きが設けられています。

参照:利用日数に係る特例の適用に関する届出について | 札幌市

自分に合うのはどちらでしょうか

月8日休みのパターンは、週2日休みと比べて勤務日数が多くなります。そのぶん体力的な負担は増えやすいのですが、働いた日数に応じてお給料も増えます。
一方の週2日休みは、土日がまとまって休みになるため、生活のリズムを整えやすい面があります。通院や家族との予定も立てやすいかもしれません。
どちらが合うかは、今の体調と、必要な収入額の両方から考えていくことになるかと思います。ご自身だけで判断しにくいときは、主治医や相談支援専門員の方に相談してみるのもひとつの方法です。

A型事業所のお給料についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

A型事業所でも有給休暇は取れます

A型事業所は雇用契約を結んで働く場所ですから、条件を満たせば有給休暇が付与されます。ここは一般企業にお勤めの方と変わりません。
「福祉サービスだから有給はないのでは」と思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、そうではありません。有給休暇は法律で定められた労働者の権利で、事業所の判断でなくすことはできないものです。

有給休暇がもらえる条件は2つあります

年次有給休暇が付与されるのは、次の2つの条件を両方とも満たしたときです。
ひとつめは、雇い入れの日から6か月間続けて勤務していること。ふたつめは、その期間の全労働日のうち8割以上出勤していることです。
この2つを満たすと、最初の有給休暇が付与されます。その後は1年ごとに、勤続年数に応じた日数が加算されていきます。

参照:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています | 厚生労働省

勤務日数ごとの付与日数

付与される日数は、週に何日働いているかによって変わります。週5日以上、または週30時間以上働いている場合は、以下のとおりです。

勤続年数(年)付与日数(日)
0.510
1.511
2.512
3.514
4.516
5.518
6.5以上20
週5日以上、あるいは週30時間以上働いている場合

週4日以下、かつ週30時間未満で働いている場合は、勤務日数に応じて以下のように付与されます。

  付与日数(日)
週の労働日数(日)1234
年の労働日数(日)48~7273~120121~168169~216
勤続年数(年)0.51357
1.52468
2.52469
3.525810
4.536912
5.5361013
6.5以上371115
週4日以下、かつ週30時間未満働いている場合

短い時間で働いている場合でも、日数は少なくなりますが有給休暇は付与されます。
なお、有給休暇には2年の時効があります。使わないまま2年が過ぎた分は消えてしまいますので、残っている日数は折を見て確認しておかれるとよいかと思います。

半日や1時間単位で使える場合もあります

有給休暇は1日単位で取るのが原則です。ただし、事業所と従業員の間で労使協定を結んでいれば、1時間単位で取ることもできます。この場合、時間単位で使えるのは1年に5日分までと決められています。
「午前中だけ病院に行きたい」「午後から少し休みたい」といった使い方ができると、通院と仕事を両立しやすくなります。
先ほどの厚生労働省の調査では、時間単位の有給休暇や計画的付与の制度を設けている事業所が59.5%ありました。すべての事業所というわけではありませんので、気になる場合は見学のときに確認しておかれるとよいかと思います。

事業所には「年5日は取らせる」義務があります

有給休暇について、あまり知られていないルールがあります。
年10日以上の有給休暇が付与される方については、そのうち年5日分を、事業所が時季を指定してでも取得させなければならないと決められています。有給休暇が使われないまま消えてしまうことを防ぐための決まりです。
つまり、有給休暇は「取らせてもらうもの」ではなく、事業所の側にも取得させる責任があるものだということになります。
このとき事業所は、いつ休みたいかについて本人の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めることとされています。一方的に日にちを決められてしまう、という性質のものではありません。

有給休暇を取ったことで不利に扱われることはありません

有給休暇を申し出ることに気が引ける、という声を聞くことがあります。ただ、法律の上ではその心配は要りません。
労働基準法では、有給休暇を取得したことを理由として労働者に不利益な取り扱いをしてはならないと定められています。お給料を減らすことはもちろん、有給休暇を取りにくくするような扱い全般が含まれます。
また、事業所には時季変更権といって、休む日をずらしてもらう権利が認められてはいます。ただしこれが認められるのは、同じ日に多くの人が重なって事業の運営に支障が出るようなときに限られます。単に「忙しいから」という理由で有給休暇を断ることはできません。

「出勤率8割」は何のための数字でしょうか

A型事業所について調べていると、「出勤率8割」という言葉を目にすることがあるかもしれません。この数字が何を意味しているのか、気になっている方もいらっしゃるかと思います。

8割は有給休暇を受け取るための条件です

先ほどご説明したとおり、年次有給休暇が付与される条件のひとつが「全労働日の8割以上の出勤」です。労働基準法に定められた要件で、A型事業所に限った話ではなく、一般企業のお勤めでも、パートタイムでも同じように適用されます。
つまり8割という数字は、有給休暇を受け取るための法律上のラインとして出てくるものです。

出勤率はどのように計算するのでしょうか

出勤率は、出勤した日数を全労働日で割って求めます。全労働日というのは、雇用契約の上で働くことになっている日の合計です。
たとえば半年間の労働日が120日だった場合、その8割にあたる96日以上出勤していれば、この条件を満たすことになります。

出勤したものとして扱われる休みもあります

出勤率を計算するとき、休んだ日がすべて同じように扱われるわけではありません。
厚生労働省の資料では、次の期間は出勤したものとして扱う必要があるとされています。仕事が原因のケガや病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間などです。
また、事業所の都合で休業になった期間などは、原則として全労働日から除外することとされています。

参照:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています | 厚生労働省

通い方に不安があるときの相談先

体調に波があって、どのくらい通えるか見通しが立たない。そう感じていらっしゃる方は少なくないかと思います。
こうしたことは、ひとりで抱えるよりも相談してしまったほうが早いことが多いようです。主治医の先生には、今の体調でどの程度の勤務が現実的かを相談できます。相談支援専門員の方がついていらっしゃれば、事業所選びの段階から一緒に考えてもらえます。
事業所を利用し始めてからは、サービス管理責任者が支援計画をつくる窓口になります。通い方について不安があるときは、こうした方に早めに伝えておくと、調整の余地が生まれやすくなります。

見学のときに確認しておきたい勤務条件

勤務時間や休日の決まりは事業所ごとに違います。ホームページに書かれていないことも多いため、見学の機会に直接うかがっておくと、あとで「思っていたのと違った」となりにくくなります。
うかがっておくとよさそうな項目を挙げてみます。

  • 1日の勤務時間と、始業・終業の時刻
  • 休憩の取り方と、休憩中に過ごせる場所があるかどうか
  • 休日が週2日休みなのか月8日休みなのか
  • 土曜日に出勤する月があるかどうか
  • 有給休暇を半日や時間単位で使えるかどうか
  • 通院のための休みをどのように扱っているか

すべてをその場で聞ききるのは大変ですので、気になる項目をいくつかメモして持っていかれると聞きやすいかと思います。

札幌のA型事業所・ユーリード福住の見学から利用開始までの流れについてはこちらの記事をご覧ください。

A型事業所の勤務時間と休日をチェックしたら見学に行ってみよう

A型事業所の勤務時間と休日、そして有給休暇のしくみについてご紹介しました。
勤務時間は1日4時間台の事業所が多く、休日は週2日休みか月8日休みのいずれかが中心です。残業はほとんどなく、決まった時間に始まって決まった時間に終わる働き方が基本になります。
有給休暇については、6か月間続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば付与されます。よく見かける「出勤率8割」という数字は、この有給休暇の付与条件として出てくるものです。事業所には年5日を取得させる義務があり、有給休暇を取ったことで不利に扱われることもありません。

とはいえ、細かい部分は事業所ごとに違います。この記事でご紹介したのは全国的な傾向と法律上の決まりですので、気になる事業所があれば、見学の際にご自身の目と耳で確かめていただくのがいちばん確実です。
働き方が自分に合っているかどうかは、条件を並べただけでは判断しきれない部分もあるかと思います。まずは見学に足を運んでみるところから始めてみてはいかがでしょうか。